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デートの秘密を知ってみた

遅くなりました

ノープランデートの翌日。デュークのデートがどうもひっかかるので、昼休みを見計らい騎士団本部に突撃してみた。



「という訳で聞きたいことがある」



「訳ってどういう訳っすか。……まあ、内容はなんとなく解るんでいいっすよ。とりあえず俺の部屋に行くっす」



首で合図をしてついて来るように促され、デュークの後を追う。

部屋に着いたら昨日のデートについて言及するつもりだ。



俺にはデートだと断言していたくせに、実際は二人で訓練していただけだろうと。

そして、俺は一人でノープランながらデートを成功させたのだと言ってやるのだ。

そんな黒いことを心の中で思い浮かべて、デュークの部屋に入った。



「とりあえず、隊長の聞きたいことを聞くっすよ。だいたい質問してくる内容はわかっているっすけど」



部屋のソファーにどっしりと座り、余裕の態度を表すデューク。

今まで、立場上は上でも大人としてはかなり下な俺だったが……今に見てろよ、その鼻っ柱をへし折ってやるからな。



「先日お前とケーキ食べたよな」



「食べたっすね」



「その後、デートに行くってことで相談したのにお前、相談に乗らずに帰ったよな」



「ああ、帰ったっすね。俺も用事があったんで。……それでデートはどんな感じだったっすか?」



多少興味がある感じで聞いてきた。

偶然とはいえ、良い感じでデートを終えることが出来たと自負している俺は自信満々で結果を報告する。



「そりゃあもう、大成功だったぜ。正直不安だったんだけど、行く先行く先でセシリアの笑顔が見れたからな」



今思い出しても先日のセシリアは楽しそうな表情をしていた。

俺自身も楽しかったので、お互いに満足出来たデートだったのだ。



そう思えるからこそ、こうやって自慢話のように話せるんだろう。

鏡を見なくてもわかる、先日のことを話している俺の顔がにやついているということが。



「成功したんすか。いやぁ、良かったっすよ。こっちも苦労したかいがあったってもんすね」


俺の肩を叩いて祝福してくれているみたいだが……今奇妙なことを言っていたような気がするな。



「なあ、今の苦労したかいがあったってどういう意味だ?」



「ああ、それはっすね。ぶっちゃけると隊長のデートコースって俺が仕組んだんすよ」



「……は?」



俺はデュークの言葉の意味がわからず、間抜けな声を出してしまう。



「いやだから、隊長、セシリアさんとのデートで古着屋、花屋、孤児院の順番で回ったんすよね」



「待て待て、なんでデュークが俺とセシリアがデートで行った所を知っているんだ。しかも、順番まで合ってるし!」



冷静になれていない頭では俺の身に起こったことを整理しきれないな。

しかし、デュークは俺を状況を理解しきれていない俺を無視して話を続行する。


「いや、だから俺がそこに行くように誘導したんすよ」



「どうやってだよ!?」



古着屋も花屋も孤児院も偶然近くにあって入っただけだ。

入りたいと言ったのもセシリアだし、孤児院なんて院長と子供達に会ったから行くことになったのだ。

もし、院長達が出かけていなかったら会えなかったわけで……偶然としか言えないはずだ。



「隊長とセシリアさんの性格を考慮した作戦を俺なりに考えみたっすよ」



「だから、その作戦とやらを聞かせろ!」



「せっかちっすねぇ……んーと、順を追って説明するっす。まず、俺と隊長が別れた後のことからっすね」


「たいして相談に乗りもせずに帰っただけだろ」



聞かなくても充分思い出せるな。

あの時どうしようかと思ってひやひやしたこともな。



「全く……俺は別れた後隊長のために走り回ったっていうのに酷い言いようっすね。どれだけ大変だったと思ってるんすか!?」



俺の言葉がカンに障ってしまったのか、デュークは少し声を荒げる。



「……そんないきなりキレられてもな。俺知らないし」



逆ギレしてきたデュークにたじたじになってしまう。普段なら反論するが、俺のためというワードが引っ掛かり強気に出られずに萎縮してしまう。



「いいっすか!? 別れた後、俺は隊長のためにまず、セシリアさんが好きそうなデートスポットを調べまくったんすよ。んでもって調べた情報を元にある計画を実行することにしたっす」



「計画ってどんな?」



「隊長にわざと尾行させてデートスポットに誘導させる作戦っすよ」



「なっ……」



俺は驚きと同時に激しく動揺した。

偶然だなんだと思っていたが、俺はデュークの手の平の上だったというのだろうか。


「いや、でもデュークの計画って穴が多過ぎだったんじゃないのか?」



俺が尾行しようとしなかったり、セシリアが店に入ろうとしなかったりと不確定要素があったはずだ。

結果的に成功してしまっているのだが、納得出来ない。



「確かにある程度賭けだった部分はあるっすけどね。でも、さっきも言ったっすけど、二人の性格を考慮したら、そこまで作戦の大事な部分は失敗しないと思ったんすよね。どうせ隊長のことだから、切羽詰まった状況で俺がデートしているの見かけたら、参考にしようとか思って追ってくるだろうと簡単に考えられたっすよ」



「なんだ、デュークは俺が単純で人任せな思考しか働かせないとでも?」


「実際に俺達のこと尾行してきたじゃないっすか。言い訳出来ないと思うっすよ」



デュークの言い分はもっともなので反論が出来ない。あの時はかなり焦りもあったからな。

その辺もデュークは計算していたんだろうか。

元部下ながら恐ろしい奴だ。



思えば長年の付き合いだし、俺の行動が読めるってのもそこまで不思議じゃないか。

だったら別の方向性の質問をぶつけてみよう。



「セシリアの性格を考えたってのはどういうことだ。さっき話していたくせに説明に入っていなかったぞ」



「ああ、そのことっすか。セシリアさんは隊長よりかは空気が読めるっすから、もし隊長がダブルデートに持ち込もうとしたら、阻止してくれるだろうと思ってたんすよ。あと、俺らを見かけても多分邪魔しないようにとか考えてくれて近くの店に入ってくれると思ったっすよ」



「お前は何者なんだよ!」



確かに先日、デューク達を見かけたものの、セシリアは気を使って接触しようとはせずに周りを見渡した結果、花屋を見つけたんだったな。

だんだんデュークが恐くなってきたが、話は終わらない。



尾行していた道のりで孤児院の院長や子供達に会ったのも、もちろん偶然ではなかった。

デュークがセシリアの慈善活動の情報をキャッチし、出かける予定だった孤児院を探したのだそうな。


「もし、どこの孤児院も出かける予定がなかったらどうするつもりだったんだ?」



「その時はそれとなく、外に出るように仕向けてたかもしれないっすね」



「お前いくらなんでもそれはやりすぎだろ……」



「冗談すよ」



兜の中から笑い声が聞こえる。

笑うところがあったか?

デュークの笑いのツボはわからないな。

それとも、笑いではぐらかしたのか。

デュークなら充分有り得る。



それよりも、こいつのやることは怖いな。

まさか、俺とセシリアのデートが全部計算した上でのことだったとは。



「でもよ、デューク。お前イレーネさんのこと考えたら酷いことしたんじゃないのか。俺とセシリアのデートスポットを誘導するために薬屋やら道場やら行ったんだろ?」



いくら俺のためとはいえ、他者を利用するのはどうかと思う。

イレーネさんだって、デュークと本気でデートを楽しみたかったのだろうし、行きたかった場所があったろうに。



「……何言ってんすか隊長。俺が隊長のためにイレーネをわざとデートに合わない場所に連れて行ったと思ってるんすか。そんなことするわけないじゃないっすか!」



「だっ、だったら何であんなデートに合わなそうな場所に行ったんだよ。俺とセシリアのデートスポットに合わせて適当な店に入ったんじゃないのか」



今日のデュークはいつもと違って熱い。

反論するも、腰が完全に引けているんだが。

そんな俺を見てからか、それとも反論のせいか。

ため息をつかれてしまった。



「イレーネはエルフっすから薬には詳しくて、趣味で調合とかもやってるらしいっす。それで、俺もシークの影響で少なからず知識があったんで薬の効力とかの話を聞いてたっすよ」



「花屋で俺がセシリアの話を聞いていたことと同じことか……」



相手の趣味の話を聞くって点ではなんら変わらないことだな。

薬か花かの違いじゃないか。



「アルバート流剣術道場では他の道場との合同試合があったんで、それを見に行ってたんすよ」



「なるほど……」



前世でいうスポーツ観戦て奴だな。

デートコースとしては間違ってはいない。



「最後に二人でやぶさめをして得点を競いあったっすよ」



「……ゲーム感覚だよなぁ」


デュークのデートを前世風にまとめるてみると。

相手の趣味に合わせた店に行き、スポーツ観戦をして、ゲームセンターに寄って帰ったってことか。

……普通にデートとしてカウントされるな、これ。



「その顔は納得出来たって顔っすね」



「……まあ、な」



言い返すことが出来ないのが悔しいが、デートとしては間違ってはいないのだから仕方ない。



「なら良かったっす。じゃあ、今回のことで俺が伝えたいことがあるんで言うっすよ」



「伝えたいこと?」



「そうっす。隊長が今後もデートコースに困らないようにアドバイスをするっすよ」



「確かに、またデュークに頼むのも悪いしな」



いつまでもデュークにおんぶにだっこじゃ大人として駄目だと思う。

第一全部デュークの言う通りにして、俺の恋愛が成就したって嬉しくないし。

なるべくなら自分の力でセシリアとの恋愛を成功させたい。



「その辺はわかってるんすね、さすが隊長っす。……で、俺が何を言いたいかっていうと、隊長はもっとセシリアさんを知った方が良いってことっす」



「セシリアについて? そんなことデュークに言われなくても理解しようとしてるさ」



一目惚れして、ミネルバで再会してからデートや依頼、セシリアの実家にだって行っているんだぞ。



「甘いっすよ。たぶん、隊長は女の子が好きそうな場所に行けばどうにかなるって思ってるっすよね? それじゃあ、駄目っすよ」



「うぐっ……な、何でだ?」



図星だったので動揺の声が出てしまった。

しかし、デュークの言うことがわからない。

とりあえず、デートの基本的な場所に行けばどうにかなるんじゃないのか。



「女の子が好きそうな場所じゃなくて、セシリアさんが好きそうな場所に行かないと駄目っすよ」



「……ああ!」



「だから、俺はイレーネとのデートを尾行させたんすよ。口で説明するよりも、実際に見て貰った方がいいと思ったんで。隊長から見てイレーネは退屈そうにしてたっすか?」



「いや、楽しそうにしてた……」



心の中で突っ込みつつも、デュークとイレーネさんを尾行しながらデートしていたあの日。

イレーネさんはデュークが案内していた場所に着くと、ころころと表情を変えていた気がする。



最終的には偽りない笑顔でデュークと一緒に歩いていたのが、印象的に残っている。



「ま、俺のデートが完璧だったとは言わないっすよ。さっき言ったことも俺の個人の意見すから。でも、もっとセシリアさんのことを知るっていうのは間違ってないと思うっすよ」



「セシリアのことねぇ……」



ストーカーにならない程度に情報を集めてみるか。

それが、これからデートする時に役に立つかもしれないし。



「さて、これで話は終わりっす。あとは隊長が頑張るっすよ。俺はもう、休憩終わるんで仕事に行くっす」



「ああ、わかった。ありがとな、デューク助かったよ、またな」



俺はデュークに別れを告げ、宿に帰った。

帰るなり、ガイの目を気にせずベッドにダイブする。



「俺はもう少ししっかりしないといけないなあ」



デート成功は完全にデュークのおかげだ。

次回はノープランでも、尾行でもなく、俺がプランを立てなければならない。

そのためには様々な努力が必要になりそうだ。



恋愛の奥深さを知ることが出来て良かったと思うべきだな。

デュークにはしばらく頭が上がらなさそうだ。

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[良い点] いやデューク完璧な男でできる部下過ぎて草。イレーネが羨ましい
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