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少女魔法使いの恋愛相談を受けてみた

状況を整理しよう。

俺の隣には固まったレイヴン、前方には自分の言った言葉で勝手に恥ずかしがっているミカナがいる。

……意味がわからん。



さっきまでレイヴンの話を聞き出してやるー的な感じだったのに何故こんな空気になっているのだろうか。

というかミカナって俺の考えていたようなキャラじゃないのか?



魔王城で会った時はビッチな気がしたのに違ったし。理不尽さあるけど……なんか意外と一途にユウガに恋しているっぽい。



こいつはユウガのハーレム一号とかそんなポジションの人間だと思っていたのだが。



「なあ……一体何で悩んでいるんだよ」



レイヴンの話にならないならこちらとしては好都合なので、ミカナの恋愛相談を受けることにする。



「最近……じゃないんだけどある出来事がきっかけでユウガがあまり話をしてくれなくなってね……」



「でもこの前二人でデートしてなかったか?」



「実はこの前の騒動があった時のデートはアタシが無理矢理連れ出したのよ。天気が良いし昔みたいに買い物に行きたいって言って」



そういえばあの日そんなことを話していたな。

それにユウガはセシリアを見つけたらミカナそっちのけでセシリアを連れて店に入っていったし。

ユウガがセシリアに惚れているとしても対応が冷たい気がする。



「まあ……嫌われているのは薄々気が付いていたし、その理由もアタシ知っているから」



「ちょ、待て。理由がわかっているなら何とかすればいいだろ」



「自分で何とか出来るならあんた達に相談なんてしないわよ!」



自分が好きな人に嫌われているという話をしたせいでイライラしているみたいで、逆ギレされてしまった。



「自分で何とかできないって……何をしたんだよ?」



「……そこの剣士なら何となく想像はついているんじゃない?」



ミカナは突然レイヴンに話を振るが、喋れないので肯定か否定の合図しか送れない。

先ほどまで固まったままだったレイヴンがいつの間にか戻っており、首を縦に振り肯定の意を示す。



「いやいや、わかってないの俺だけかよ。悪いけど何の心当たりもないぞ」



「あんたがわかるわけないじゃない。だって事が起こったのはあんたと知り合う前だもの」



「元々知り合った覚えがないんだけどな」



レイヴンとは友人関係だがミカナとは友人ではない。他人以上知り合い未満の関係だと思う。



「……そういえばそうだったわね。じゃあ今から知り合いね」



「ああ、今から知り合いな」



なぜか知り合いを強調してしまう。

普通恋愛相談て友達同士とかにするはずなのにミカナとは知り合いぐらいでいい気がする。

友人になるのはちょっと……というのがミカナにもあるだろうし。



だったら相談するなよと思うかもしれないが、友人は無理でも恋愛に悩む仲間としてなら話を聞くのも悪い気がしないし、こちらとしても参考になるかもしれないからな。



「じゃあ話すけど……その前に聞くわ。あんた今から話すこと絶対口外しないって誓うことできる?」



「いや、そりゃあ大事な話で、誰にも言うなって言うなら言わないよ。俺は約束はしっかり守るほうだし」


「ふーん、ま、剣士にも一応確認するけど……信用してもいい相手よね?」



「……」



レイヴンは力強く頷いた。レイヴンは俺のことを結構信用してくれているのだろうか。

だとしたら嬉しいものだな。



この世界に来て初めて出来た友人だし、俺もレイヴンのことは信用するようにしよう。



心の中でそんな決意をしていると、ミカナがユウガに冷たい態度をとられるようになったきっかけを語り出した。



「正式には公開されていない情報だからあんたは知らないだろうけど……アタシ達、魔王城で何度も全滅しているのよ」



「え、そ、そうなのか?」



ばっちり知っている情報……というか犯人は俺なので驚くことはないのだが、不審に思われたらまずいので驚いた振りをする。



というか何故その話をする必要があるんだ。

……なんだか嫌な予感。



「しかも魔王相手じゃなくてただの魔族一人にね……」



ミカナとレイヴンから哀愁が漂ってきた。

何度もやられたことを思い出したのだろう。

犯人は俺なのでなんだか申し訳ない気持ちになる。



「そ、そんなに強かったのかよ」



何か反応しないと怪しまれるので必死に驚いている振りをしている俺はなんてピエロなんだろうか。

やったのは自分なのにな。



「あいつは強かったわよ。なんで魔王城の中盤なんかにいたのかわからないくらいね。……むしろあいつが私達にとっては魔王みたいな奴だったわ」



……あの頃の勇者パーティーには俺が魔王に映っていたようだ。

まあ、本物の魔王はセシリア抜きで一回目の戦闘で討伐できているからな。



……セシリアも俺のこと魔王みたいだと思っていたんだろうか。

まあ、今は関係ないから今度聞いてみることにしよう。



「アタシ以上の攻撃魔法、僧侶以上の回復魔法、剣士以上の身のこなし。……そしてユウガ以上のバトルセンス……。アタシ達はたった一人の魔族に圧倒されたのよ……」



「ま、マジかよ。そんな奴がいたのか……」



自分だってわかっているのが嫌だ。

何が悲しくて自分の最強伝説を聞かなければならないんだろうか。



完全に口から出る言葉が棒読みになっているが、俺の感想など気にも止めずミカナは話し続ける。



「しかも私達は奴に完全に嘗められていたわ。最初にやられた時は死を覚悟したのに……気が付けばアタシ達全員近くの村に捨てられていたのよ。ご丁寧に奴との闘いで負った傷が回復した状態でね」



「あ、ああ……そうなんだ。なんというか、随分親切な敵だな」



どうしよう、目を合わせて会話が出来ない。

気まずくてレイヴンからすら視線を逸してしまう。



「ふん……アタシからしたらすごい屈辱だったわよ! それからやばいって感じたしね」



「なんでだ?」



「一度闘っただけで圧倒的な力の差を見せ付けられたからよ! アタシ達は大した抵抗も出来ないまま全滅させられたのよ。今までそんな敗北の仕方は一度もなかったのに!」



ぎり……とミカナは歯ぎしりをする。

俺に負けまくったことはミカナにとってかなり悔しい思い出になっているらしい。



確か「フハハハ。そのような脆弱な魔法など!」とか言ってミカナの放った魔法を簡単に相殺させたことも何回かやった記憶がある。



セシリアに会う度にテンションが上がったりしてたし、あの時は常時厨二スイッチが入っていたからな。



「すごい強敵だったんだな……そんな奴をよく倒すことが出来たな」



知っている癖に白々しいと自分で思うが聞かないと逆に不自然なので質問する。


「……そうね」



「……」



ミカナだけでなく、レイヴンまで落ち込みどんよりした空気になる。

なんだか……触れてはいけない話に触れてしまったという感じだ。



「えっと、俺まずいこと言ったみたいだな……ごめん」



正直何故ここで二人がこんな感じになるのかが分からないんだが、とりあえず空気を読んで二人に謝罪する。



「いや、謝らなくていいわよ。ただそいつを倒した……というか退けた時のことを思い出していたの」



「あ、そうなのか」



まあ倒してはいないからな。

一応ミカナやレイヴン達はその場におらずセシリアが一人で俺を倒したことになっているし。



「そう。あの時のことが原因なのよね。アタシが最低なことをしたから……だからユウガはアタシに冷たいのかな……」



ミカナは切なそうな表情で天井を仰いでいる。

その目からはうっすらと涙が……って何だこの空気は、いつの間にかシリアスになっているし。

数秒間、感傷に浸ったミカナは涙を拭って俺に真剣な目で見てくる。



「……今から話すことを聞いたらあんたは怒り狂うかもしれないわね。ユウガと同じ……僧侶のことが好きなあんたならね……」



「えっと……」



「そいつはね。アタシ達を魔王城の奥に通す代わりにある条件を突き付けてきたのよ。……僧侶のみ奴の部屋に残して、アタシとユウガと剣士だけは通すっていう条件をね。それでアタシはユウガや剣士に条件をのむように説得したのよ……」



「え……」



……まさか、ミカナがユウガに嫌われたのってあの時のせいだったのか……?

直接ではないけど……完全に俺のせいじゃね。



ミカナとレイヴンが俯いている中、俺は一人罪悪感で心の中がいっぱいになっていた。

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