友人に恋愛相談してみた
レイヴンを連れて宿に戻る。
部屋に入り適当に姿形を変えたガイが目に映る。
幸い寝ているようなので、気づかれることはないが、いつものように真剣に造らなかったのでまた変だと言われるかもしれない。
そう思いつつ部屋に入り俺はベッドに、レイヴンは椅子に座る。
「……また石像が変わってるな」
ガイを見つめるレイヴン。駄目だしがくるか。
「……へぇ、良いじゃないか」
「え……マジ?」
いつもより手を抜いたのにそんな馬鹿な話はないだろう。
「嘘だろ? あまり時間かけないで造ったんだけど……」
「……今までの奴よりは全然良いと思うぞ」
異世界って本当にわからないな。
俺がおかしいのだろうか?
そんなはずはないと思うんだけどな……たぶん。
「……なんか悪いこと言ったか?」
レイヴンは俺が思いつめている様子を見て、自分が悪い事を言ったと勘違いしたようだ。
たいしたことではないし、今日はガイの石像のことの相談ではないので気にしないようにしよう。
「いや、レイヴンは何も気にすることないよ。……それに今回はこの石像のことの相談じゃないし」
「そうか……良かった」
ふぅ……と息を吐いて安堵するレイヴン。
こんなことにまで気を使ってくれるなんて……本当に良い友人を持ったなぁ、俺。
ぼこぼこにしてデューク達に村へ捨てさせていた魔族の頃の俺をぶん殴ってやりたい。
頼ってみよう、レイヴンなら良いアドバイスを……くれるかな?
よく考えてみたらついこの間まで俺が恋愛相談に乗っていた気がする。
ハピネスとレイヴンがあれ以来会ったりしているのか知らないけれども、そんなにすぐ恋愛について詳しくなれるか?
魔王を倒した勇者パーティーの一人だろうが騎士団の団長だろうが恋愛にそんなことは関係ない。
だから、以前にレイヴンは俺を頼ってきたのだし。
でも、俺ももうレイヴンしか頼りがいないのが現状なのだ。
案外良いアドバイスをしてくれるかもしれないし。
「実は恋愛相談に乗って欲しいんだけど……」
「……俺にか」
「レイヴンにだ」
「……」
微妙な表情になったと思ったら、顎に手を当てて何か考えるそぶりをしだした。どんどん真剣な表情に変わっていき、レイヴンが口を開いた。
「……前回は世話になったからな。正直、力になれるか自信はないが……話をしてみてくれるか?」
すっごいイケメンがイケメンな台詞言っているのは絵になるなぁ。アニメ声だけど。
……って俺は何を失礼なことを考えているんだ!
とにかく相談に乗ってはくれるようなので、話をしてみることにしよう。
「実は、好きな子に少し場をわきまえない言動をしてしまって怒らせちゃったんだ。彼女の母親のおかげで仲直りは出来たんだけど、彼女の母親に半月その子と会っちゃいけないって言われてさ……」
「……それは辛いな」
どうやら同じ恋をしている身として何か通じるものがあるみたいだ。
だけど本題はこれからだ。
「それでその子の母親に次に会う時はしっかりした態度で会えって言われて……どうしたら良いと思う?」
「……難しいな。俺もそんな状況に陥ったことがないからな」
「やっぱり?」
やはりお互いに恋愛初心者だからか、何も良い案が浮かばない。
しかし、このまま何も用意しないでセシリアに会うことは出来ない。
セリアさんに何を言われるかわからないし、俺自身が情けない感じになる。
「……何か詫びの品を贈るというのはどうだろうか?」
恋愛初心者のレイヴンが必死に考えて絞りだしてくれた。
そういえばこの前ユウガのせいで台なしになったセシリアのデート。
アクセサリーショップで良いネックレスを見つけたのに、騒ぎになったせいで結局買えなかったんだっけか。
「レイヴン、その案いいかもしれない。前回その子とデートに行った時にプレゼントにいいなぁって思った物があったんだ。その時は訳あって買えなかったんだけど……ってどうした?」
何故か俺の話を聞いてからレイヴンが段々落ち込み始めた。
俺今の会話で何か悪いこと言ったかな?
「……そうか。ヨウキはもう想い人と一緒にデートする程まで関係が進んでいるんだな。俺はまだデートなんて……」
どうやらハピネスとあれから全く関係が進んでいないようだ。
かわいそうに……なんとか会話のきっかけでも出来れば……そうだ!
「早速俺今からプレゼント買いに行こうと思うんだけど……レイヴンも一緒に行かないか?」
「……俺も一緒に?」
「ああ! レイヴンもハピネスに何かプレゼント買ってやって渡してやればいいじゃん」
「……何の理由もなしにか」
確かにレイヴンはハピネスにプレゼントを渡す何の名目もないけど、別に親睦を深めたいとかそんな感じの理由でいいだろ。
「まあまあ。ハピネスの性格上、変な物でなければ受け取ってくれるぞ。表情にはあまり出さないけど、気に入った物は大事に保管してたりするから心の中では嬉しいと感じたりしているだろうし」
「……本当か」
落ち込んでしょぼくれていた顔が少し明るい表情に変わる。
「本当だ。ハピネスの知り合いである俺が言うんだから間違いない」
「……プレゼント……買ってみようかな」
「よし、そうと決まれば善は急げだ。出かけるぞ!」
レイヴンの腕を掴み部屋の扉を乱暴に開けて連れ出す。
目指す場所はあの時のアクセサリーショップだ。
まだあのネックレスが残っていますようにと祈りながら俺は目的の場所に向けて走りだした。
短くてすみません。




