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守り神と連行されてみた

後日、俺はガイを引き連れて依頼を受けるためにギルドに足を運んだ。

迷うことなく、クレイマンのいる受付へと一直線へ進む。



「依頼を受けに来たぞ!」



「おー、朝っぱらからご苦労だな」



クレイマンが面倒そうな表情で受付から俺たちを見る。

仕事中だというのに、なぜここまでやる気がないのか。



クレイマンだから、仕方ないな。



「早速、ガイが出来そうな討伐系の依頼を頼みたい」



「その前にお前に客が来ているぜ。昨日お前が来たら、即連絡してくれって言われてな。朝には顔を出すと思うって言ったら、朝一で来てずっと待っているぜ」



「客だと……?」


この黒雷の魔剣士に用事があるというのか。

しかも緊急性があるみたいだ。

直々にご指名とは……複雑な依頼か何かか?



「まあ……頑張れよ。待ち人はギルドの裏で待ってるからな。案内してやるよ」



「すまないな。ガイ、行くぞ」



「うむ」



クレイマンの案内でギルドの裏口につく。

この先に俺を名指しで指名した依頼主が待っているというわけか。



「ほら、行ってこい。鍵閉めっから」



「言われなくてもわかっている。何しろ、依頼主を待たせるのは、黒雷の魔剣士としてよくないからな」



裏口をから外に出るとガチャリと音がした。

クレイマンが鍵を閉めたのだろう。



依頼主だが、直ぐに見つかった。

木箱の上に座り俺を待っていたようだ。



修道服を着ているので、どこかのシスターだろうか。

しかし、彼女が立ち上がった瞬間、直ぐにそれが変装だと気づいた。



「待っていましたよ。黒雷の魔剣士さん」



「あ、えっと。修道服似合うね」



俺を待っていたのはシスターに変装したセシリアだった。

目が完全に笑っていない。



臆したためか、普通にシスター姿を誉めてしまった。

かわいいと思ったから誉める、当たり前だよな。



「ありがとうございます。では、行きましょうか。聞きたいことがありますので。……着いてきてくれますよね?」



「……はい」



「ガイさんも着いてきて下さい」



「……わかった」



「あ、気づいてたのね」


逆らえない俺とガイはセシリアのお願いをあっさり承諾。

シスターに連行される顔を隠した男が二人。



回りからは教会に懺悔にでも行くのだろうと思われただろうか。

懺悔しに行くのは正解だけど、それだけで終わるかどうか。



セシリアに案内されたのは古い教会だった。



「ここは近々、改装予定の教会です。神父様に無理を言って、少しの間だけ使わせて頂くことをお願いしました。とりあえず、座って下さい。……なぜ、椅子に座らないのですか、黒雷の魔剣士さん」



ガイは普通に椅子に座ったのに、俺は正座。

空気的にいろいろと感じたので、こっちの方がいいかなと思ったのだが。


「……椅子に座ってもいいの?」


「当たり前じゃないですか。なぜ、私に椅子に座る了承を得ようとするんですか」



「あ、うん。すみません」



急いでおとなしく椅子に座る。



「さて、私たち以外に、近くには誰もいませんね」



「あ、ああ。いないな」


嗅覚、聴覚を強化して探るが近くに俺たち以外は誰もいない。



「わかりました、ありがとうございます。では、ヨウキさん……封印したのではなかったのですか?」



セシリアの言い分は最もだ。

黒歴史認定、衣装封印、セシリアにはもうやらないと誓った。



悪いのは完全に俺だ。

後々、正気に戻って激しい後悔と羞恥に襲われることもわかっている。

だが、しかし、それでも!



「俺が馬鹿だとは自覚している。今回、セシリアがこういう場を設けてくれたことに対しても申し訳ないと思う。でも、俺は一肌脱いでやりたかったんだ。ガイのために」


「小僧……」



なんか、無駄に友情的な何かが生まれている気がするが。

これでセシリアも多目に見てくれれば良いなーと思っていたり。



シスター、セシリアに黒雷の魔剣士な俺とモコモコ鬼なガイはたじたじだ。


二人そろって頭を下げ、そろーっとセシリアの様子を窺う。

表情を見る限り怒ってはいないみたいだが。



「……わかりました。前回も言いましたが私もそこまで束縛をしたくありません」



「じゃあ……」



「ですが、あまり目立つ格好は控えて欲しいというのが本音です」



「あー、やっぱり?」



目立つと他国に目をつけられたり、正体がばれたらまずかったりとデメリットが多い。



「むうう……だが我輩は」



「確かにガイさんは全身を隠さないと人前に出れませんから。でも、万が一、人前で姿を晒してしまったらと思うと……」


「セシリア、俺は?」



「ヨウキさんは……言っても止めないですよね」


諦めのこもった返答をされてしまった。

しかし、セシリアの言う通り止められないんだよなあ。



「とりあえず、加減はするよ」



「すみません、束縛するみたいで」



黒雷の魔剣士は死なず。 制限つきだが、これで封印はせずに済むな。



ただ、脱いだ瞬間、俺がどれだけの羞恥にさいなまれるかが問題だな。



「ま、ガイは仕方ないよな。こうまでしないと、外に出られないと思ったが故に考えた作戦だし」



「……成功と言えるのでしょうか」



「我輩もそこは疑問に思っている」



「ふん。この俺の作戦だ。失敗しないわけないだろう」



「あ、いつものヨウキさんですね」



俺のいつもとはどのように解釈されているのだろうか。



わかってはいるけど口には出さない。

こうなったら、後戻りが出来ないくらいはっちゃけてやるぜ。



「くくく、そうだ。我が名は黒雷の魔剣士。友のため、後に襲いくる羞恥という代償を払い降臨したのだ!」



「おい小僧。大丈夫か?」


「何がだ!?」



「いや、いろいろと含めてだ」



ガイが思っていることは何となくわかる。

頭大丈夫か的な意味合いだろう。



「ふん。これが今の俺の真実、リアルだ。スイッチが入った俺はもう止められない……」



「止めます」



「あでっ!?」



セシリアから、後頭部へチョップがくり出されたみたいだ。

ヘルメットでダメージは無いが、頭が揺れる。



「目立たずにと言ったばかりではないですか。それでは直ぐに注目を浴びてしまいますよ」



「むむむ……だが、今の俺は黒雷の魔剣士! 恐れるものは」



「ヨウキさん?」



「すみません、調子にのりました」



頭を下げ、即座に謝罪をする。

セシリアは怒らせてはいけません。

……嫌われたくもないし。



「束縛はしたくないです。でも、過度に目立とうとするのは控えて欲しいです。いえ、控えて下さい」



「小僧、娘の言う通りであろう。目立ち過ぎても囲まれて面倒なだけだぞ」



「……多勢に無勢か。今回は身を引くしかなさそうだな」



意見に賛成する時も厨二は忘れない。

というか、これだけは奪わないで下さい。



「出来れば、今回もでお願いしたいのですが」



「いちいち説得する必要がありそうだな」



二人が俺の操縦の仕方について議論している。

黒雷の魔剣士を容易に操れると思わないで欲しいな。



「ふっ、この俺を嘗めるなよ」



「ヨウキさん、一度被り物をとりましょうか」



「ごめん。また、調子にのった。ヘルメットだけは、脱ぐなら全部脱ぐから」



ヘルメットだけとって顔だけ晒すとか、絶対に嫌だ。

厨二衣装着ているのに素顔とか……無理無理。



「小僧、少しの間だけ口を閉じていた方がいいのではないか」



「ふっ……無理だ!」



拒否反応もついつい厨二に。

ダメだとわかっていても久しぶりだからな。

反射的に厨二が発動してしまう。



「やっぱり、一度とりましょう」



「それだけは。それだけは勘弁してくれセシリア」



必死の説得をしてヘルメットは許してもらった。


「……で、これからどうするのだ」



「依頼を受けて、稼ぐ」


今回の目的はガイがお金を稼ぐこと。

一応、必要以上に騒がねばセシリアも束縛はしないと言ってくれているし。



ガイが一人立ちできるように一週間程、サポートするだけだ。



「クレイマンならちょうど良さそうな依頼を選んでくれるだろうし」



仕事はしっかりやるクレイマン。

ガイに合った依頼を見つけてくれるはずだ。



「ふむ。ならば行くか」


「待ってください。やはり、心配です」



「え……」



シスター、セシリアからストップをくらう。

やはり、俺の厨二が原因か。

絶対に問題は起こさないと誓ったのだが。



「ヨウキさんだけではありません。ガイさんも人間社会に出るのは初めてです。何かしらの障害にぶつかるかもしれません」



「……そうだな。予想しないハプニングが我輩を襲うかもしれん」



「ですから、ヨウキさん同様。私もガイさんが慣れるまで依頼に付き合います」


「セシリア!?」



「ヨウキさんだけでは心配ですから。……いえ、黒雷の魔剣士さんも心配ですから」



俺だけじゃ頼りない、俺が問題を起こさないか心配、というダブルパンチ。

セシリアも一緒なら俺も安心、むしろ、ハッピーだからいいけど。

……面子濃いけど大丈夫かな。


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