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結婚式について話してみた

聞いた瞬間、絶望した。

目の前が真っ暗になるとはこういうことか。

俺とセシリアの結婚式ができない、とセリアさんは言った。



そっかー、セシリアと結婚式できないのか……なるほどー。



「セシリア。プロポーズした時みたいに空で結婚式挙げないか……」



牧師は同じく空を飛べるユウガに頼めば何とかなるからさ。

挙げようよ結婚式。



「ヨウキさん。お母様は式場がないから挙げられないと言ってるわけではないんです。まだ空を飛ぶ選択肢を出すのは早いかと」



「そうだな。まずはセリアさんの話をしっかり聞かないとな」



「はい」



「貴方達、どうにもならなくなったら空で結婚式を挙げる気なの……?」



セリアさんがちょっとだけ呆れ顔している。

まあ、それは最終手段になるな。

そういう方法を取らざるを得ない状況にならないためにも……詳しく話を聞かないと。



「それでお母様。結婚式を挙げられないかもしれないとは何故でしょう」



「えっとね。ほら、この前に勇者様の結婚式があったでしょ。それで帝国の勇者が暴れたじゃない」



「そんなこともあったな」



「ありましたね」



「あの時は黒雷の魔剣士と蒼炎の鋼腕とユウガが弱らせて花嫁のミカナがとどめを刺したんだよな」



「事実として間違っていませんが言い方が……」



セシリアからのツッコミは置いておいて。



「その出来事と俺とセシリアの結婚式。どういう関係があって挙げられないんですか」



「それは警備の問題があってね」



セリアさんの説明によると。

ユウガの結婚式で各国の偉い人たちが集まっている中であんなことが起こってしまった。



ミラー有する帝国も散々叩かれたそうだが……こっちの警備体制も問題視されたらしく。



「セシリアも有名人だからねぇ。人が集まることを問題視する声が多いみたいで。あと、相手が黒雷の魔剣士っていうのも少なからず影響しているみたいよ?」



「えっ?」



「やっぱり得体の知れない誰かっていうのは正体がわかっていないことよりも嫉妬を集めるみたいね」



「ちくしょぉぉぉぉぉぉ!」



これはもう観衆の前でヘルメット脱ぐしかない。

セシリアと結婚式できるなら、厨二全開の黒雷の魔剣士の素顔を晒すことになんら抵抗はないぜ。



「今すぐミネルバの広場で正体ばらしてくるわ。黒雷の魔剣士参上、セシリアと結婚するのは俺だと断言してきてやるぅぅぅぅ!」



「落ち着いてください」



「離してくれ、セシリアぁぁぁぁぁぁ」



超速で走り出そうとしたら腰元に抱きつかれた。

くそっ、強引に振り払ったら怪我させる可能性がある。



行かせてくれ、駄目ですという攻防を見ていたハピネスがぼそっと。



「……羨望」



羨ましそうに俺たちを見ていた。

いやいや、ハピネスとレイヴンも負けていないだろうに。

俺の暴走はセリアさんも説得に加わったことにより、収まった。



「全くもう……私が動いてる段階で正体をばらしたら余計に混乱するでしょう。大事な娘の結婚式だもの。何とかしてみせるわ。いざとなったら……小規模な式にするしかないわね」



「私は構いませんよ」



「俺も……祝福しに来て欲しい人が来てくれたら良いかな」



「貴方たちってそういうところも息ぴったりね」



微笑ましくなるわぁと生暖かい目で見られてしまう。

いやいや、意見が一致しただけなんだが。

それだけでそんな視線を向けられても。

何か恥ずかしくなってきたし、話題を戻すぞ。



「えっと、それでソフィアさんのことなんですけど」



「私としてはもちろん旦那さんも仲直りして欲しいわねぇ」



「全てはこのハピネスにかかってます」



急に振られたハピネスは困惑した表情に。

いやいや、今回の作戦の重要な役割を担うんだからな。



「あら、そうなの。ハピネスちゃん、ソフィアをお願いね」



セリアさんもハピネスにエールを贈る。

雇い主の前で責任重大な役割を担っていることを暴露されたハピネスはこくこくと首を何度も縦に振っていた。



私も頑張るから三人とも頑張ってねーという言葉をかけられ応接室を出る。

そこでまたハピネスに膝裏を蹴られた。



「痛っ!?」



「……余計」



「ああ、さっきセリアさんに言ったことについてか。間違ったことは言ってないだろう」



「……重圧」



ハピネスはジト目で睨んでくる。

ふむ、どうやらセリアさんの言葉が却ってハピネスにプレッシャーを与えることになったと。



それで俺の膝裏に蹴りを入れたのか。

全く、ハピネスはわかってないな。



「良いかハピネス。セリアさんはお前の雇い主でソフィアさんはお前の上司だ。今回の一件の解決に一役買うっていうのはお前にとって悪くない話だろう」



「……肯定」



「お前の歌で身近な人が救われたってなるとレイヴンも評価してくれるはずだ。セリアさんからの評価を早めに貰ったようなもんだ。俺もセシリアも補助するんだからさ」



「歌に関しては私は特に補助できませんが」



「俺も」



その辺はハピネス頑張って。



「……隊長、平常」



「だろう。俺はいつも通りだぞ」



「ヨウキさん。ハピネスちゃんは褒めているのではないかと」



「知ってる」



こんなやり取りはもう数え切れないほどしてるから、特に突っ込まない。

会話しながら歩いていたら、庭園から声が聞こえてきた。

聞き覚えのあるはしゃいでる声だ。



「シークくん、聞いてください。今日も守り神様が気をつけてと宿から送り出してくださったんです。守り神様の方が危険な仕事をしているのに毎日私の心配をしてくれるんですよ。やはり守り神様は最高ですこの前の休日なんかは馬車の通る道は危ないからと私を守るような立ち位置で一緒に歩いてくれて……」



「シークくん。この前旅行のお土産でもらっていた薬草はどんな効果があるのか教えてほしいの。いっぱいもらっていたはずなの!」



「たーすーけーてー」



相変わらずシークが庭園で追いかけ回されている。

モテる男は辛いなぁ。



「……ハピネス。シークも成長したよなぁ」



「……同意」



「あんなに俺たちのことを小馬鹿にして遊んでいたシークがさ」



「……隊長、限定」



遊ばれてたのは俺だけかい。

まあ、思い返せばそうだった気もするけど。

それでもあのシークが女の子に追いかけ回されてるんだもんなぁ。



「ヨウキさん。思い出に浸っていないでシークくんを助けてあげないんですか」



「ハピネス、いつもどうやってあれは終わってるんだ」



「……捕獲、終了」



「捕まるまで終わらないのかよ」



シークも魔王城近くの森で鍛えていた。

身軽で体力もあるし、ミラーにやられてから鍛錬も積んでるはずなんだが。



追いかけるティールちゃんとフィオーラちゃんのスタミナはどうなっているんだ。



「なあ、セシリア。あの二人って体力どうなってんの。シークが簡単に負けるとは思えないんだけど」



「ティールちゃんは自分で調合した強壮薬を飲んでいて、フィオーラちゃんは疲れたら式神に乗って追いかけていますね」



「そこまでしてんの!?」



強壮薬に式神って……遊びの範疇超えてないか。



「子どもは成長するものですね」



「わっ……っと。ソフィアさん」



いつの間にかソフィアさんも合流していた。

掃除道具は相変わらず背負ってる。



「フィオーラもクインも私や夫の知らない間に成長していて。熱心になれることが二人にできたのは良いことなのでしょう」



「ソフィアさん……」



我が子に想うことがあるらしい。

それがどういう悩みなのかはわからない。

セシリアも何と声をかけて良いのかって感じ。



そもそも子どもがいない俺には理解できない悩みだ。

ここはセシリアに任せるか。

俺は俺の役割を果たす。



「シークぅぅぅぅ、今こそ図鑑の恨みを晴らす時だ。覚悟しろ」



旅行で見た図鑑の恨みを今晴らす!



「隊長ー、ここは味方になってよー」



「捕まえて頭をぐりぐりして二人に引き渡してやる!」



鬼が三人になった鬼ごっこはあっという間に決着がついた。

シークが捕まることによって。



「何故、ヨウキさんまで参加してるんですか」



「好都合かなって……」



「目的を忘れないでくださいよ」



「面目ない……」



シークを見たらこれは好機と思ってしまったんだよな。

そんなシークは二人と仲良くお喋り中だ。



モテる男は辛い。

意識をシークたちに向けていたら視線まで向けてしまっていたらしい。



「ちゃんと私の話を聞いてるんでしょうか。視線が合っていない気がするんですけど」



セシリアの怒りを買ってしまった、まずい。



「き、きちんと聞いてます」



「ならきょろきょろしないでください」



「はい。反省したんでそろそろシークを助けに……」



「ハピネス姉。たーすーけーてー」



俺に見切りをつけたシークはハピネスに助けを求めていた。

うーん、ハピネスで何とかできるかね。



心配になって見ていたらハピネスがシークの元へ。

どこに隠していたのか自前の羽根で作った扇を取り出し突風を発生させる。



二人が風に怯んだ隙にシークを引っ張って守るように自分の背中へ。



「……奪取」



「さすがハピネス姉ー。頼りになるー」



シークも助けて貰えて嬉しいのか笑顔でハピネスに抱きついている。

良い絵面だ……泣けてくるぞ。



「本来、ヨウキさんがハピネスちゃんの位置にいなければならないと思うのですが」



「ふっ、俺たちはやられやり返すを繰り返して成長してきたんだ。だから、シークに借りを返さなくてはいけなかったのさ」



「そうですか。では、これからはむきにならず心に余裕を持つようにしましょう。それが精神の成長に繋がるかと」



「それは俺たち四人の鉄の掟が……」



「あるんですか?」



「ないです……」



これからは簡単に頭が茹で上がらないよう心がけよう。

それでシークを狙っていた二人は諦めたのかね。



「ハピネス先輩、シークくんの独占はずるいです」



「そうなの」



「……休憩、終了」



その一言でティールちゃんは慌てた様子で仕事に戻りますと言い走り去った。

あの慌て様は前に何かあったんだろうな。



「……強制、退場」



「今日は失礼するの」



フィオーラちゃんも式神に乗って帰っていった。

こっちも前に何かあったっぽいな。



「……救済、完了」



「ありがとう、ハピネス姉ー」



「……自力、円満」



「はーい。ハピネス姉は厳しいなー」



最後に自分の力で騒動を起こさないように仲良くしろと助言していた。

この感じならハピネス一人でも解決できるんじゃないか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 見せしめとしてヨウキが単騎で帝国を滅ぼせばビビって誰も結婚式を妨害できなくなったりするはず…(危険思考)
[一言] ヨウキ自身どっから来たかもわからない得体の知れないやつであることには変わりないからなぁ・・・w
[一言] まあ確かに黒雷の魔剣士って、一言で言って、実績ある不審者だしねーw
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