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人魚を救ってみた

すみません、また終わらなかったです。

本当にごめんなさい。

長くなり過ぎてしまいますので、切らせていただきます。

「そろそろいいか、二人共」


出来るだけ、二人の時間を作ってやりたいがシケちゃんの友達が心配だ。

俺達が洞窟で盗賊を捕まえてから、三日経っている。

仲間と三日、音信不通になれば何かあったのかと、疑問に思っているはずだ。



盗賊達が何日置きに連絡をとっていたのか、知らないが怪しまれて逃げられてしまっては困る。



「すまん、俺は万全だが……ハピネス。頼むから起きてくれ」



そいつ、結構前から起きてるぞ。

ムードが台なしになるから口には出さないけど。

レイヴンが背中を揺すると、ハピネスの目がぱちりと開いた。



「……朝?」



「寝ぼけているのか? ヨウキが待っている。盗賊のアジトに乗り込むぞ」



「んー……了解」



眠そうに目を擦り、あくびをしながら伸びをしている。

こいつ、寝たふりじゃなくて本当に寝てたのか。

いや、寝たふりをしていて、本当に寝てしまったのか……どうでもいいな。



「この依頼に終止符をうつ時が来たようだ……いくぞ!」



「いきなりどうしたんだ?」



「……いつものこと」



景気付けになるかと思って、少し厨二になってみたのだが。

ハピネスがげんなりとした様子で、レイヴンに説明する姿を見ていると虚しくなるな。



「ま、まぁ、景気付けはこれくらいにして……いくか」


俺は両手の拳を握りしめ、レイヴンは愛剣を納めている鞘を腰に差し、ハピネスは自作の扇を構える。

一仕事する前のパーティーの風格が出ているな。



「よし、行くぞ。レイヴン、案内よろしく」



「……わかった、行こう」



盗賊のアジトの場所を知らない俺が先頭に立つ意味がわからん。

まとめ役をやらないといけないとって思ってたからな。

気張り過ぎたかもしれない。



「……目立ちたがり?」



「ちげーよ。ったく、出発するぞ」



「ああ、わかった。……盗まれた荷物も人魚も絶対に取り戻すぞ」



「その意気だ、レイヴン。だけど冷静さだけは失わないでくれよ」

俺は今回、一番情緒不安定気味なレイヴンに注意をする。

心意気はいいが、洞窟の時のように、キレるのは止めて欲しい。



自分の中の常識が一気に変わって混乱するのは、仕方ないかもしれないけどさ。



「……大丈夫、絶対」



「いや、なんでハピネスが答えるんだ」



「……止める」



拳をぎゅっと握り、任せろと言わんばかりのハピネス。

ああ、成る程そういうことか。



「じゃ、レイヴンが暴走したら頼むぞハピネス」



「……了解」



「ちょっと待ってくれ。俺が暴走する前提で話すのは止めて欲しいんだが……聞いていないな」


嬉しそうに決意するハピネスを見て、苦笑しつつ頬をかくレイヴン。

さっさと出発しないといけないのだが、リラックスも重要か。

しかし、もたもたしていられないというのも現状だ



「じゃ、本当に出発しようか。時間もないし」



「わかった、行こう」



レイヴンが先導し、俺達は盗賊のアジトを目指して宿を出発した。



盗賊のアジトは山奥にあるらしい。

港近くでシケちゃんに歌を歌わせて、船員達を眠らせ、船に侵入。

夜が明けない内に荷物を運び出していたのだろう。



だが、あまり時間をかけていては目撃者が出るかもしれないからか、拠点はそこまで遠くにしなかったみたいだ。



レイヴンの調査により、行商人が山に入っていく、荷物を持った男達を見たという情報を入手。



偵察に行ったところ、見張りらしき男が二人立っていたようだ。



「よく、そこで踏み止まったな。洞窟でのレイヴンの様子からしたら、今の話を聞くと、一人で突っ走っていてもおかしくないと思ったりしたんだが」



「……その時は偵察だけと決めていたからな。何人敵がいるのかわからない中で、一人で敵陣に突っ込むのは危険だ」



「……同感」



「それに、二人には情報を聞き出すとは言ったが、一人で解決するとは言ってなかったからな。これ以上、勝手な行動を起こすわけにはいかなかった」


洞窟での出来事を本当に反省していたんだな。

まあ、洞窟内にはシケちゃんの友達もいるわけで、荷物も取り戻さねばならないと課題はたくさんだからな。



「奴らが感づいて逃げ出していないか心配だな」



「……念のために在中している騎士達に見回りを頼んでおいたから大丈夫だと思うぞ」



流石レイヴン、絶対に盗賊を逃がす気はないらしい。見張りに見つからないように、慎重に山道を進んでいく。



レイヴンには秘密だが嗅覚、聴覚を強化して盗賊の動向を調査していたりする。今は洞窟の入口付近に辺りに集まっているみたいだ。



……レイヴンが手回しした騎士達に気づいたか?

計画性のある行動をしているし、頭のキレる盗賊がいるのかもしれないな。



そんな考えをしつつ、レイヴンの案内で山道を順調に進んでいく俺達。

盗賊達に見つからないように慎重に進んでいくと、話し声が聞こえてきた。



木々に隠れて気付かれないように、盗賊達の様子を伺う。

荷物を洞窟から運び出し、せっせと馬車に積んでいるな。

やはり、逃げようとしていたのか。



「……危なかったな。後、少し遅かったら逃げられるところだった」



レイヴンが小声で呟く。

最悪、間に合わなかったら、俺が感覚強化をフルに使い、地の果てまで追うという手段もあったが。



それでは、あまりにも不自然な解決になるし、俺へのデメリットが多い。

ハピネスからの冷たい視線は間違いなくくる。

レイヴンからは、疑いの眼差しを向けられていただろう。



その手段を使わずに済みそうなので、最早無駄な心配だけど。



「……突撃」



「待て待て! やみくもに突っ込む訳にいくか。こっちには取り戻さなきゃいけないものがたくさんあるんだぞ」



「……ああ、ヨウキのいう通りだ。奇襲をかけよう。逃げられるわけにはいかないからな。最初に馬車を潰したい」



飛び出そうとするハピネスを静止し、レイヴンと作戦を立てる。



「ハピネスが魔法で馬車の車輪を破壊して、俺とレイヴンが突撃。俺達が盗賊を倒している間、ハピネスに荷物が乗せられた馬車を守って貰うのはどうだ?」



「ハピネスが危険じゃ……」


「……バッチこい」



任せろと言わんばかりに早速、扇を構えるハピネス。つーか、どこで覚えたんだそんな言葉。

最近、ハピネスが変な言葉や仕草を覚えていることが多いな。

誰からの入れ知恵か今度教えて貰おう。



「レイヴン、ハピネスはレイヴンが思っている以上に強いから大丈夫だ。俺が保障する。それに、ハピネスだってシケちゃんの友達を助けたいと思っているんだしさ。仲間外れには出来ないだろ」



「……そうだな。全員で力を合わせて依頼を終わらせよう」



レイヴンも納得したし、作戦も決まったので、あとは実行するだけだ。

だが、今はまだ実行するタイミングじゃない。



見た限り、盗賊達は荷物を馬車に運び逃走、または拠点を変えようとしているのだろう。



まだ運び出している最中なので、荷物を全て積み終えた時がベストだ。

二人に俺の考えを伝え身を潜めていると、洞窟からがたがたと動く箱が運び出されてきた。



「……なあ、あの箱怪しくないか」



「ああ、やたら動いてるな。中に生物が入っているのは間違いないな。……ただ、動き過ぎじゃないか?」



人一人が入れるような棺桶のような箱なのだが、やたら動いている。

中で相当暴れているのが見受けられるな。抵抗するのは当たり前だが、中に入っているのは本当にシケちゃんの友達なのか?



「ヨウキ、盗賊達が六人掛かりでやっと箱を抑えつけているが」



「……狂暴」



「うん、まあ、あの箱で荷物が最後っぽいし、中にいるのはシケちゃんの友達で間違いないだろう。作戦を開始しよう」



これ以上ツッコミを入れることに疲れたので、スルーしよう。

二人がこくりと首を縦に振ったので、各々行動に出る。



まず、予定通りにハピネスが風の中級魔法ゲイルラッシュを放つ。

いくつものボールくらいの風の球体が馬車の車輪を破壊し、盗賊達の周りに着弾した。


あくまで牽制なので、馬車に当てないこと以外は無差別に攻撃して貰った。

いきなりの奇襲に盗賊達が慌てふためいている間に、隠れていた俺とレイヴンが姿を現す。



物語の主人公とかなら、登場の際にかっこいい台詞を言ったりするが、俺達はそんなことはしない。

俺もレイヴンも全力のスピードで接近し、盗賊達を倒す。



「ヨウキ、馬車を囲め! こいつらを近づけさせるな」



「わかってるけど、それはハピネスの仕事だ。俺達は俺達の仕事もしないと」



盗賊達は突然の奇襲で混乱しているのか、逃げる者、俺達に向かってくる者、どうすればいいかわからずその場で立ち尽くす者と様々だ。



「お前ら落ち着け! 相手はたかが二人だ。囲んでやっちまうぞ」



リーダーっぽい男が声を荒げて盗賊達の混乱を沈めようとしている。

まず、二人じゃないんだよなぁ。



遅れてやってきたハピネスが扇で盗賊達を薙ぎ払う。派手に吹っ飛ばしているが大丈夫か、あれ。

風の魔法を扇に纏わせているのだろう。



しかも、ハピネスが自分の羽で作った扇だからな。

普通に魔法を使うよりも、威力が上がっているっぽい。



「……すごいな」



盗賊を倒している中、レイヴンのぽつりとしたつぶやきが聞こえた。

ハピネスは扇を使って華麗に舞うように戦っている。……見惚れている訳じゃないよな?



ちらりと様子を見ると、ちゃんと盗賊達を素早く切り伏せている。



「くそ、なんなんだこいつら! ギルドで依頼は出ていたがこんな奴らが来るなんて」



盗賊のリーダーが慌てふためいている。

俺達が依頼を受けたことがこいつらにとっての不幸だったな。



リーダー格をレイヴンがなんなく倒し、本格的に烏合の集と化した盗賊達を無力化した。

全員気絶しているので、とりあえず拘束し、放置している。



「あらかた片付いたな。……で、ずっとガタガタガタガタと動いているこの箱だが」



「……とりあえず、中から出してやろう」



レイヴンが箱を括っている縄を切る。

するとふたが勢いよく外れた。



宙を舞うふたに俺とレイヴンは唖然。

ふたの行く末を見守った後、箱の中に目を向ける。




中には手を縛られ、猿轡をされた少女の姿があった。少女なのだが、下半身にマントがかけられている。

これは、ハピネスの物だった気がするが。



「……緊急事態」



ハピネスは少女の下半身にかけられたマントがズレないように、上に覆いかぶさっている。



「まさか……」



「……沈黙」



物凄い冷淡な声で言われたので、俺とレイヴンは停止した。

とりあえず向こうに行け、こっちを向くなと言うので、レイヴンと一緒に箱から離れる。

大人しく二人で待っていると、ハピネスからもう大丈夫と声をかけられた。



「いや〜助かった。まじ感謝だわ」



ハピネスが解放したのか、箱の中で縛られていた少女が頭を軽く下げてきた。

この子がシケちゃんの友達のミサキちゃんだろうか。



俺が考えているとレイヴンが『君は何故箱の中に?』とメモを見せている。



「ん、あぁ。こいつらが拠点を変えるとか言い出してさ。アタシのこと縄で縛って箱詰めしやがったんだよ」



恨めしそうに、拘束されている盗賊に蹴りを入れている。



「君がミサキちゃん……で間違いないかな」



「ああ。そこのお嬢ちゃんからだいたい聞いたよ。アタシがシケの友達のミサキだ」


目の前にいる少女がシケちゃんの友達で間違いないみたいだ。



「なるほど。……ハピネスから話は聞いてるなら、出来れば今の状況の説明をお願いしたいんだけど」



「……了解」



俺達が後ろを向いている間にお互いに情報を交換したっぽいので、状況の説明を求めたら、ハピネスが立候補してきた。


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