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22/22

22.女子会?いいえ、会議です


「わたくし達、ブロワ様に謝罪をしたいのです......主にわたくしがなのですが。レイラさんはあの場に居合わせていましたからご存じでしょう?謝罪するには遅すぎますが、わたくしブロワ様のお店での振る舞いを直接あの方に謝罪出来たらと思ってますの」


 レイラもその件はクリスティーナと知り合うきっかけとなった出来事だったので鮮明に覚えていた。結局ケガをしたレイラが大事おおごとにはせず、クリスティーナ側も父親がオルダー侯爵家との付き合いもあった為抗議文なども出さずそのままにしていたのだが、当事者が謝罪をするのならば止める理由はないのでクリスティーナとの橋渡し役を引き受けた。


「レイラさん、あの、それとわたくしが愛用しているローズオイルですが、受け取ってくださいます?わたくしこれまでの事も反省しましたが、あの時店内で貴女にケガをさせるつもりではなかったのですが、貴女の顔に当たってケガをさせたとロリンダさんから聞いていたの。それなのに............ちょっと!わたくしが謝っているというのに何故貴女はそんな変な顔をしていますの?」


「いえ、カレン様のその様な素直で殊勝な態度に驚いているのです!人ってここまで変われるのだなぁと」


 レイラのその反応に事の行方を見守っていたアナベルとロリンダは思わず吹き出してしまった。当のカレンも「それはもう悪口なのじゃないかしら」などと言いながらレイラに詫びの品を押し付けるようにして渡す。

 

「カレン様がお使いになっているローズオイルだなんて貴重なものをありがとうございます!」


「以前......結構前になりますけど、貴女その香りをいい香りだって言っていましたから」


 レイラはカレンの言葉を聞いて思い出した、確かにカレンと出会ったばかりの頃に話題もなくて何気なくそう言った記憶が蘇る。

 自分がカレンの機嫌を取るために言った何気ない一言をこの人は覚えていてくれたのだと思うと、途端に罪悪感が込み上げてきて自分もうわべだけの付き合いであったのだと思い知らされたのだ。


「わたくし!頂いたこのオイルもカレン様の事も大事にします。勿論アナベル様もロリンダ様の事もです」


 レイラはそう宣言をしてクリスティーナと会えるよう三人と約束をした。

 レイラはクリスティーナにアポを取り、話を聞いたクリスティーナが善は急げとなんとトントン拍子にその日の放課後ブロワ家での女子会が決まった。

 

 ブロワ家にて......クリスティーナはレイラ達の和解を喜び、カレン達の謝罪も受け和やかにお茶会が始まった。人見知りなクリスティーナではあったが、レイラがいたことで緊張もほぐれ会話も弾み出した頃レイラがおもむろにノートを開き、お昼に三人から聞き取り調査をしていた内容をクリスティーナに情報共有してよいかを確認を取る。三人はお昼同様不思議に思ったが同意をしてどういう事かカレンが代表して目的を聞く。

 先ほどまでモジモジと人見知りをしていたクリスティーナだが、この質問にキリッとした表情で答える。

 装飾品だけでなく生活用品なども女性に好まれる質と見た目に特化させた商品の販売を計画していて、市場調査やアンケートから情報を得たいのだと真剣に語った。

 レイラのアイデアは斬新ではあったが、冒険でもあるのでまずは何が必要とされているかに焦点を当て、そこにレイラの知識を足してより良い商品として販売しようという事になっているのだ。

 クリスティーナはそれ以外についても話した。自分の店舗の事や王都の物流、庶民の生活の実態などについて商人としても貴族としてもしっかりと見聞きして対応していたのだ。

 レイラ以外の三人はクリスティーナの姿に、話の内容に驚いた。何故なら自分達が噂を聞き想像していた少女像とはかけ離れていたからだ。大人しく地味でパートナーに浮気されたがたまたまフェルベールという大物に拾われただけのシンデレラガールであり、流行り店舗のオーナーという肩書もせいぜい実家であるブロワ家の手伝い程度としか思わず、噂のクリスティーナの実態は何も知らなかったのだ。

 自分達の目の前にいる二人はノートを見ながら意見を交わし合い、僅かな情報から最善を出すべく話し合っている。その姿を見てカレンは思わず呟いたのだ。


「投書箱......のようなものをお店に設置してみては?」


 四人の視線が一斉にカレンに集まり、カレンはハッと自分の手で口を塞ぐがレイラがいち早く反応した。


「そうよ、お客様の声だわ!カレン様ナイスアイデアです!要望も感想も書いてもらえばいいのよ、最初は躊躇されるかもしれないけれど、意見が反映されたり直接相談できる事はきっと受け入れられるはずだから試してみる価値は大きいわ!」


「しかし、カレン様達はレイラ様だったからこそお悩みを打ち明けられたのでしょうけど、お買い物をするお客様がその様な事まで打ち明けたりご自分の要望をわざわざ残してくださるでしょうか?」


 クリスティーナが微かに難色を示すが、そこにアナベルとロリンダが意見を出した。


「お店に直接買い物に来るような若い女性だったら、どなたもとは申しませんが......流行りの交換日記のような感覚で気軽に書いてくれると思いますよ」


 これにはレイラもクリスティーナも意表をつかれた。これまで情報としては把握していたが、実際の『生の声』を聞き、いかに自分達の考えが机上の空論であったかを知った形となったのだ。


 そこからはカレンの高位貴族の声、下位貴族のアナベル達の声、レイラのアイデア、そしてクリスティーナの経営者としての答えや考えを出し合い様々な案を煮詰めていった。時には真剣にそして時には笑い声をあげながら。

 その様子を離れた場所からウィルトが見ていた。クリスティーナの父である商会長のランドルフに頼まれ事でブロワ家に来たのだが、歓談中のテーブルに近付く事はせず彼女達の様子に安心しランドルフのもとに頼まれていた書類を届け、嬉しい報告をするべく足早にその場を後にしたのだった。




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