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少女魔法使いにダメ出しされてみた

作戦は決まった、後は日程を組むだけだと行動に移る。



セシリアにアポをとり、ギルドで依頼を漁る。

作戦にあった依頼を見つけ、クレイマンに受注することを伝える。



次に、一人では不安なのでデュークに召集をかけた。

人任せなわけではないが、デュークなら万が一俺がやらかそうとしてもフォローをしてくれるだろうという、浅はかな考えからだ。



なりふりかまっていられないので、とりあえず許して欲しい。

頼みに行ったところ不在だったので、騎士団の寮長さんに手紙を渡しておいた。



これで準備万端、死角はない。

完璧なはずだった。



「面子がおかしい」



集合場所のギルドに三十分早く行き、待っていて最初に現れたのはミカナだった。



「アタシが来て、何か問題ある?」



「おおありだ!」



ミカナには今日依頼に行くなんて言ってない。

伝えたのはセシリアとデュークだけだ。

誘った覚えがないぞ。



「アタシは剣士に頼まれて来たのよ」



「え、レイヴン?」



何故、レイヴンがミカナに頼む。

そもそも、レイヴンも依頼には誘っていないはずだが。



「なんか、代わりの代わりですまないと言ってたわね」



「デュークうぅぅ」



あいつレイヴンに投げたのか。

そんでもってレイヴンはミカナに代わってもらったと。



たらい回しにするなよ、予定が崩れるじゃないか。



「代わりの代わりってあまり良い気分じゃないわね。まあ、やるからにはきっちりやるわ」



「やるって何を?」



「あんたのサポートよ。なんか、剣士からお願いされたわ」



「まじか……」



その引き継ぎはどうなんだ。

俺のサポートの引き継ぎって……デューク。

そういう気配りは有難いけどさ。



「任せなさい。あんたには一応借りがあるからね」



「この前で帳消しになったんじゃないのか?」



「あれぐらいで帳消しになるほどアタシが受けた借りは小さくないわ。結局、中途半端に終わっちゃたし」



途中でセシリアに連れられて退場したからな。



「あの後、大丈夫だったか?」



「大丈夫じゃないわよ! 屋敷に連行されて正座させられたわ」



「やっぱりか」



セリアさんに聞いて知ってはいたけど、正座か。

俺もやらかした時、有無を言わさない勢いで正座させられたっけ。



俺はセリアさんが部屋に入ってきてくれて終了だったけど、ミカナは助けなしの説教だもんな。



「いつもはユウガが叱られているのを見ているだけだったんだけど。……自分が叱られる立場になると堪えたわね」



「なんか、すまん」



「別にいいわよ。アタシもセシリアが二つ名のことを気にしているって、忘れていたのも悪いしね」



「その二つ名を最近、知ってしまったんだが……」



「誰から聞いたのか知らないけど。ま、簡単に調べられるわよね。有名だし」



「ははは……」



確かにセシリアは勇者パーティーの一人だ。

セシリア一人がどう動こうと二つ名の拡散は止められないだろう。

孤児院の子どもたちからも評判だったしな。



「本当にセシリアのことが好きなら、本人が嫌がっている二つ名を口にしない方がいいわよ」



「わ、わかってるよ!」



「ならいいわ。……で、あんたなりに今日、計画はあるの。それともただ、依頼に来ただけ?」



「ちゃんと考えているプランはあるけど」



「話しなさい、今すぐに! アタシが採点してあげるわ」



「採点て、なんか嫌だな……」



協力者には俺がどんな考えで、今日依頼を受けたか、知ってもらっておいた方がいいかもしれないけどさ。



「とりあえず、改善すべき場所があれば口を出すだけだから。そんなに罵ったりしないわよ」



「わかってるよ。まず、受けた依頼からだな。アンデッドが住み着いた屋敷から、アンデッドを追い払うっていう依頼だ」


ミネルバの不動産が困っているらしい。

屋敷はそこまで古くないから、とっとと掃除して売りに出したいのだとか。



魔物が住み着いていた屋敷に住もうなんて人がいるのか、俺は知らんけど。


「セシリアが大活躍出来る依頼じゃないの。いつもはサポートのセシリアにメインで戦ってもらうわけね」



「え?」



「え? じゃないわよ。何よ、全然違う意図があったわけ?」



「俺的にはちょっと、お化け怖い的な感じで、俺が無双することを夢見てたんだけど」



真の主人公、それはヒロインがピンチの時に駆けつけて、颯爽と眼前に迫っている危機を乗り越える。



そんな感じのことをやればいいと思い、前世の記憶を参考にし、お化け屋敷が浮かんだ。



俺が勇敢なところを見せれば、少なくとも好感度上がらないかなーみたいな。



「馬鹿じゃないの!? あんた夢見過ぎよ。お化け怖いなんて言って、旅なんて出来ないわよ」



「いやぁ、女の子だったらさ、こう……あるかなって」



「百歩、いや、千歩譲ってそういう女の子がいたとしてもよ。セシリアは僧侶よ。お化け、アンデッド怖いなんて言ってたら、務まらないわ!」



「た、確かに……」



「どういう風に考えて、そんな作戦になったわけ!? セシリアのことを考えて、プランを立てなさい。自分本意に考えるから駄目なのよ。優先すべきはセシリアがどう思うか、楽しんでくれるかよ。自分が満足するかなんて、二の次よ」



「……スミマセン」



ミカナにガンガン説教される俺。

言われてみれば的な要素があるので、反論出来ない。



確かに自分が主人公になるために企画してしまったからな。



セシリアが楽しんでくれるかどうかという部分が欠けていた。



「次からは気を付けなさい。はぁ……今日はセシリアとあんたがメインよ。きびきび働きなさい。アタシはサポートに回るから」



「俺も前? セシリア大活躍じゃなくていいのか」


「あんたねぇ……そういう時は二人で協力して敵を倒すとか! そういう風にしていけばお互いに信頼出来る間柄になるでしょ!」



「なるほど。一緒に行動して好感度を上げるのか」



「……あまり好感度、好感度って口にしてたら嫌われるわよ」



「う……わかった」



下心があり過ぎるとダメなのか。

まあ、当たり前だよな。


「そういえば、セシリアが最近はまっていることとかわからないの? 共通の話題持っていると良いと思うけど」



「体術の練習をしているとか聞いたな」



「今回の依頼と合ってないわね……」



本当に依頼の選択をミスった気がする。

せっかくセシリアが体術の練習をしているのに……アンデッド相手なら光属性の魔法を使った方が効率良いからな。



「次回からは考えてプラン考えます……」



「そうしなさいよ。これじゃ三十点ぐらいしかつけられないわ」



赤点同然の結果にショックを受ける俺。

ミカナと話していて、俺も馬鹿だなって思ったからな。



今日誰も呼んでいなかったら、俺は間違った方向に進んでいただろうな。下手したらセシリアにかなりの迷惑をかけることになっていたかも。



「妥当な点数。いや、もっと低いぐらいだよな」


「ま、今日は勉強よ。これにこりたら、自分本意なプランは立てないことね」



ふふんと鼻をならすミカナに何も言えない。

悔しいけど俺の考えが甘かったせいだし。



「わかったよ。そろそろセシリアも来るだろ。今日は無難に頑張るさ」



「間違っても良いかっこしようとか思って、変な行動に出ないことね」



何重にも釘を刺してくるあたり、俺がどれだけ信用されてないかわかる。アホな作戦考えていたし仕方ない。



今は普通に依頼をこなすことに集中しよう。

程なくして、セシリアの乗った馬車が近付いてきた。



俺とミカナの前に止まり、中からセシリアが出てくる。



「お待たせしました。あれ、ミカナも今日、依頼に?」



「ええ、同行するわ」



「それは心強いですね。実はもう一人呼んだのですが。大丈夫でしたか?」


「もう一人?」



俺は誰か呼ぶかもという話を誘った時にしたけど、セシリアからは何も聞いてないぞ。



「はい。気分転換にとハピネスちゃんを連れて来ました」



セシリアの後ろからハピネスが現れた。

いつもの無表情で俺に視線を送っている。



「……おは」



「ういっす」



挨拶も通常通り変わらない。

心配していたけど、気にしすぎだったか。



それでもレイヴンが来ていたら、多少気まずかったかもしれないな。

ミカナで良かったよ、うん。



「……何でアタシを見て頷いているのかしら」



「気にすんな」



悪いことを考えていたわけじゃないから。

むしろ、ミカナファインプレーみたいな。



ハピネスも加わったし、何事もなく依頼を終えられそうだ。

依頼の内容を二人に話すと、目的地の館まで馬車で行くことになった。



「足の確保ぐらいしておきなさい!」



「……はい。気を付けます」



ミカナに注意をされてしまった。

今まで、セシリアの馬車を頼り過ぎたな。



まだ、依頼が始まってすらいないのに、気のきかない男のレッテルを貼られてしまった。



今日、何回ミカナに指摘されるか不安だ……。



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