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説明を求めてみた

「俺がパーティーの準備をしたって……ハピネスが言ってたのか」



「そうですよ。ヨウキさんは私を驚かすのが好きですね。まさか、こんな秘密裏に準備を進めていたなんて気づきませんでしたよ」



昨日、焦りを見せていたのは演技だったんですねと、笑っているセシリア。

演技じゃないから、素で焦っていたからね。



この不可思議な状況をどう受け止めれば良いものか。

一人で混乱していても仕方ないので、セシリアにも仲間になってもらおう。



ハピネスからの知らせとデュークに言われてここに来たことを説明。

俺が準備していないと知るとかなり驚いていた。



会場の準備や料理の手配等、歌だって練習しなくてはいけないのに一人でやれたのだろうかと。



「協力者がいるな」



「ハピネスちゃん一人ではこんな短期間で全てを準備するのは不可能ですよ」



「だよなぁ。俺をここに来るように仕向けたデューク辺りが怪しいな」



「……ハピネスちゃんとデュークさんが一緒ならシークくんも絡んでいるのではないですか」



元部下三人組か、充分可能性があるな。

連携も取れるし手分けして準備していたんだろう。

そうだとしか思えない。



「とにかくパーティー会場に向かおうか。招待状に記載されていたし」



「そうですね。この格好で歩いて行くのは目立ちますし馬車の手配をしてきます」



「俺も一緒に行くよ」



この店は店員に言えば時間はかかるものの馬車の手配をしてくれるらしい。

貴族絡みの店はサービスが整っている。

しかし、入口で案内をしている職員に事情を話したところ。



「馬車の手配ならすでに依頼を受けております」



「えっと……誰からでしょうか」



「デューク様ですね」



ここでデュークの名前が出てきたか。

俺とセシリアが移動で困ることを予期していたようだ。



本人はもう店にはいないらしい。

うーむ……相変わらずこういうところで気が利くな。

職員の案内により、手配された馬車に乗り移動を開始。

道中の話題はやはり。



「デュークが絡んでいるのは確定だな」



「そうですね。馬車の手配まで済ませているとは思いませんでした」



「デュークだからな。俺が姿を消して飛んで行くとかは止めろっていう意味も含めて手配してくれたのかもしれない」



「緊急時でもないのですからミネルバの空を飛ぶのは止めましょう。私が止めていましたよ」



「この服装だと屋根から屋根へと跳ぶこともできないからさぁ」



「正規の移動手段を使いましょうね」



そんな会話をしている内にパーティー会場に到着。

馬車から降りて思ったこと、それは。



「気合い入りすぎだろ……」



俺としては酒場を貸し切りにするとか、ちょっと大きめの会場を借りるとか。

そういう予定だったんだよ。



「これ、普通に貴族が集まる夜会とか開催できそうな建物じゃないか……?」



会場の大きさはそこまでだけど、外装は結構綺麗だよな。

身内でパーティーするにはちょっと大袈裟ではないだろうか。



「これはお母様も協力しているようですね」



「そういうことか」



「中に入ってみましょう」



セシリアと一緒に会場の中へ入る。

受付の職員に招待状を見せると建物の奥へ進むように指示された。



内装はそこまでゴテゴテした飾りがあるわけでもなく、シンプルで落ち着きある感じだ。

格好も相まってか、貴族主催のパーティーに参加しに来た気分に……。



「てか、これもう俺が予定していたパーティーじゃなくなってるよね」



「ヨウキさんは皆さんの悩みをまとめて解決するためにハピネスちゃんが歌える場所が欲しかったんですよね」



「まあ、そんな感じ。ここまでする考えは俺にはなかった」



ハピネスが歌って料理を食べて終わるようなパーティーなんだろうか。

首を傾げつつ歩いていると扉にたどり着いた。



「会場に続く扉だな」



「ヨウキ様主催パーティー、と書かれた看板が置いてありますね」



「俺は案を出しただけだぞ」



それ以外やってないから。

さて、中に何人いるのかな。

セシリアと二人で扉を開けて入場した。



まず目に飛び込んできたのはステージ上に吊るされたの垂れ幕だろう。

ヨウキ、セシリアの結婚式を全力で応援する決意表明パーティーと書かれている。



「は……?」 



「え……?」



俺もセシリアも入って固まったよ。

だってさ、意味がわからないもの。



このパーティーはハピネスの歌を披露して悩み解決に持ってくのが目標で……何がどうなったらこうなるのさ。



困惑するのも無理はないだろう。

しかし、周りは俺たちの回復なんか待ってくれないようで。



「主役が来たっすー」



「遅かったじゃないの」



デュークとミカナがこちらへ寄ってきた。

俺はデューク、セシリアはミカナに引っ張られて席まで案内される。

今日、案内されてばっかだな……じゃなくて!



「おい、デューク。これはどういうことだ」



「どういうことって……ちゃんとあそこに書いてあるじゃないっすか」



デュークは俺の質問に対しての答えはあれだと垂れ幕を指差す。

違う、聞きたいことはそういうことじゃない。



「俺の予定と全然違うんだが説明を求める」



「そうですね。垂れ幕の内容からして私とヨウキさんにとっては非常に有難い話になりますが、ここまでに至った経緯を説明してもらいたいです」



セシリアも加わって事情を知っているであろうデュークとミカナを問い詰める。

二人は少し笑いつつも説明してきた。



「隊長とセシリアさんが悪いと思うんすよ」



「自分たちは二の次で周りのお悩み相談聞いて走り回ってる場合じゃないでしょ」



「今まで二人に頼り過ぎてたっていうのもあるっす。そこは反省点っすね」



「だから……今回は二人のために協力しようって話になったわけ。ついでに驚かせようってことでこのパーティーが計画されたわけよ」



二人の説明を聞いて何となくは理解できた。

つまり、俺たちの結婚式開催が危ういのに周りの面倒みてる場合かよということだな。



それで今までのこともあるから全員で協力しよう。

ついでに驚かすためにパーティーも開催することにしたと。



「まあ、何となくわかったけどさ。言い出しっぺは誰なんだよ」



「デュークさんですか。それともミカナですか」



この二人のどちらかって言うならわかる。

まあ、セリアさんていう可能性もなくはないが。



「何を言ってるんすか。このパーティーの発案者は最初に二人と行動していたハピネスっすよ」



「ええっ!?」



ハピネスが企画したのか。

確かに俺とセシリアとハピネス三人で色々と回ったけどさ。



あの時、変な素振り見せてなかったぞ。

セシリアも思い当たる節が……あるっぽい。

思い起こせばって表情してるもん。



「そういえば……ハピネスちゃんはイレーネさんやミカナと二人きりになった時間がありますね」



「レイヴンの所に行った時もそうだわ」



三人で騎士団本部を出たけどハピネスだけ戻って解散したもんな。

まさか、本当にハピネスが皆に話して計画したのか。



「そういうことっす。ほら、隊長行きつけのケーキ屋さんにも協力してもらったんすよ。テーブルの上を見るっす」



デュークに促されて見てみると何種類ものケーキがテーブルの上に置かれている。

見覚えのある物もあればない物もあるぞ。

新作が混ざってるのか。



「実はウェディングケーキの依頼もしてるっす」



「おい、嘘だろ」



「依頼されたのは初めてらしくてそれで最近は研究のために店を閉めてることがあるみたいっすね」



だからこの前シークと行った時に休みだったのか。

他にも俺とセシリアが知らないことがありそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 驚愕。サプライズ返し。という雰囲気ですね。 良い仲間達だ。
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