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守り神と働いてみた

教会を出発し依頼を受けるためにギルドに戻ってきた俺たち。

ガイにギルドについてレクチャーをして、とっとと出発したいところだが。



「いいか、ガイ。冒険者にはランクがある。最初は皆、低いランクから始まる。一番低いのがFランクだ」



「はい。最初ですと、お手伝いや採取系の依頼がメインですね。討伐系はあまりないです」



「ふむふむ」



「もちろん、依頼を達成してからの報酬も低いからな。だが、全員が通る道だからな。近道などない」



「まったく……どの口が言いやがる」



ボソッとクレイマンの呟きが聞こえたが無視だ。


「それでは試しに依頼を受けてみましょうか」



「うむ。すまぬが、我輩でも受けられる依頼はあるだろうか」



「……あんた依頼は完全に初めてっぽいよな。なら、最初は満遍なくやってみたらどーだ?」



クレイマンがお勧めしてきた依頼は討伐、採取、お手伝い系の依頼だった。

ミネルバ近くの森に生えている薬草の採取。

繁殖期を迎えて、急速に数を増してきているゴブリンの討伐。

そして、行方不明のペット捜索だ。



「初心者向けな依頼ですね。良いと思いますよ」


「よし、これで行こう!」



「わかった。……で、令嬢はギルドカードどうするよ」



「大丈夫です。これでお願いします」



セシリアが出したギルドカードにセシリーと名が書いてあった。



「了解だ。……並ぶとすげぇな。濃すぎるだろ」


厨二衣装を着た厨二病に冬でもないのにモコモコな格好をした鬼にシスター。

こんな異色なパーティーは中々ないだろうな。



「安心しろ。この俺が依頼を成功に導く!」



「初心者向けの依頼をAランク冒険者が苦戦するなよ」



「まったくだ」



ツッコミもそこそこにギルドを出る。

依頼を片付けるために早速、行動に移ろうではないか。



「ガイさん、複数の依頼を受けた場合は優先順位を決めましょう。依頼の中には期限があるものもあります。今回受けた依頼の中で期限が迫っているものは……」



「まずはペットから探すぞ!」



「黒士、理由は」



「決まっているだろう。今もペットは震えて主を恋しくしているかもしれんのだ。真っ先に探すべきだろう」



「ペット目線なんですね。確かに主と離れて、寂しい思いをしているかもしれません」



さすがはセシリアだ、話がわかる。

とっとと、依頼人に話を聞いて、一刻も早く保護しよう。



「黒雷の魔剣士は迅速に依頼をクリアするのが性分だからな」



「ふむ、小僧のことは置いておいて。依頼人とやらの話を聞きに行くのだな?」



「はい、そうです。依頼人は……王都で宿を経営している夫婦みたいですね。行きましょう」



俺を置いて話を進め、出発する二人。

成る程、これは俺に対する挑戦と見て間違いないな。



心の中に厨二を宿らせつつも、黙って二人に着いていく俺であった。



依頼人の夫婦が経営している宿は、ギルドからそこまで離れておらず、直ぐに着いた。

ただ、歩いている時の視線はすごかったな。



通行人がまあ、俺たちを二度見していた。



「やはり……目立ちますね」



「ガイの高い身長はどうにもできなかったからな。さすがに頭が二つ、三つも抜きん出ていると」


「黒士、貴様。目立っているのが我輩だけのせいだと思っているのか!?」


「ふん、そんな訳がないだろう。この、厨二溢れる服装に感化されてしまった者もいるだろうな」



男なら一度は憧れる服装だからな。

無論、女性も一目置くだろうけど。



「おい、娘。黒士を止めろ。また、暴走し出すぞ」



「いえ、まだ大丈夫です。魔剣士さん、依頼主の方の前では自重して下さいね」



「任せろ!」



「うーむ。不安だ」



ガイが全く信用していないな。

これでも依頼はいくつもこなしている。

Aランクの依頼も俺は一人で達成した。



何も問題などあるわけがなかろう。

高揚した気分のまま、依頼主が経営している宿着いた。



「ペット捜索の依頼を受けた者だ! 話を聞きたい」



宿に入って早々に用件を言う。

仕事は迅速に終わらせるのが、黒雷の魔剣士のスタイルだからな。



「おい、黒士。依頼主が固まっているぞ」



「ふっ、俺の格好に見とれたか、ガイの異様な存在感に圧倒されただけだろう」



「魔剣士さん、一度口を閉じていてもらって良いですか」



「……はい」



セシリアからのオーラを感じ、素に戻る。

ソフィアさん並みの迫力を感じたぞ……。



圧倒された俺は隅っこで大人しく仁王立ちして待つことにした。

依頼主からの詳しい説明はセシリアが聞いてくれたしな。



ガイは無言でセシリアと依頼主との会話を聞いていた。

おそらく、今後の参考になるように勉強していたのだろうな。



「魔剣士さん、いなくなったのは可愛がっていた仔猫のようです。先週から宿に戻ってないらしく。賢い猫みたいで、今までは外に出ても、自然と宿に戻ってきていたようですが」



「安心するがいい。俺は聞いていないように見えて、会話をすべて聞いていたからな」



俺の聴覚強化を嘗めないでもらいたい。

黒雷の魔剣士は非効率なことはしないのだ。



「……黒士。もう、お主がもう、面倒なのだが」


「ふっ、こんなことで挫折していたら、ギルドの依頼などこなせんぞ……?」



「ぐうう。正論だが腹が立つな」



「二人とも、その辺にして、今は依頼をこなしましょう。王都は広いですが、猫には首輪がついているようですし、地道に聞き込みをしていけば手がかりは見つかります」



セシリアの意見はごもっともだな。

じゃれていても、仕方あるまい。

だが、地道な聞き込みはどうだろうか。



「確かに時間、労力を使えば猫は見つかるだろう。しかし! 黒雷の魔剣士はFランク程度の依頼で膨大な時間はかけん!」


「では、どうするのだ」


「そうだな。聞き込みをするにしても、聞く人間を選ぶことだ。飼っていた猫を知っている近所の者や、常に王都の見回りをしている騎士に聞くのがベストだろう」



「おお、黒士がまともな意見を!」



「確かに、むやみやたらといろいろな人に聞き込みをするより、最初は絞った方が良いですね」



「理解してくれて、何よりだ。……だが、俺はその上を行く!」



二人が頭にはてなを浮かべた頃には、俺はもう走り出していた。

宿に残っていた、猫の臭いはしっかり記憶している。



あとは嗅覚強化をして、目的の猫を見つければ良い。

≪瞬雷≫を発動し、王都を走る俺は正に黒い雷の如し。



人々の間をぬうように走り去り、目的である猫の臭いがする場所へ着いた。



「ようやく。見つけたぞ……」



俺の目の前には首輪のついた、宿屋の夫婦から聞いている特長の一致した猫がいる。

怪我をしているみたいだが、動けない訳ではなさそうだ。



しかし、近くには目的の猫以外の猫がいる。

首輪をしていないので、野良猫だろう。

ただ、怪我は野良猫の方が酷い。



飼い猫が怪我の酷い猫をかばうようにしている。俺に対して警戒心がかなり強い。



「本能的に俺の強さを感じ取って警戒しているのか。安心しろ、黒雷の魔剣士は味方だぞ」



やさしく手を差しのべるとフーッ、と威嚇の鳴き声を発さられる。



「理解せんか。俺は味方だ!」



びしっと人差し指を向け、ポーズを決めると向けた指を引っ掛かれた。



「……牙を剥くというなら仕方ない。≪ナイトメア・スリープ≫」



俺がガイの十八番である魔法を猫二匹にかける。


仲良くこてんと地面に横たわった二匹を抱え、俺は宿屋まで激走。

結果、猫探しの依頼は十分程度で終了した。



「この猫で間違いないな」



「は、はい。間違いないです。しかし、この猫は?」



「一緒にいた猫だ。俺を警戒してか、この猫を庇うようにしていてな。……引き離すかどうかはそちらで決めてくれ。あと、怪我をしていたみたいだったので、治療しておいた」



宿に着く前にちょちょいと回復魔法をかけて、癒しておいた。

アフターサービスも万全である。



「では、依頼は果たしたからな。俺たちは行かせてもらう。……さらばだ!」



ずっと待っていた二人を引き連れて、宿から出る。



「……これで依頼達成なのだな」



「は、はい。これが一連の流れとなりますね。あとは依頼を達成した旨をギルドに報告して、依頼金が支払われます」



「なるほど」



「よし、次の依頼に行くぞ。我が力、存分に発揮してやろう!」



テンションが上がってきて、体を動かしたくなる。

早速、次の現場に移動しようとしたのだが、セシリアに制止された。



「待って下さい、魔剣士さん。一度話を聞いてもらえますか」

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― 新着の感想 ―
[一言] ところで第102部の猫たちはどうなったんだろ……
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