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伝言を聞いてみた

「……良いのか?」



「ああ。俺が協力すればレイヴンを誰にもばれずにここから連れ出すなんて容易だし」



ハピネスは普通に呼べば良いからな。

俺もその日、家を空ければ問題ない、完璧に二人きりだ。



キッチンも使って良いぞ、一日共同生活をしてみるのも悪くないだろう。

レイヴンは考える素振りを見せていたがすぐに折れた。



「……頼めるか?」



「任せとけ」



こうして俺の家が二人の密会場所に決まったのであった。

日程は俺やデュークが伝達役になり、ハピネスとレイヴンで相談して決めるという。

楽しみにしとけと言い残し、帰路についた。



後日、二階の掃除をしていると扉を叩く音が聞こえた。

箒やちり取りを置いて、一階へと向かう。

扉を開けたらハピネスがいた。



「……来た」



「おう。ちょうど良いところに来たな。上がってくれ」



決まったことを報告しないとな。

向かい合わせになる形で椅子に座る。

まずはレイヴンの様子から話していこうか。



「レイヴンに会いに行ったんだが、あいつも相当きついみたいだ」



「……疲労?」



「違う。お前に会えなくてだよ」



何を勘違いしたのか、レイヴンがきついって言ったら、ハピネスと会えないからに決まってるだろ。

日々の鍛練を怠っていないレイヴンが疲労くらいで弱音を吐くわけない。



……まあ、自分と会えなくてきついなんて言われたらなぁ。

顔を横に向けやがった、照れてるな。

落ち込んでる理由が一緒っていうのもあるかね。

この初々しい感じ見てると、協力したくなるわ。



「そういうわけで、俺からした提案があってな。俺の家で逢い引きすれば良いんじゃないかと。ハピネスはこうやって家に来て、レイヴンは俺がこっそりと連れてくるから」



「……迷惑」



「そんなことないって、レイヴンも良いのかって聞いてたけどさ。二人だって辛いだろうし。二階を好きに使ってくれて構わない。ちなみに今、掃除中な」



こいつも今更、何を遠慮しているのやら。

この前の態度を見てたけど、どうしても会いたいって感じだったぞ。

もうちょい、押してみるか。



「俺はその日家に帰ってこないから、一日中二人きりだぞ。レイヴンにも言ったが、キッチンも好きに使って良い。レイヴンはお前との将来をしっかりと考えてるんだ。お前も知ってるだろう。今の内に同棲生活の練習しておけ」



「……将来、同棲」



ハピネスが頬を染めて考え込んでいる。

言い過ぎたかな、俺の前でしちゃいけない顔をしてるぞ。

なるべく見ないようにしよう、レイヴンに悪いし。



一人、別世界へと旅立ったハピネスから目を逸らして、二階に上がり掃除の続きを始めた。

俺が二階に上がっても気づかない辺り、相当舞い上がってるらしい。



皆、それぞれ意識が変わっていってるんだな。

箒で床をはきつつ、考える。

ユウガとミカナは結婚、レイヴンとハピネスも将来設計を始めた。



ティールちゃんとガイも……あの二人は上手くやっていくんだろう、うん。

デュークは相談してくるタイプじゃないからな。

気がつけば付き合っていて、ひっそりと二人で人里離れた場所で暮らしそうだ。



シークも周りが賑やかになってるし、問題ない……となると。



「俺はどうするべきかねぇ?」



ここまできたら、誰かに相談なんてことはしない。

協力を頼むのは良い、ただ、今後の方針については俺たち二人で決めることだ。



一人で悩んでも仕方ない……とはいえ、セシリアと会ってどうしようか、なんて言うのも駄目だ。

いくつか案を……今の俺の気持ちを伝えねばなるまい。



「俺たちは俺たちのペースで……なんて言ってたらな」



俺とセシリアはそれで良くても周りが黙っていてくれない。

立場とかがあるからな。

お互い好き合ってるだけでも、上手くいかないもんだよなぁ……。



気が重くなっても掃除する手は止まらない。

なんか掃除することで現実から逃げてるみたいだ。

一心不乱に手を動かし、掃除が一段落……っつーか、遅い!



掃除を終えて、これじゃ雰囲気出ねぇなーって思ったから、がっつり模様替えをしたんだけど。

勝手に帰ったのかなーと思ってたら、階段を上がる音が聞こえ、ハピネスが部屋に入ってきた。



「やっと来たか。来ないからてっきり帰ったのかと思ったぞ。あれか、二人きりでお泊まりって考えて頭の中がパニックになったか、そうだろ、そうだよな」



「……うるさい」



うるさいと言いつつ、顔が赤くなってますが、ハピネスさん。

もうちょっと意地悪してみるか、レイヴンへの良い土産話にもなるし。



「いやー、レイヴンも男だからな。久しぶりに会うんだし……うん。まあ、頑張れよ。いちいち顔を赤くしてたら、レイヴンも遠慮するかもしれないぞー?」



「……潰す」



ハピネスが扇を取り出した。

やばい、言い過ぎたな。

しかし、俺には切り札がある。



「悪い悪い、言い過ぎた。ほら、この部屋、自由に使って良いからさ。ベッド一個しかないから、我慢してくれ」



「……一個!?」



ハピネスが珍しく、驚いた表情をしている。

構えていた扇を床に落とすくらいだ。

そんなに衝撃的だったのか。



「いやぁ、元々あった家財で処分した物もあるからさ。ベッド一個しかないんだよ」



もちろん嘘である。

こんな二階建ての家にベッドが一個とかありえない。

俺が寝ている部屋にもあるし、他の部屋にだって予備のベッドはある。

ただ……な? 



「一個で良いだろ。くっ付けば、一人用でも寝れるしさ。……ああ、レイヴンは体格良いから、相当密着しないとならないけどな。まっ、久しぶりに会うんだから、それぐらいのサービスはしてやっても」



「……伝言」



「伝言、レイヴンにか。なんて言っとく?」



シングルベッドって伝えるか。



「……お嬢様」



「セシリアからか! 俺にだよな、何て言ってた」



俺からも伝言があるが、先にセシリアの意見を聞きたい。

直接あって相談すべきだろうし、いつ時間が空くのか知りたいところだ。



ただ、俺の反応を見たハピネスが不敵な笑みを浮かべている。

やばい、遊びすぎた。



「……教えて欲しい、よね?」



「調子にのってすみませんでした」



男は引き際が肝心だ。

綺麗な角度で頭を下げました。



「……手紙」



「おおーっ、ありがとよ」



ハピネスから手紙を受け取り、内容をチェック……何々。



「ヨウキさん、お元気でしょうか。暴走していませんか。私にはそういった情報が流れてきていないので安心しています。ソフィアさんから、しばらく会わない方が良いと言われたみたいですが、ヨウキさんなら、誰にも気づかれることなく、会いに来れますよね。私は夜なら基本時間が空いているので、話し相手になって頂けると嬉しいです。正直、ちょっと疲れているので私に気を抜く時間をください。ヨウキさんといると自分を出せますから。待っています……だと」



「……ひゅーひゅー」



ハピネスが真顔で冷やかしてくるが、そんなことは気にならない。

成る程、セシリアも俺と会いたいと。

俺もセシリアに会いたいわけですよ、二人の考えが一致したじゃないか。

これは会いに行くしかない流れだわ。



「ハピネス、お互いに悩みは解決しそうだな」



「……未定」



「そうか、まだ会う約束しかしてないもんな。でもさ、俺たち……前よりはすっきりしたんじゃないかな、心が」



「……同意」



「やっぱり、話し合うことって大切だよな。自分だけで解決しようとするから、焦ったり、もやもやしたりするんだよな」



結果、不安になって良く分からない行動を取ってしまう。

解決できない問題にしても、改善することはできるんだから。



「……隊長、頭打った」



「安心しろ、正常だから。それじゃ、日程を考えないとな。ハピネス、仕事休みの日を教えてくれ。できれば紙に書いて欲しいかな、レイヴンに渡すからさ」



「……了解」



メモを渡すとすらすらとペンを走らせ、俺に返してきた。



「確かに受け取ったぞ。レイヴンに渡しとくからな」



「……よろ」



「じゃあ、俺からもセシリアに伝言頼むわ」



「……内容」



「早速、今日会いに行くって伝えてくれ」



会いたがってる気持ちが同じなら、即行動しないとな。

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