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悩んでみた

「いやー、結婚式も無事に終わったなぁ」



一時はどうなることかと思ったけど、セリアさんの協力もあってか、俺とセシリアの結婚式は無事に終わった。



「ユウガとレイヴンが協力してミラーを吹っ飛ばしてくれたのは助かったよ」



俺たちの結婚式にもミラーがやってきて勝負を挑んできたのだ。

覚醒したユウガとレイヴンによって俺の出番はなく、大した被害は出なかった。



ミカナのようにセシリアが荒ぶることもなく、騎士団によって回収されていった。



「アンドレイさんとアミィさんのウエディングケーキもすごかったし。デュークもハピネスは泣いてくれたし。……いやぁ、良かった」



「あの……ヨウキさん」



セシリアが控えめな感じで俺に声をかけてきた。

何を遠慮しているだろう。

聞きたいことがあるなら、はっきり言って欲しい。



「何かな、セシリア」



「……終わってませんよ」



肩を震わせてセシリアが言い放つ。

ちょっと怒っているっぽい。



「……ごめん、聞こえなかった」



俺がそれでもしらばっくれるとセシリアが声を張り上げた。



「結婚式はこれからです!」



「……ですよねー」



はい、まだ何も終わってないです。

ソレイユ、ウッドワンに正体をばらしてから三日も経っていない。



今日はセシリアと我が家でゆっくりしており、昼食を食べているところだ。

そんな時に俺が時間をすっ飛ばした発言をしたのである。



「何故、急に何もかも終わったような雰囲気で会話を始めたのでしょうか。最初、意味が分からなくて反応に困りましたよ」



「だよね」



「全く、式に関してはお母様が順調に準備を進めています。これからは私たちの確認作業も入ってくるでしょう。まあ、私たちの式なのですから、お母様に全て丸投げなんてできるわけがないのですが」



「だよね」



「……ヨウキさん、ふざけているんですか?」



やべっ、頷くだけの返事していたらセシリアの怒りを買ってしまった。

違うんだよ、ふざけてるわけじゃないから。



「情けない話、ここにきて結婚式にびびっている俺がいる」



「安心してください。私が隣にいますから」



「なら、大丈夫だわ」



「はい、解決ですね」



昼食を再開した俺たちであった。



「いやいや、俺の悩みあっさりと解決しすぎじゃない!?」



昼食を再開した、じゃないよ。

ここから俺の悩みをどう解決するかって流れになるもんじゃないか。



「ヨウキさんは私が隣にいるだけでは不服ですか。それとも結婚式はしたくないと。式を挙げない夫婦もいるそうですし、ヨウキさんが望むなら構いませんが」



「式は挙げたいし、セシリアが隣にいるだけで俺は満足」



「満足なら不安はないでしょう。私はヨウキさんのその言葉を聞けて満足です。まだ不安があるならば昼食を終えてからゆっくりとお話しましょう」



「うーん……」



不安はやっぱりないよな。

セシリアにここまで言わせて俺も嘘を吐いたわけじゃないし。



このモヤモヤはなんなのか。

不安じゃないとすると。

頑張れ、ここでいつも答えを出すのが俺だろう。



自分のことなのに何が引っかかっているのか分からず、上の空のまま昼食を終えた。



「片付け、片付けっと……」



「待って下さい、ヨウキさん。片付けの前にお話があります」



「いや、悩み相談は食事の片付けが終わってからでも良いよ」



散らかったまま相談とかしにくいから。

やんわりと断ったつもりだったのにな。



今日は料理がセシリアで片付けは俺という当番。

しかし、俺のことを心配してセシリアも片付けに参加してくれた。

泣きそうである。



片付き綺麗になったテーブルで対面になって座り……セシリアによるカウンセリングが始まった。



「最近、寝れていますか」



「そりゃあもうぐっすりと。セシリアが泊まりに来ている時は特によく眠れる」



「仕事に不満はありませんか」



「最近、働きすぎて自粛しろって言われた」



「身体に不調はありませんか」



「すこぶる健康」



「パートナーとの結婚に不満は」



「全くないです。……あっ!?」



最後の質問が一番聞きたかったことだろう。

急に何の質問かと思ったらそういうことか。



「おかしいですね。ヨウキさんの不安がどこからきているのかわかりません」



うーん、とセシリアが頬に掌を当てて唸っている。

こういう仕草が好きだし、何よりも俺について親身になって考えてくれているのもあってか。

より一層魅力的に感じてしまう。



「……調子も悪くなさそうですね」



「あっ、ばれた?」



「視線で分かりますよ」



「ごめんなさい」



「いえ、怒っているわけではありません。むしろ、恋人からのそういった視線は自分のことを恋愛対象として見ているんだと再認識できるので安心します」



「そういう理由!?」



思わずつっこんでしまった。



「冗談ですよ。どこまでかは教えませんが。それで今はヨウキさんのことですね。最近、何か変わったことはありました?」



「いや、特には。何かあったといえばソレイユとウッドワンが来たことだけど」



その後にレイヴンたちも来たよな。

レイヴンもハピネスの味……いや、セシリアの味がわかっていたから仕分けできたやつ。



「レイヴンたちも来たよね。セシリアとハピネスが料理している間、レイヴンと話しててさ。結婚したらしばらく厨二は自重するっていう」



「それですよ」



「は、厨二封印?」



そんなんで俺がブルーになるわけがない。

いじけることは減ったとはいえ、そろそろ卒業しないといけない。

未練なんてないはず。



「そうではありません。ヨウキさんは心のどこかで結婚したら自由に何でもできなくなると思っているんですよ」



「それは……当たり前じゃない?」



結婚した後も黒雷の魔剣士のノリをしていたらさ。

俺だけの問題にならない、セシリアにも皺寄せが行くんだ。

自重するのは当然だろう。



「俺は覚悟を持ってプロポーズしたつもりだ。セシリアの言う通り俺に原因があるなら解決できるさ。というわけで俺に良い考えが……」



「今回は私に任せて下さい」



久々に計画を練ろうとしたのにセシリアに遮られてしまった。



「任せるって……」



「ヨウキさん。結婚する前に何処かへいきましょう。二人きりで」



セシリアから旅行の申し込みだと……。

こんなにぐいぐいくるセシリアは珍しい。

ここは全力で乗っからないといけない場面だ!



「よし、行こう。二人きりで。新婚旅行ならぬ婚前旅行だ!」



思いっきりはっちゃけよう。

厨二も時には出していこう。

最低限のマナーは守るが……楽しくなってきたぞ。



「プロポーズをしてくれた時、ヨウキさんは私の想像を越えてくれて最高の贈り物までくれました。今度は私がヨウキさんに返す番です」



「そこまで気負わなくても良いんだけど」



「新婚旅行は二人で騒ぎにならない程度の旅行になると思うんです。そのため今回、私はヨウキさんの行動に関してとやかく言わないようにします……度が過ぎていたら注意しますけど」



「いや、そこは助かる。色んな意味で」



暴走することあるから全く注意しなくなるのはやめてほしい。



「そうと決まれば予定を立てないといけませんね。家に帰って考えてみます」



今日はゆっくり過ごすはずだったのだが、セシリアはそそくさと帰っていった。

急に寂しくなったので出かけることに。

夕食の買い物をしようと店に行くと。



「おっ」



「やあ、ヨウキくん」



食材の買い出しに来ていたユウガに遭遇した。

ミカナとは一緒じゃないのか。



「こんなところで会うなんてな」



「そうだね。ヨウキくんはともかく僕は料理をほぼほぼミカナに任せていたから。今じゃそんなことは言ってられないからさ」



この前ミカナの妊娠が発覚したんだったな。

食材の買い出し……家事はユウガがやっているのか?



「極力ミカナの負担にならないように家のことは僕がしているんだ。ミカナはまだ平気って言うけど……僕にできることはこれくらいしかない。出産は女性の戦いで僕は補助。寝たきりっていうのも良くないと思って外出もするけど」



「今日は一人なんだな」



「荷物があったらいざとなった時に困るからね。両手が空いている万全の状態じゃないと不安でさ。ヨウキくん以外、遅れを取ることはないだろうけどね」



ユウガもミカナへの愛が力となってどんどん覚醒している。

そこまで心配する必要はないと思うけど。



「あっ、そろそろ帰るね。家にミカナを二十四分五十六秒待たせてるから」



「お前怖いな」



秒刻みで時計もなしに時間を計れるとか普通に怖いから。



「三十分以上、ミカナを一人にしたくないんだ。これで失礼するよ。……もし、何かあったらいつでも相談に来てね!」



言い残してユウガは聖剣の光を纏い飛んでいった。

……子ども産まれたら、また何かしらの覚醒をしそうだなあいつ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初びびって前話見返したわw
[一言] マリッジブルーですかね。 男にもあると手持ちの漫画にありました。
[良い点] グイグイくるセシリア可愛い さらりと惚気るところも良い [気になる点] これが所謂マリッジブルー? [一言] 最初話を読み飛ばしたのかと思ったw ユウガそれは本当に怖いよ… 奥さん相手じゃ…
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