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元部下のモテ期を見てみた

「隊長ー、助けてー」



やはり、俺の元へやってくるシーク。

アクセサリーショップはもう出たし、隠す必要もないのでヨウジ終了。



「おう、シーク。両手に華だな」



その年で女の子二人も侍らせていると。

そんな軽い冗談も今のシークには通じないようで。

俺の顔を見るなり涙目で現状を訴えてきた。



「腕が……腕がもげちゃうぅぅぅ」



「大丈夫だ。お前は俺やデューク、ハピネスが育てたんだぞ。それくらいでもげたりはしないさ」



「えっ、ハピネスさんに育てられたって。シークくん、詳しく教えてください!」



「ダメなの。シークくんは私と薬の話をするの」



「いいえ、シークくんは守り神様の素晴らしさについて私と語るんです!」



俺の余計な一言のせいでシークのファンが一人追加されてしまった。



四人で騒いでる間にレイヴンに状況説明をしないと。

一応周りには聞こえないようにひそひそ話スタイルで話す。



「……今、腕を引っ張られているのはデュークやハピネスと同じヨウキの仲間だよな」



「ああ。ちょっとモテ期が到来しているらしい」



「……助けた方がいいんじゃないのか。今も悲鳴を上げながら助けを求めてきているが」



「今に始まったことじゃないんだよなぁ……。まあ、助けるとして。レイヴンのことは何て説明しようか」



「……そうだな。ギルドで知り合った仲間とでもしておけば良いだろう」



「じゃあ、そんな感じで」



作戦会議も終わったところで三人からぐいぐい引っ張られているシークを救出する。



「ほら、三人ともシークが苦しんでるから、そこまでな。話なら俺がケーキ奢ってやるから。そこでゆっくりしよう」



何とか説得してマッスルパティシエの店へと向かった。

この前の尾行で来たけど何も食べてないからな。



店に入るとアミィさんから久々の来店ですね、と営業スマイル。

すみません、最近来たんですよとは言わず忙しくてと誤魔化した。



偶には財布の紐を緩くしても良いだろうと好きなもん食えと言った結果。

一番遠慮しなかったのは言わずもがな。



「わーい、ケーキー」



シークの前にはズラッと注文されたケーキが並んでいる。

ティールちゃんとクインくんは一個、フィオーラちゃんは二個の注文だ。



「やっぱり、お前は容赦ねぇな」



「だって隊長が良いって言ったじゃーん」



パクパクと笑顔でケーキを口に運んでいくシーク。

お前、そんなに大食いじゃないだろ。

晩飯食えなくなっても知らんぞ。



「……うん」



ティールちゃんは筋肉を見せながら試食会を開いてるアンドレイさんを見ている。

ガイ以外の男性に反応を示すとは珍しい。



「守り神様の方が勝っています」



「何に?」



思わず突っ込んでしまった。

だって、急に勝ってるとか言い出したら気になるし。



「逞しさです」



「あー……」



そういう話か。

ティールちゃんてガタイの良さとか気にするタイプだったのね。



「守り神様程ではないですがヨウキさん、以前会った時よりも逞しくなりました?」



強化の魔法は軽く解いたが、まだ完全なるヨウキではない。

出てきたところで会ったからな、急に体格変わったらおかしいからな。



それでも普段よりビルドアップしているには違いないので、レイヴンを使った苦しい言い訳を披露しよう。



「いやー、最近身体を鍛えているってのもあるけど、ギルドで知り合った仲間の前とはいえ、少し見栄を張りたくて特注の靴をね。相手には速攻でばれたんだけどさ」



はははと苦笑いして誤魔化す。

大分、苦しい言い訳だけど信じてくれるか。



「そうだったんですか……まあ、それでも守り神様の逞しさには敵いませんよー?」



赤らめた頰を両手に当てキャーキャー言ってるティールちゃん。

相変わらずの平常運転、俺の些細な変化に対する突っ込みを深くするつもりはないらしい。



「そうだ、聞いてくださいよヨウキさん。この前守り神様と二人で討伐系の依頼に行ったんです。そしたら守り神様がですね。前は我輩に任せろ、ティールは絶対に守る。だから、援護は頼んだぞ……って。その時の守り神様がすごくかっこよくて、援護は任せたと私を信頼してくれている感じの言葉も嬉しくてですね。道中も私にこまめに声をかけてくれて、安心させてくれる言葉も沢山……」



「そ、そっか」



どうやら、スイッチが入ったらしい。

ガイへの自慢話が止まらなくなったティールちゃん。

これは相手するしかないなと思っていたら。



「どうぞ、本日のサービスです」



マッスルパティシエ、アンドレイさんから、試食のケーキがテーブルに置かれる。

どうもと頭を下げたが、テーブルから離れていかない……どうかしたのか?



「お客様、大変失礼ですが先程の会話に私が逞しさで劣っていると聞こえたのですが……」



おいおい、さっきの会話聞こえたのかよ。

結構離れてたし、そこまで大きい声で話していたわけでもないぞ。



筋肉センサーか、筋肉センサーだな?

自分の肉体に絶対の自信を持ったアンドレイさんだからこそ、スルーできなかったと。



とはいえ、失礼だったのはこっちだ。

試食のケーキまで振舞ってもらっているのだから、大人しく謝罪しよう。



「いやいや、失礼だったのはこっちです。すみませんでした。……ほら、ティールちゃんも」



「……はい、ごめんなさい。失礼なことを言いました」



表面上は謝ってるけど、ガイの方が逞しいってことに関しては覆す気はなさそうだ。

撤回するとは言ってないからな。



そんな細かいところまでアンドレイさんも気にしな……。



「成る程……むんっ!」



なんか急にアンドレイさんがポージングをしだした。

ティールちゃんへ向けてなんだろうけど、本人は全く興味がなさそうな目をしている。

他の客の目は釘付けなんだけどな、俺も含めて。



「やっぱり守り神様の方が……」



「はいはい。ティールちゃん、少し静かにしようか!」



これ以上火をつけないでくれ。

俺の制止が遅かったのかアンドレイさんはヒートアップ。



様々なポージングを見せるもティールちゃんには効果無し。

まあ、ティールちゃんはガイにしか興味持たないからな。



そもそも、ティールちゃんくらいの年齢の女の子が逞しい筋肉に興味持ったりするかも謎だし。

ひとしきりポージングしたところで効果がないことを悟ったのか。



アンドレイさんは自分の肉体をあちこち触り、給仕しているアミィさんに一言告げた。



「アミィよ。兄は明日から……肉体を鍛え直す旅に出るっ!」



給仕しているアミィさんが何言ってるの兄さんと言っている。

いや……俺も唐突にそんなこと言われたらどういうことってなるわ。



「お客様、よろしければお客様の言う守り神様についてお話しを聞かせてもらっても良いですか?」



「守り神様の話ですか。任せて下さい。守り神様はですね……」



ティールちゃんの話の相手がアンドレイさんに移った。

仕事中だから、そこまで長く話したりはしないだろうけどな。



「シークくん、これも美味しいの」



「うん。これも良いねー」



フィオーラちゃんとシークはなんか良い感じである。

この場で薬の知識とか話さないよな。

普通に子どもらしいやり取りをしているようで何より。



さて、レイヴン……いや、今はレインか。

クインくんと会話しているみたいだけど何の話題かね。



「身体作りの訓練の話については以上。何か質問は?」



「すごい……こんな訓練方法があったなんて」



何で訓練メニューについての話。

クインくんが使っているメモ帳ってレイヴンが普段使っているメモ帳だし。



「好きな人ができたらその人を守れるような男になりたい。その年で良い心がけをしているのね」



「はい。以前の僕はただ母に助言をもらい、父のだらけているのに強いというよく分からない姿を見て修行していたのですが」



おいクレイマン、言われてるぞ。

そして、話の展開が怪しい気がするんだが。



「その……憧れてる人がいてその人は絶対に僕よりも強いんです。それでも少しは近づきたいなって」



クインくんの憧れてる人ってハピネスだよな……この流れは。



「憧れ……つまり好きな人ってことね」



おい、レイヴンそれ以上は言うな。



「私もこれまで色々と悩み苦しんだ身。私で良ければ話を聞く」



いや、聞いちゃダメだって……。

女装している恋敵へ恋愛相談するというよく分からない展開に。



止めた方が良いんだろうけど、ここで止めたら不自然だしなぁ。

ちょっと様子を見てみるか。

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