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魔族に戻ってみた

「セシリア、この現状は全部俺が悪い」



ミラーを倒したとすっかり油断していた。

奴がまだ、人造魔武器とやらを持っているなんて、少し考えたらわかることだった。



「ヨウキさんだけが悪くありません。私は何も出来ませんでしたから」



ティールちゃんに回復魔法を施しながら、申し訳なさそうに答えている。

俺が馬鹿だっただけだ。

最近楽しかったせいか、平和ボケしていたのだろう。身体能力が多少優れていて、魔力無限。

それが俺のチートだ。



こんなんで、好きな娘が守れて、なんでも上手くいくとかどうして考えていたんだろう。

この世界は俺が思っている以上に甘くないのに……。



まだ、挽回できるだろうか。いや、しなければならない。

そのために、先ほど決意したのだ。



「セシリア、村の人達はこっちに来ないよな?」



「……? おそらく来ないと思いますよ」



「ティールちゃんは痛みで気絶中、ガーゴイルは別に大丈夫だし。周りに人は……?」



周りを見渡し、人がいないか確認する。

気配もないし大丈夫だろう。



「ヨウキさん、何をするつもりなんですか」



「決まってるだろ。ミラーを追っかけてぶっ飛ばす。あと、あいつ魔物を嘗めすぎだからさ、トラウマを植え付けて来る。殺しはしないから安心してくれ」



九割殺しぐらいはするけどな。

俺はわざと再生を止めていた額の角と翼を再生し、魔力による筋力強化で筋肉を隆起させる。

上着がビリビリになったが好都合だ。

顔はさすがに変化できないので、スカーフを巻いて口元を隠す。

最後にいつしか、セシリアから貰ったかつらをかぶって完成だ。

念のための変装用として持っていてよかった。



先ほどの俺とは比べものにならないだろう。

身長二メートル超えの化け物のような姿だ。

……顔はあまり変わらないので、隠している。

ミラーに正体をばらすわけにはいかないからな。



「ヨ、ヨウキさん……!?」

セシリアは俺の姿を見て驚いているようだ。

帰ってきたら引かれるかもしれないな。



「じゃあ、行ってくる。ティールちゃんのこと頼んだ」



いつもより低い声で伝え、背中の翼で羽ばたきミラーを探すべく林に向かった。



いつもの厨二はなしで、ただ冷静に思考して暗い林の中を入念に探す。

足跡や気配などを参考に探すこと十数分。

空中からミラーを発見し、急降下して奴の前に姿を現した。



「っち! なんでこんな所に魔族がいるんだよ!?」



どうやら俺だと気づいていないようだな。

ズボン以外全然風貌が違うようにしたし。

そのズボンもビリビリでパンツ状態だからな。




俺を敵と認識したのか剣を向けてくる。

また、人造魔武器とかだろうな。



「今俺さあ、すごく楽しいことがあったばかりでさぁ、早く帰りたいんだよ。だからさぁ、とっとと死んじゃえよ」



俺に向かって切り掛かって来るが、背中の翼を使い飛んで背後に回り、頭を掴んで地面に叩きつけた。



「ぐべぁ!?」



変な声出すなよな。

後ろに羽ばたいて距離をとる。

あのまま、抑えつけて無抵抗のままボコっても良かったが、それじゃあダメだ。ミラーはむくりと起き上がり俺を睨みつける。



「ちきしょう、てめぇは何なんだよぉ!?」



「汝、我が部下であるガーゴイルの片腕と両翼を奪いし者だな。ガーゴイルは我が忠実なしもべだ。我がしもべに対する数々の愚行、万死に値する」



今即興で考えたことをでっちあげてミラーを襲う口実にする。

奴は軽く舌打ちして、バトンを宙に投げた。



バトンから閃光がほとばしり、あたりを照らす。

先ほどの閃光はあのバトンのせいだったのか。

まあ、同じ手をくらうほど馬鹿じゃないけどな。



暗黒魔法ブライト・イート



俺が唱えた魔法は光を喰らうだけの魔法だ。

光を嫌う魔物が住家を作るために覚える魔法だが、こんな使い方もある。

閃光が一瞬で消え失せ、背を向けて逃亡しようとしていたミラーの間抜け姿があらわになった。



すぐに飛んで詰めより、伸ばして強化した爪で背中をエックスに切り裂いた。



「がぁっ!?なんで《フラッシュバトン》の閃光が……」



そのまま地面に倒れ込もうとするが、なんとか倒れずに踏ん張ったようだ。

まあ、倒れても許しはしないけどな。



「面倒だが戦うしかねーなぁ」



何故かニヤニヤしている。逃げようとしたくせに、勝てると思っているのだろうか。

だとしたらめでたい奴だな。

今回は魔族の姿でフルパワーだぞ。

まあ、俺だって気づいてないみたいだから、関係ないか。



「死にやがれぇぇ」



剣を持ってこちらに向かってくる。

また馬鹿正直に真っすぐ向かって来た、学習しろよ。飛んで背後に回り、剣を持っている腕を掴み容赦なくへし折る。



「ぎ……!?」



悲鳴をあげずに声を殺して、剣を捨てて俺から距離をとる。

悲鳴をあげなかったのは立派だな。



「ちきしょう……なんで魔王が倒されたのにこんな強い魔族が生き残ってるんだよ」



折ってやった腕を掴み、こちらを睨みつけている。

睨みつける元気があるならまだ大丈夫だな。

休ませてやる気はないので、近づいて腹部に蹴りを入れると、サッカーボールのように飛んでいき、木にぶつかって止まった。



「まだだ、我の気はおさまらん。汝、覚悟するが良い」



俺だとばれないように演技しているけど、この姿なら案外あってるなあ。

できれば、もうこの姿にならないようにしたいものだ。



そろそろ、セシリアの所に帰りたいしさっさと終わらせよう。

今の俺は人間ヨウキじゃない、魔族のヨウキだ。

非情になっても構わないだろう。

九割殺しは確定事項だしな。



折れてない方の腕で短剣を持って向かって来た。

先ほどよりも速い。

また、人造魔武器か。

今度はスピードが上がる効果があるらしい。



地面を思いきり殴って、地震を起こし奴の動きを止める。

その間に翼で飛び、その勢いを利用してミラーの腹部に拳を入れた。

なんか、骨が折れる音がした。

血を吐いているので、内臓もいくつかいったっぽいな。



倒れこんだミラーの両足をへし折り、奴の持ち物を漁って人造魔武器を見つけては全部ぶっ壊した。

そして、ミラーの襟首を掴み、背中の翼で羽ばたいて空中に飛んだ。

そのまま、ある目的地に向かう。



「がふっ……。俺を……どこに連れてくつもりだぁっ!?」



抵抗したいのだろうができないのだろう。

片腕、両足、アバラあたりの骨が折れていて内臓にもダメージを負っているのだ。

それに、こいつが持っていた人造魔武器は俺が全部ぶっ壊したからな。

戦う術もないだろう。



「……」



俺は目的地である川にたどり着いた。

以前、セシリアに地理を学んだ方が良いと言われ、少し勉強したことがあった。この川はガリス帝国の近くに繋がっている。



「おい、まさかお前……」



俺は掴んでいた奴の襟首から手を離した。

運が良ければ国に帰れるだろう。

殺しはしない、セシリアと約束したからな。



俺はミラーが川に落ちたのを見届けると林に戻り、着地した。



「ふう……」



魔力によって隆起させていた筋肉を戻す。

上半身裸でズボンがビリビリという姿になるが仕方ない。

……戻ったら事情を知らない村人からはなんと言われるだろうか?

変態とか言われないかな、心配だ。



「……おっといけね、忘れるとこだった」



俺は額にある角をへし折って、翼をもいだ。

激痛が走る行為だが我慢をする。

最後に被っていたかつらをビリビリになったズボンのポケットにつっこみ、人間のヨウキに戻った。



「さて、セシリアの所に戻るか」



ミラーへの鉄槌を完了した俺はセシリアの元へ走り出した。




次の話でガーゴイル編は終わりです。

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