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友人の協力をしてみた

すっぱりと自分、彼女がいます発言をしたレイヴン。

以前ならどもるか、俺にどうすれば……と助けを求めてきたものだが。



ミカナもレイヴンがあっさりと認めたせいか、驚いているようだな。

だが、認めたことによりさらに追撃が来ると思うけど。



「……ふーん、その娘ってセシリアのところのメイドよね。アタシ、何回か会ったことがあるわ。ちょっと抜けてるとこがありそうだけど、可愛い子だったわね」



「……ハピネスはしっかりしているぞ。仕事もきちんとこなしているようだし、一緒にいる時も離れないように手を繋ごうと言ってくれる。俺が渡したプレゼントも無くさずに、きちんと保管しているようだし、最近は手作りの弁当を届けてくれたりも……」



レイヴンの盛大な惚気話が始まり、ミカナは目を丸くしている。

こんな熱く彼女のことを語るようなキャラじゃなかったもんな、ミカナの中では。



あいにく俺は変わったレイヴンを知っているから、聞いていても腕を組んで頷くくらいのリアクションだ。



「……剣士、アンタは何をしに来たのかしら。自分の幸せ自慢話をしに来たわけ」



「……いや、俺が来た理由はミカナの話を」



「ふぅん、そう。……それで、アタシの話を聞いて幸せ絶頂中の剣士は何を思うのかしら」



お前も人のこと言えねぇだろうというツッコミはしないでおく。

レイヴンがどう答えるか興味あるので、余計なことを言って話を中断させたくない。



「……大変だな」



「そんな感想はいらないわよ!」



「子どもはいつ生まれる予定だ?」



「アンタは黙ってなさい!」



顔を真っ赤にして怒るってことは多少は意識しているってことだよな。

ちょっとした悪ふざけの気分でにやにやしていたら、レイヴンが深刻な表情になっている。



「……ミカナ、まさか、もう」



「変な誤解をしないで。まだよ、まだ!」



焦っているせいか、必死過ぎてごまかしているように見える。



「まだってことは、いつか……」



「アンタ、本当に黙りなさいよ!」



この手の話題は苦手なのか、二人とも頭から煙が出ているな。

レイヴンはともかく、ミカナは同棲までいくなら、少しは意識しても良いと思うが。



「……ミカナ、応援しているぞ」



「優しい言葉をかけないで、違うって言ってるでしょ」



「こうして世界を救った勇者パーティーの面々は各々、幸せに向かって歩いていくんだなぁ……」



「アンタ、何様よ」



ぎゃーぎゃーと喚くミカナ、俺は笑っているわけだが、本題を忘れていることに気づいた。

結局、レイヴンの不安を断ち切ることはできたのか。



「なあ、レイヴン、どうだ。お前の周りには個性的な特徴を持ったカップルがいるだろ。皆、人それぞれだからさ。……俺とセシリアも、まあ、うん」



「……ああ、そうだな」



何か歯切れが悪い、駄目だ、解決してない。

俺とセシリアのことに関するツッコミもないし。



ミカナは弄り過ぎたせいか真っ赤な顔でキレ気味だし、ここはレイヴンを連れておいとましよう。



「わかった、退散しよう。こうなったら、最終兵器を使うしかない。レイヴンが立ち直るためにな」



「あら、何かあるみたいね、面白そうじゃない。急に訪ねて来たのはやっぱり理由があったのね。どこかに行くなら、疲れているけれど、アタシもついていこうかしら」



「えっ」



にこにこと笑顔でこちらを見てくるミカナ、レイヴンは好きにしろといった感じになっており、俺としてはなんとも……。

こうしてミカナが仲間になり、家を出た。



「それで、剣士は一体どうしたのよ。さっきまで幸せ絶頂アピールしていたのに。まさか、泣かしてけんかしたとか」



「……そんなことするわけがないだろう。ハピネスの泣いているところなんて、見たくない」



落ち込んだと思ったら、今度は気迫のこもった表情を見せるレイヴン、忙しいな。

ミカナは悪かったわねと頭を下げると渋い表情に、どうかしたのか。



「意外にも、すぐに引いたな。いつもなら、ここでバトル勃発するところなのに」



「無表情、声を出さない、他人とは極力距離を取る……旅をしていた時、アタシはそんな剣士を何度も見てきたのよ。ここまで表情がころころ変わって、普通に喋って、一人の女の子を想っている姿を見せられたら、ねぇ?」



苦い表情で俺に同意を求められてもな。

俺は徐々に変わっていくレイヴンを見てきたから、そうでもないし。



良い変化なら、受け入れても良いだろう。

大体、ミカナも人のことは言えないはずだ。

適当に相づちを打っていると、前方から歓声が聞こえてくる、主に女性の。



心当たりがあるなーと思いつつ、空を見上げると光が見える。

レイヴンは知らないから驚き、狼狽えているが俺とミカナは無表情。

本当に毎度毎度、変なタイミングで現れるな。



女性たちを無視して、俺たち……正確にはミカナの前にユウガは降り立った。



「やあ、ミカナ。荷物が運び終わったから迎えに来たよ。足りない生活用品もあるから、買いに行こう」



爽やかな勇者様スマイルを披露するのは構わないが、周りを見ろよ。

嫉妬の視線がミカナに集中しているぞ、おい。

今日、感じた殺伐とした雰囲気はこれが原因だったのか……?



「ち、ちょっ、ユウガ、馬鹿。目立つ行動は避けなさいって何度も言ってるでしょ」



「……確かにそうかもしれない。でも、ミカナ。僕は今とても幸せなんだ。やましいことをしているわけでもないのに……我儘を言うと隠したくない」



俺もミカナも口あんぐり、こいつ公衆の面前で何言ってんだ。



「っ、子どもじゃないんだから、我儘言わない!」



「ミカナにだから我儘を言うんだよ!」



「アタシはアンタの母親か何かかしら」



「違う、ミカナは僕の大切な、愛する人だよ」



お互いにヒートアップしていったのだが、ユウガの言葉にミカナが撃沈した。

周囲の人々、レイヴンも含めて目を見開いている。



これには俺も驚いたな、今のユウガは間違いなくイケメンだ……馬鹿だけど。



「だ、駄目よ……そういうのは、こういう人が沢山いる前で言っちゃ」



「……わかった、じゃあ、二人きりなら良いんだよね。行こう、ミカナ。あ、ヨウキくんにレイヴンもいたんだね」



やっと気づいたか、ユウガの目にはミカナ以外映っていなかったということかね。

軽く挨拶をしておく、面倒に巻き込まれる前にとんずらしないとならん。

会話を長引かせる気はない。



「……ユウガが、そこまで進んでいたなんて」



「あ、レイヴン、この前はごめんね。今日はこれからミカナと出掛けるから。今度ゆっくり話そう。僕、話したいことが沢山あるんだ」



それじゃ、とユウガはミカナを抱えて光の軌跡を残し、飛び去った。

女性たちはユウガたちを追いかけていく、ユウガのファン……だけではなく、ユウガとミカナを応援している者たちも含めてだが。



「……少しだけ二人についての噂は聞いていたが、想像以上だった。特にユウガだ。あいつはどうした、何があった?」



「まあ、色々とあったが……そういやほら、ハピネスとレイヴンがデート中に俺とユウガと会った時があったろ。ハピネスが問答無用でユウガをぶん殴った時」



「……ああ、そんなこともあったな」



「あの時、ユウガはレイヴンのことを羨ましいって言ってたんだぞ。そう思われるくらい、レイヴンとハピネスは幸せそうに見えたってわけだ」



だから自信を持てと言いたいが、それだけでは解決しないんだよな。

うん、そういうわけでもうまどろっこしいことは無しという感じにしたいのだ。



実はもうすぐ、ハピネスと合流する。

多分、買い出しか何かの途中だろう。

レイヴンには悪いがそこまで悩んでいるなら、当人同士で決着をつけた方が早い。



引き合わせたら、俺は逃走する。

レイヴンが怖いってのもあるが、話し合いに発展したら、部外者な俺はいらない存在ってことだ。

会話をしつつレイヴンにばれないように着々と距離を詰めていく。



「……デート中?」



「違うわ!」



まあ、会ったところでハピネスは平常運転なんだけども。

俺の隣にいるレイヴンはどうかな。



「……ハピネス、荷物が重いようなら手伝うぞ。今日は非番だからな」



普通に接していた……何でだよ!



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