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寝たふりをしてみた

ミッション、セシリアと恋人繋ぎ。

さりげなく目配せしてから、手に触れればいける……ヘルメットが邪魔で目配せできねぇ。



もう馬車の中だし黒雷の魔剣士からヨウキに戻っても良いよな。



顔を出すためにヘルメットに手をかけると……セシリアに手首を掴まれた。



「馬車に乗っているからといって安心するのは早いですよ。窓から中を覗かれたら……」



そういう危険性もあるのか。

これは考えが足りなかった。



「今回はレイヴンさんとハピネスちゃんが一緒ですし、慎重に行動しないと」



「そうだったな……まあ、二人でいる時には大胆な行動に出るかもしれないが」



ここでちょっと決めてみたんだけどどうですかね。

セシリアの反応はどうかな、こういう時に視線がばれないって得している気分になる。



「そうですか……ということは期待しても良いということですね。大胆な行動とは何をするのか、楽しみにしています」



軽く微笑まれて撃沈した。

自滅という形でミッションが追加される。

何をやっているんだ俺は!



「ふっ、黒雷の魔剣士の言葉だ。期待に胸を膨らませておくと良い」



今度は何を言っているんだという話。

全くのノープランなんですけど……黒雷の魔剣士だから言っちゃうんだよ。



いや、黒雷の魔剣士に不可能はない。

これまで数々の依頼をこなしてきたんだ。



恋人一人へ大胆な行動に出れなくてどうするよ。

やってやろうじゃないか……このタイミングで恋人繋ぎだ。



「……もうすぐミネルバを抜けるな」



唐突にレイヴンが呟いた。

ハピネスに向けての言葉だろうが……まだ、視線は窓の外に向いている。



手を繋いでいるんだから、頑張ってハピネスの方を向けって。

俺の念は通じず、レイヴンはそのままの体勢で言葉を続ける。



「……最近、仕事はどうなんだ」



「……順調」



「……そうか。ハピネスは手先が器用で物覚えが良いもんな」



「……自慢」



「……ああ、誰かに自慢しても良い部分だと思うぞ」



「……自慢の……彼女?」



ハピネスから仕掛けていったか。

あのハピネスがこんなことを言うとは想定外。

レイヴンの反応は……表情変わらず。



普段のレイヴンなら、もっと慌てた感じで肯定しそうなものだけど。



「……ハピネスは俺の自慢の彼女だ。ハピネスはどうかな。俺は自慢できる彼氏だろうか?」



「……当然」



考える間もなく答えたな。



「……仕事を理由に寂しい想いをさせていたとしてもか」



「……旅行、計画、実現」



それだけでハピネスは充分嬉しいと伝えたいらしい。



「……レイヴン、ありがと」



しっかりと言葉を発するとは珍しい。

家族的な視線で見たら、感動物なんだけど。

ちゃんとお礼を言いたかったんだろうな。



「……まだ、始まったばかりなんだ。楽しいことはこれから起こす。ハピネスが満足してくれたら……俺はそれで良い」



「……不十分」



「……どうしてだ?」



「……満足、一緒」



「……ハピネスは優しいな」



窓の外に視線を向けたまま、レイヴンは柔らかな笑みを浮かべた。

……俺とセシリアもいること忘れてないか。



二人の会話を聞いてて良いものかと気が気でなかった。

セシリアなんて自慢の彼女の件辺りから俺のことをちらちら見ていたからな。



俺と同じような心境だったんだろう。

セシリアには悪いけど何もできなかったよ……。



こればっかりは黒雷の魔剣士でもどうしようもない。

二人の世界を壊さないように大人しくしているしかなかった。



「……門が見えてきたぞ」



「……確認」



「……実は窓の外を見ていたのは理由があってな。情けない話なんだが聞いてくれるだろうか」



「……バッチこい」



ハピネスの口から久々に聞いたな、その言葉。

以前はどこで覚えたと心の中でツッコミをしていたものだ。



ふと懐かしい思い出が頭をよぎり、窓の外を見たらちょうどミネルバの門から出たところだった。

誰もいない……この時間は道が混んでいないのか。



レイヴンめ、見回りの経験を活かして街道があまり使われない日程を組んだな。

やるじゃないか、レイヴンよ。



「……ハピネス」



視線を窓からレイヴンたちに戻したら、レイヴンがハピネスを抱きしめていた。

……いや、俺とセシリアいるよ?



「……改めて言わせてくれ。寂しい想いをさせて済まなかった。こんなことで許してもらおうとかそういうことじゃないんだ。俺も……会いたいのを我慢していた」



「……同意」



「……窓から中を覗かれる危険性があったからな。とはいえ、ハピネスを間近に見て我慢する自信がなかった」



セシリアと同じことを考えていたのか。

窓の外を見てハピネスの方を向かなかったのはそういう理由か。



成る程……じゃねぇよ!

本心なのもあるだろうけど、大胆に攻め過ぎ。



ハピネスの顔が今まで見たことないくらいに真っ赤に染まっている。

二人きりの時にしか見せてはいけない表情だぞ、それ。



「……今回は仕事も挟んでいるけど、それ以外の時間はできるだけ一緒にいたい。ハピネスの意見は後で聞かせてくれ。考える時間も必要だろうから」



「……り、了承」



「……俺はその間、ハピネスと二人で何処に行こうか何を食べようか何をしようかを考えておくから」



こくこくと忙しなくハピネスの首が上下している。

最早、言葉を発する余裕もなくなってしまったか。



「……あと、ハピネスの迷惑じゃなければで良いんだが。もう少しこのままでいても良いか」



ハピネスは無言でレイヴンの首元に腕を絡めた。

つまり、それが質問への返事である。



このままキスでもしそうな勢いだがそこまではいかなかった。

キスしなくてもこっちはお腹いっぱいだけど。



本当に言いたい、俺とセシリアも馬車に乗っているということを。

こうなったら、俺とセシリアもイチャついてやる。



パッと横を向いたらセシリアは目を瞑り寝ていた……ように見える。

そう、これは寝たふりである。



何故なんだ、セシリア。

そっと耳打ちして寝たふりの理由を聞く。



「セシリア、起きてるよね。なんで寝たふりをしているのか」



「……本当は眠ろうとしたんですけど。昨日、今日のために睡眠を充分に取ったので眠れないんですよね。今の二人は久し振りの再会なわけですから、二人きりにさせてあげた方が良いかと」



「そういうことね」



セシリアの優しさ故の行動だったと。

寝なくてもこの二人、俺たちを意識してないみたいだし関係ない気もする。



まあ、視線があるかないかで気分も変わるか。

目的地まではまだまだ時間かかるし……。



「ここは気を使うかね」



眠くないけど頑張ったら眠れるだろう。

セシリアに合わせて寝ようと努力してみた。

しかし、レイヴンとハピネスの会話が気になってしまい。



結局、眠れずに寝たふりをすることになった。

それとレイヴンが予想以上の大胆な行動に出たからな。



セシリアに言っちゃったからなぁ……かなりハードル上がってる気がする。



レイヴンたちの会話、追加されたミッションにより馬車内で恋人繋ぎできず。

馬車の中でクライマックスみたいな雰囲気出されたら難しいって……。

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