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厨二を封じてみた

デュークを先頭に何処に向かうかは知らされていないまま歩く俺たち。

もしや、セシリア辺りは行き先を知らされているかもしれないが。



俺はどちらかというと主催者側のはずだ。

今回の集まりはレイヴンとハピネスのフォロー、それが目標だからな。

なのに、何故か俺は何も知らされていない、どういうことなのか。

絶対におかしい。



「まさか、二人は俺にもちょっとしたサプライズを……用意しているわけないな。ということは、多分……」



日頃の行いというやつかもしれない。

ユウガほどではないが、俺も多々暴走している。

これは認めなければならない事実だ。

しかし、今回ばかりは暴走するわけにはいかない。

レイヴンは情緒不安定、しかし、ハピネスは通常運転に見える。



そう、見えるだけだ。

心の中ではドキドキマギマギしているに違いない。

二人を支えるには厨二を封じなければ!



「ヨウキさん、ヨウキさん!」



「……はっ!? 何?」



「いえ、先ほどから上の空状態で歩いていた様子でしたので。大丈夫ですか」



「ごめん、ちょっと考え事してた」



深く考えすぎていたのか、ぼーっとしながら歩いているように見えたらしい。

心配してもらえるのは嬉しいけど、今はレイヴンとハピネスを……。



「そうですか。考え事……悩みか何かですか? 歩いている時は危ないですよ。心ここにあらずの状態では誰かにぶつかってしまいます」



「そっか、ごめん。気を付けるよ」



「はい」



セシリアからの注意を受けたので、深く考えることもなくデュークについていくわけだが。

全員、歩く歩幅もスピードもばらばらのはずなのに、なんで俺とセシリアは綺麗にとなり同士で歩いているのか。



別に歩くスピード合わせているわけじゃない。

気がついたら隣に、そこから一緒、そんな感じ。



「この辺にはソフィアさん行きつけのお店があるらしいですよ」



「へえー、そうなんだ。何のお店?」



「靴を扱っているお店だそうです。特注品を頼んでいると」



「あー、なるほど。ソフィアさん、戦闘は主に蹴りだから」



イチャイチャしているわけではない、普通に話しているだけだ。

だから、レイヴン、俺とセシリアの様子を窺うのを止めろ。



俺たちの前を歩いている癖に顔を逸らしてこっちを見るな。

ハピネスを見ろ、ハピネスを!

お前の少し前にいるぞ、隣に行け、隣に。

今、本人はあくびをして伸びているから、自然に行けるぞ。



「はい。普通の靴では戦闘に向きませんから。特注と言えば、クレイマンさんも何か特注の品を頼んでいたような。……確か」



「思い出さなくていいよ」



会話内容は至って普通のもの。

しかし、レイヴンにとっては普通の会話すら羨ましいみたいだ。

ずっとレイヴンからの視線を感じ、もやもやしつつもセシリアとの会話を楽しむ。



すると、レイヴンからのコンタクトが来た。

こっちへ来いと、手で合図をしている。



「レイヴンが呼んでるな……ちょっと、行ってくる」



「あ、ヨウキさん。あの……」



「ん……って、ちょっ、まっ……」



呼び止められたので立ち止まる。

このタイミングで止められるとは……注意か何かか。

しかし、確かめるまでもなく、待ちきれなかったレイヴンに腕を掴まれて連行されてしまった。



話の内容は伏せたいのか、わざわざ集団から少し離れる。

まあ、はぐれるような距離ではないけども。

セシリアたちが不思議そうに俺とレイヴンを凝視しているぞ。



「……完全に怪しまれているな」



「当たり前だろ! わざわざ引っ張ってまで離れたんだからな」



「……すまん」



「いや、別に良いけどさ。それよりどうしたんたよ?」



「……ヨウキとセシリアの様子を見ていたら……もしやと思ってな。問い詰めるようで悪いが、二人はもう……?」



レイヴンは俺とセシリアが付き合っているんじゃないかと思っていたのか。

ふっ、今日は厨二を禁止と決めたからな。

いつもなら、ごまかしを込めて厨二スイッチを入れているが……今回はガチなトーンでいこうか。



「いいや、俺とセシリアは付き合っていない」



「……そうか」



「ただ、レイヴン。俺はもうそろそろ、うやむやにするのは止めようと思ってるんだ」



「……何?」



「気づかされたのさ、この前、一人旅行に出かけたんだよ。それでいろいろあって……。誰かに言われたからとかじゃないんだよ、本当に。きっかけなだけであって、こうするって決めたのは俺だから」



「……そうか、ヨウキはもう、そこまで考えて……」



「レイヴン、俺からはもう何も言えない。海での依頼で何があったか知らないけど」



あの時、俺は容赦ない右ストレートをくらって何も見えなかった。

ただ、ハピネスは意地ややきもちだけでの行動はしない。

だから、その行動はハピネスにとって何らかの答えではあったのではないかと思う。



「……すまん。そして、ありがとう」



レイヴンはそれだけ言って、ハピネスの隣に走っていった。

……うん、多分だけど良い感じなアドバイスを送れたと思う。



「ただいまー」



俺は走ったりせず、早めに歩きセシリアの隣へと戻る。

ヨウキだけに陽気な感じで帰ってきたわけだが。



「……ヨウキさん、レイヴンさんに何か……」



「んー、まあ。いつも通りな感じで話してただけだよ」



話の内容も俺のモードも全く、いつも通りではなかったが。

それより、いつも通りじゃないのはセシリアだ。

何か考え込んでいるみたいだし……そんなに俺とレイヴンの会話が気になるのか。



残念ながら、セシリアの前でレイヴンはしゃべれないので筆談形式になってしまう。

それでも良いなら、セシリアの前でいくらでもレイヴンと会話をするけど。



「ほらほら、お二人さーん。目的地に着いたっすよ」



デュークに言われ、目の前の建物を見上げた。

入り口の上にある大きな看板には記念、発掘品展示館と書かれてある。



「これは……」



「ここには色々な珍しい物があるらしいっすよ。遺跡から出てきた物とか、昔の勇者や英雄が使用していた武器の模造品があるらしいっす」



要は博物館というわけか。

何か知的な所だな、俺とは相性の悪そうな場所だ。

デートに向いているかも謎、ここに来た目的はなんだ?



「こ、ここは、勇者様にまつわるものがいっぱいありますよね。騎士団長にセシリア様の物も!」



「……興味」



ハピネスが何やら興味を示しているぞ。

レイヴンのことが知りたいのか、それとも……。



「……情報、収集、適格、使用」



ハピネスは何を企んでいるんだ!?

つーか、まじで誰だ、ハピネスに変なことを教えているやつは。

無表情でなくなったのは隊長として嬉しいが、こんな黒い笑みは見たくなかったぞ。



レイヴンが本当にここが目的地なのかとメモでデュークに訴えているぞ。

字のでかさからして、多少慌てているのがわかる。

何か自分に都合の悪いことでもあるのか。



「あれ、セシリアは大丈夫なの」



「はい。私はここに来るのが初めてですので。この建物も最近に出来たものですよ。ただ……」



セシリアが俺からゆっくりと視線を逸らす。

やっぱり、セシリアにとっても都合の悪いものがあるようだ。



「……まさか、勇者パーティー全員の手形とか小さい人形とか、旅をしていた時に食べていた携帯食が展示されて……」



「ありません!」



「だよね」



手形はあるんじゃないかと思ったんだけどな。

セシリアとレイヴンの様子からして、何かがあるのは間違いないな。




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