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友人に提案してみた

セシリアと仲良くソフィアさんから説教を受けてから数日。

二人三脚で頑張りましょうとセシリアと決めた。



劣等感上等、これから家事を覚えていけば問題なし。

俺にしかできない分野があるのだから、そんなに気負わなくても良いと言われたが、やれることは多い方が良い。



セシリアが家に来た時は家事とか教えてもらっている。

教え方はそれはもうビシバシと……スパルタ方式をとっていたり。



甘えは俺の成長を阻害する。

家事もこなせるように日々精進。



まあ、今日は何も予定を入れていないし、呑気にマッスルパティシエのいる店で一人ティータイムを楽しもう。



でも、こういう時に限って何かに巻き込まれたりするんだよなぁ。



ミカナとユウガの新婚トラブルかシークを巡ってティールちゃんとフィオーラちゃんのバトルか。



ガイが一緒に依頼に行かないかと誘ってくるパターンもある。



ソレイユが今後の動向について探りを入れてくる……なんてこともありそうだ。



「ん?」



視線の先に発見したのは…….レイヴンだ。

騎士団の見回り中のようだ。

騎士団員と何か話している。



仕事の会話だろうか、話し終えると息を一つ吐いて視線をある店へ送っていた。

一瞬だったが俺には分かったぞ。



レイヴンが視線を送っていたのはアクセサリーショップだ。

ハピネスへのプレゼントでも買いに行こうという魂胆だな。



さりげなく近寄るとレイヴンも俺に気づいた。



「よっ、仕事おつかれ」



「……ヨウキか。ちょうど良かった。これから時間はあるか?」



「別に良いぞ」



「……それじゃあ、寮まで付いてきてくれないか。準備をするから」



「仕事は良いのか?」



「……今日で何連勤目だと思う?」




「よし、行こう」



騎士団長は結構大変らしい。

最近、ハピネスと会えていなかったりするんだろうなぁ。



アクセサリーの一つもプレゼントしたくもなるということだ。

騎士団寮に着き少し待っていたら、鎧を外し変装したレイヴンが出てきた。



「……急な誘いですまないな」



「気にすんなって。俺の行きつけの店で良いか?」



「いや、出来れば人目の少ない場所が良い。聞かれたくない話なんだ」



レイヴンの表情から本気度が伝わってくる。

どこに目があるか分からないからな。



ただの世間話程度なら良いが、本気の相談事だと。

ならば、俺の家へ招待するしかないな。



二人で適当にぶらついて路地裏に入り、いつものように魔法で消えて我が家へ。

レイヴンの変装を見破っているのか、つけている奴がいたからな。



一緒にいた俺のこともターゲットにされるかもしれん。

全く困った連中だ。

そんな奴らは適当に撒けば良いとして問題はレイヴンか。



「話とは?」



「……最近、会えていないんだ」



成る程、やはりそれか。

レイヴン休み確保、ハピネスを家に連れてくる、二人に家を貸す。



計画はハピネスと相談して後に決めて、何かプレゼントしたいというやつかな。



「……俺の仕事が忙しかったり周りの目もあってという理由だから仕方ないんだが。最近、ユウガは結婚して新婚旅行」



「そうだな」



「ヨウキは正体を隠してだが、セシリアとパートナー発言だ」



「……そうだな」



レイヴンの言葉に力が無くなっていく。

これはあれだ……。



「……俺は何をしているんだろうか」



自分だけ行動が遅れて落ち込んでいるというやつだ。

がっくりと項垂れているし間違いない。



「……分かっているんだ。人にはそれぞれ道のりの長さも速さも違うと。比べてはいけない、焦っても仕方ないと分かっている。言葉ではそう言えてもな」



「思うことはあると」



「……ハピネスも周りと比べて行動を起こしたと知ったらよく思わないと分かっているんだが。それでも一歩先へ関係を進めたいと考えている」



どうアドバイスすべきか。

レイヴンの表情は真剣そのもの、周りに合わせた……なんてハピネスは気にしないだろう。



そういう理由でもレイヴンが自分に一緒になろうと行動しているに変わりないのだから、嬉しく思うはず。



「良いんじゃないか。ハピネスもレイヴンが何か計画したら喜ぶだろうさ」



「……そうか。なら、ヨウキに相談だ」



「何だ。家を貸してほしいとか?」



「……指輪を買いたいんだ」



「あー、さっきアクセサリーショップを見ていたな。どんな物を買うかは自分で決めた方が……」



「……婚約指輪を、買いたくて」



「え?」



それってプロポーズ用のってことですかね。

ちょっと目が点になった俺を見てレイヴンが気まずそうに目を逸らした。



ただのプレゼントではなく一世一代の大勝負に出ると。



「それって俺に相談することか?」



相談されても買う買わないは自分で判断すべきだぞ。

まあ、もちろんそんな相談ではないだろうが。



「……ヨウキもさっき一緒に歩いていて気づいただろうが、最近、尾行されることが多くてな」



「いたな。撒いたけど」



「……どうやら俺に女性の影を感じているようでな。まあ、当たってはいるんだが行動が制限されているんだ」



セシリアと同じような目に遭っている。

やられたら、私生活で油断できなくなるんだよな、どこを記事にされるかもと思ったら軽率な行動は取れないし。



「……アクセサリーショップになんて入って婚約指輪なんて選んでいたらすぐに記事に書かれる」



「確かにな」



「……俺が質問攻めにされるのは良い。ただ、指輪を買ったことが世間に知れたら、ハピネスの耳にも入るだろう」



「ああー、成る程。それは嫌だわ」



サプライズ感がゼロ、レイヴンはそういうところも気にしていると。



「変装して行けば良いんじゃないか。さっきはばれたけど俺の手にかかれば素性が全く分からないようにできるぞ」



黒雷の魔剣士然り、ガイの変装然り、完全シークレット装備には自信がある。

しかし、レイヴンは無理だろうと首を横に振った。



「……変装しても俺はこの声でばれてしまう可能性が高い」



「そうだった……」



レイヴンの動向が気になられている今、レイヴンの特徴的な声は自分の居場所を知らせてしまう。



「……どうにかならないか?」



他ならぬレイヴンの頼みだ。

断るわけにはいかない、今までいくつもの妙案を編み出してきた俺を舐めるなよ。



「閃いたぞ、レイヴン」



「……本当か?」



「ああ。だが、この作戦はレイヴンに相当な負担を強いることになるだろう。それでも良いか?」



「……俺から無理を言って頼み込んでいるんだ。文句なんて言わないさ」



レイヴンも覚悟を決めていると。

ならばもう悩む必要はあるまい。

俺はレイヴンの両肩をがっしり掴んで宣言した。



「女装しろ!」



これしか手はない。

男性のままで変装が無理なら女になれば良いんだよ。

レイヴンは目を見開いて何……と呟いている。



女装はきついだろうが、レイヴンの望みを叶えるならこれくらいはやってもらわないと。



「……俺に女装して婚約指輪を買いに行けと?」



「いや、そうじゃない。女装したレイヴンだけに行かせたらばれる可能性が少なからず出てくる」



行くならカップルか夫婦で行かないと。



「……まさか」



「俺も変装していくから二人で指輪を買いに行くぞ」



提案したのは俺なんだから役割を果たさないとなるまい。

色々ときついかもしれんがな。

あとはレイヴン次第である。

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