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少女魔法使いの本音を聞いてみた

「知り合いの神父様に相談してみましょう。出産前の妊婦に行う講演会があると聞いたことがあります。ミカナの都合もあるでしょうから、日程も考えて……」



セシリア、そろそろミカナを許してあげても良いんじゃないかね。

ミカナの様子を気づいていないのかもしれないな。

……セシリアらしいっちゃ、らしいよね。



レイヴンの方が真剣にセシリアの話を聞いてるしさ……お前は何しに来たんだよ。

本筋から脱線も良いとこなので、路線を戻そうか。



「セシリア、セシリア。そろそろ、本題に入ろう」



「あ……そうですね、失礼しました。この話はまた後日に回しましょう。では……ミカナ。大丈夫なんですか?」



「……セシリアのおかげで悩み事が増えたわ。まあ、それは置いておいてよ。アタシ、このままで良いのかって不安があって」



「でも、悪いことなんてなくね?」



あとはゴールインすれば良いじゃないか、何が問題あるんだ。

外堀はユウガが完全に埋め立てしたから、大した障害もないはず。



「あまりにもアタシを取り巻く環境がね、変わるのが早い気がして。だって考えてもみなさいよ。ちょっと前まで片想い歴を更新する日々が続いていたのに……いきなり婚約、同棲、結婚よ!? もしかしたら、ユウガが無理しているんじゃないのかなって」



「してないんじゃね」



「……してないだろう」



「していないかと」



俺、レイヴン、セシリア、三人の意見が完全に一致した。

目配せも何もしていない、必然の一致と言える。

あいつが無理をするとか、考えられないわ。



「ちょっと、全員で同じこと言わないでよ。ユウガだって人間なのよ。アタシの気持ちを受け取り過ぎて、気に病んでる可能性だってあるわよね」



「気に病むというか……なぁ?」



ユウガのミカナに対しての感情は病的なまでに高いようにように見えるぞ。

魔王との戦いで出せなかった聖剣の力を引き出したくらいだし。



あんな爽やかイケメンの裏にどんな顔を隠しているのか……いや、裏なんてないか。

真っ直ぐ過ぎるんだよ、針のように鋭い面もあるから止まらんし。



視線を送るだけで二人は俺の思いを察してくれたのか、うんうんと頷いている。

やっぱり、二人もそんな感じに思っているんだろうな。



「アタシの考え過ぎなのかしら。どうしても考えちゃうのよね。ユウガに負担かけていたら嫌だなって……」



「ミカナはどうしたいんですか。勇者様との結婚に気が進まないのでしょうか」



「そ、そんなわけないじゃない。そ、そりゃあ、う、嬉しいに決まってるでしょ……」



セシリアが深く切り込み、ミカナはごにょごにょ状態になってしまった。

でも、このままふらふらするならミカナの気持ちをダイレクトに聞いた方が良い。



「それがミカナの気持ちなんですよね。勇者様に気を遣っているのは良いと思います。ただ、それで自分の気持ちがぶれてしまっては駄目ですよ。……ミカナはずっと勇者様を支えてきたんですから、もっとわがままになっても良いのではないでしょうか?」



「……こういうことは得意ではないので上手くは言えないが、今も昔もユウガのことを支えてやれるのはミカナだけだろう。……肩を並べて支えあっていくのも悪くはないんじゃないか」



セシリアもレイヴンも結婚を後押しするようなことを言ってる。

俺はどうするか……二人の言葉だけで充分ミカナは感動しているようだしな。



俺が言っても蛇足にならないか心配だが、一応思ってることは言っておくか。



「あいつはミカナと結婚できることに目をキラキラして喜んでるからな。……つーか、一番長い付き合いしてんだから、本当はわかってんだろ?」



「う……何よそんな上からな感じで言ってきて」



「いや、真面目な話。俺がこの中で一番付き合いが短いからさ。だからこそ、その短い期間でユウガとミカナのやり取り見てきたわけだが……まあ、濃かったぞ。お似合いだ、お似合い」



「そうですよ、ミカナ。勇者様とはとても相性が取れています。きっと、大丈夫です。勇者様はミカナを幸せにしてくれますよ」



「……不安になるな。俺も自分が正しいのか悩む時が多々ある。ただ、ユウガとの結婚は悩む余地はないと思うが」



再び三人からたたみかけるとミカナが大きく息を吐いた。

決心がついたのか、テーブルを叩いて勢い良く立ち上がる。



「ああー、もうっ、わかったわよ。結婚するわよ。……いや、こんな言い方じゃやけになってるみたいね」



「はい。あと、勇者様にもきちんと話した方が良いのではないでしょうか。その……ミカナの口からはっきりと言ってないんですよね」



「ユウガに言われて頷いた感じだろ」



「そうなのよ。中途半端な気持ちでユウガにはすごく失礼で最低な態度だったわ。ちゃんと言わないとダメよね。……アタシはユウガと結婚したい、一緒に幸せになりたいって」



「……本当!?」



突然、家の窓が開く。

俺にはわかっていた、こんな本人にとって美味しいことを言っているのに……あいつが登場しないわけがないと。



だからこそ、三人は驚いているが俺はやっぱり来たかという表情なわけ。

タイミング良すぎだろなんて、こいつにはもう言っても無駄だ。



「実はミカナの口から結婚についてはっきりと返事をもらっていなかったから、少しだけ不安だったんだ。……良かった」



「ユウガ、ごめんね。アタシ、不安にさせたみたいで……」



「ううん、大丈夫。ミカナを信じていたからさ」



俺たちがいることが見えてないのか、いることを承知でこのテンションなのか。

ラブラブな感じになるなら、俺たちは即刻帰るべきだろう。

……しかし、そんな常識的な行動をさせないのがユウガだ。



「ごめん、ミカナ。僕、謝らなきゃいけないことがあるんだ」



「何よ、今日は気分が良いからある程度のことは許してあげるわ。言ってみなさい。怒らないから」



「ありがとう。実は……結婚式に着るドレスなんだけど。オーダーメイドで作ろうって考えてるんだけど、良いかな」



「良いわよ。話ってそれなの。謝る必要なんてないじゃ……」



「やった、ありがとう。ミカナ! じゃあ、いってらっしゃい」



素早い動きでミカナを抱え上げたユウガは窓から外に出る。

俺たちは何事かとユウガが出ていった窓へ走った。

外には見知らぬ馬車が止まっており、ミカナは荷台へと投げ入れられたようだ。



あの馬車、見た感じだと高そうなんだけど……貴族御用達のやつかね。

ユウガはやりきった表情で荷台の扉を閉めている。



「僕もミカナと一緒にいたかったんだけど……店がね……男性出入禁止だって。サイズとか図るから、僕はいちゃ駄目だって店員さんに言われて」



荷台からそんなの当たり前でしょうというミカナのもっともな意見が聞こえる。

その件とこの馬車何の関係があるんだよ。



「どうしても駄目だっていうから、じゃあ、今から採寸できますかって頼んだら、やってくれるって話でね。知り合いに頼んで馬車を手配してもらったんだ」



馬車を手配したっておかしくないか、ユウガなら飛んでいけるんだから、そっちの方が速いだろう。

ミカナも荷台から俺と似たような疑問をユウガに聞いてるし。



「だったら、ユウガが送っていってくれれば良いじゃないの!」



「だってミカナを迎えに行きたかったんだ。あと……ドレスも当日に初めて見たいから、かな」



ユウガの言葉にセシリアは唖然、俺とレイヴンはまあ、わからなくもない……いや、おかしいか。

俺はここまでやらないぞ、普通ドレスって二人で選ぶもんじゃねーのか。



オーダーメイドだから、こういうのもありなのかね……レイヴン、ここもメモを取っておくんだな。



「僕の希望は店側に伝えてあるから……よろしくねー。終わる頃に迎えに来るからー」



「ちょっと……ユウガー!」



馬車は出発し、ミカナの声は段々聞こえなくなっていった。

……やっぱり、相変わらずだな。

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