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元部下と友人の戦いを見てみた

そう時間をかけることなく、目的に最適な場所を見つけることができた。

燃えている俺とハピネス、レイヴンがまだ納得がいってない様子だ。



俺が監督でハピネスは選手という感じの構図だろう。

是非とも、調子に乗ってる可能性が極めて高いレイヴンの鼻っ柱をへし折ってもらいたい。



「おい、本当にやるのか。嘘だよな。ハピネスではなく、ヨウキが俺の相手をするのだろう?」



スーツを着て片手花束で剣を構えるとか、随分と余裕だな。

ハピネス相手ならば、ハンデが必要と言いたいのか。



「ハピネス、どうやらレイヴンはお前相手なら片手で充分だと言いたいらしい。完全に嘗められてるぞ」



「……激熱」



扇を持ったハピネスが燃えている、気合い、やる気共にマックスだ。



「待て待て。俺はそういうつもりじゃないんだ。ただ、ハピネスと手合わせは……」



「ぐだぐだ言ってないで、始めるぞ。……はい、開始っ!」



俺の合図を皮切りにハピネスがレイヴンに向かって駆け出した。

扇で舞うように攻撃を繰り出すが、レイヴンは剣で見事に受け流している。



「ハピネス……くそっ、すまん」



レイヴンは俺が思っていた以上に冷静だった。

ハピネスの扇を弾いて、首もとに剣先を突き付ける。

どこかほっとした表情だ、勝負が決まって満足したと思っているんだろう。



「これで満ぞ……くっ!?」



そんな簡単に決まるわけがないんだよな。

あの扇はハピネスの羽根で出来ている、硬化させられるのは勿論、射出して目眩ましにも使えるんだ。



「……まだまだ」



「レイヴン、ハピネスがそんなに弱いわけがないだろ。俺の部下だったんだぞ」



魔王城で引きこもっていたんだから、やる事といえば訓練しかない。

俺だけが必死こいて訓練するわけないだろう、巻き込みで三人もやらせていたわ。



シークは遊んでいたり本を読んでいたりと自由に動いていたが、デュークとハピネスは違うからな。

まあ、一番訓練していたのはデュークかな、体力的に考えて。

それでも、ハピネスは充分強いけど。



「くっ……扇が厄介だな」



「それだけじゃないぞー」



ハピネスは中距離での戦闘が得意だ。

魔法を結構使えるし、羽根も飛び道具になるから。

近距離の剣士相手では近づかれないように、羽根、風魔法による目眩まし、土魔法による移動制限といったこともできる。



自由に立ち回り出来ないレイヴンはさぞ歯がゆいことだろう……ただ。



「……降参」



それでもレイヴンに勝つことは出来ない。

ハピネスとデューク、強いのはデュークだったりする。

そんなデュークを倒したレイヴンだ、ハピネスでは勝てないな。



レイヴンは攻撃を全てかわしきり、扇を弾き飛ばした後、そのままハピネスを押し倒す。

馬乗りになり、片手で両手を抑え込んで終わりだ。



「やっぱり、デュークを倒したレイヴンにはハピネスも勝てないか。相性は悪くないし、戦法も間違ってないはずなんだけどなー。レイヴンの動きが速すぎる」



「当然だろう。これでも俺は騎士団長で勇者パーティーの一人だ。……ヨウキには不覚をとったがハピネスにまで負けるわけにはいかないな。それに、彼女より弱い彼氏なんてカッコ悪いだろう」



「いやいや、そういう理由は言わない方が良いんじゃないか」



「だが、事実だ。俺はこの剣でハピネスを守る」



スーツ姿で花束を片手に持ってなかった方が、その台詞は決まってたと思う。



「レイヴン、格好にあった言葉を選んだ方が良いぞ。お前の気持ちはわかるけど、どう見ても変だから」



「ヨウキ、俺は自分の素直な気持ちをぶつけているだけだ」



「……そうか」



考えてみたら、これはハピネスとレイヴン二人の問題。

外野の俺がとやかく言う資格はないのだ。

ここまで来たら本人同士で決めるっていう話だっていうのは、再三思ってたこと。



「ハピネスには悪いが力にはなれないか……」



「……助言」



「そう言われてもなぁ」



積極的に行動するようになったレイヴン。

ハピネスはそれが嫌ってわけじゃないんだろうけど、気になるんだろう。



「どうしてだ、ハピネス。俺はハピネスが喜んでくれるようにと」



「そういう言い方はあつかましいから、止めとけ」



ハピネスの受けが良くないことがよっぽどショックだったんだな。

キャラ崩壊と言っても過言ではない状況だぞ、これ。

一度、冷静になって話し合いした方が良さそうだな。



「レイヴンもハピネスも話したいことはあるだろうよ。だからさ……そろそろ、その体勢解いたら?」



さっきから、レイヴンがハピネスの上に馬乗りになって、腕を拘束してる形で話しているからな。

もう勝負は終わったんだから、普通にしたら良いじゃない。



レイヴンがハピネスを無理矢理襲っているようにしか見えないんだよ、実のところ。

それは積極性じゃないからな。



レイヴンは慌てた様子で飛び起き、すまんと一言。

ようやくいつもの調子が出てきたんじゃないかね。



ちなみにハピネスは満更でもなかったのか、衣服を整えつつ、軽く微笑んでいた。

……それにしても、素直にこんな笑顔を見せるのは珍しいな。

レイヴンの調子が多少戻ったことも関係しているのかもしれん。



あくまで多少だからな、助言を頼まれたし久々に頑張ってみますか。



「その感じで良いんだって。何を焦ってんだよ。レイヴンらしくないから、ハピネスも戸惑ってんだよ。どうせ、ユウガが思った以上に成長していて、自分は……なんて考えての行動なんだろうけどさ。正直に言うぞ、合ってねぇから」



ユウガと同じような勢いでハピネスに迫ったって空振るに決まってる。



「ユウガの真似なんかしていない。ただ……このままじゃいけないと感じたから、俺なりに行動を起こしただけだ」



「本音は?」



「今、言っただろう」



「いやいや、もっと心の底から思ってることがあるだろ。吐き出しちまえよ。普段言ってないしさ。欲望を出しちゃえば」



「そんなわけにいくか!」



返答に怒気がこもっていておもわず苦笑いだ。

たまにはレイヴンも自分へ正直になっても良いだろうに。

ハピネスも許してくれるさ。

俺はまあ……見なかったことにするから。



迫ってくるレイヴンから顔を逸らして、ダメかなーって思ってんだけど、どうだろ。



「……遠慮」



「ああ、レイヴンはハピネスに遠慮してるらしいぞ」



「おい!」



「……バッチ来い」



「ほれ。本人もこう言ってるんだから、どーんと胸を借りてこい。さあ、欲望に忠実な獣になれ」



「……食べる?」



二人して悪のりが過ぎるかもしれないが、楽しいんだわ、これがまた。

ハピネスも止めに入らないし、良いよね。

調子にのってそのまま、協力プレイでいじり続けているとレイヴンも我慢の限界が。



「……いい加減にしろ。悪ふざけが過ぎるぞ」



「いや、確かに悪かったかもしれない。ただ、俺たちも完全に冗談てわけじゃないんだ。な、ハピネス」



「……了承」



「……それでも、獣になれは違うだろ」



中々、折れる様子がないな。

ここまで言ってもダメなら最終兵器を使わせてもらおう。

ハピネスにひそひそと作戦を伝え、即実行。



レイヴンの胸元に飛び込み、上目遣い。

ポイントは両手を相手の胸に置くことだな。

あとは何を言うかなんだが……。



「……」



ハピネスは何も言わず、少しの間見つめ合うとそっと目を閉じた……って、えっ!? 

レイヴンはハピネスを見つめたまま固まっている、これってそういうことだよな。



空気を読んで首だけ後ろを向いて、レイヴンに早くやれと手で合図をする。

ここで引いたら男じゃねぇな。

一分くらい経った頃、ハピネスに呼ばれて前を向いた。



「よし、じゃあ、その勢いで言ってみようか」



「……どぞ」



「……良いんだな」



ついにレイヴンも覚悟を決めたか。



「……遠慮、無し」



「……わかった。引くなよ。……俺はな、ハピネスと公衆の面前でイチャついてみたい」



……ハピネスの目を見て、一切の動揺なく言い切ったよ。

でも、この願望は難しくねーかと思ってしまう俺。

新居の空き部屋を貸すから、そこで存分にイチャついて満足ってのは無理かな……無理か。

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