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21.新生レイラの交流会


ー 〇月〇日 晴れ ー


今日は日記帳を見てもらった後はウェンティーナ(クリスティーナの店)にも寄って買い物をするつもりだったのに、あのお店を出た後は何故かそのまま屋敷に帰ってしまっていた。だけどお婆さんも子猫もとても元気そうにしていたし、日記帳も無事直してもらえたので私的には満足の一日となった。


相変わらずあの辺は入り組んでいて一人で散策するのは到底無理だろうけど、他の怪しげなお店も見てみたいから今度お婆さんにお友達を連れてお店に行ってもいいか聞いてみようと思う。


この前もだったけど、お店のお茶を頂いたからかあのお店に行った後は疲れがとれるというか元気になれるので今度それも聞いてみようと思ったけれど、企業秘密かしら?それに今日は特に......頭までスッキリして心のつかえが取れた時の様な爽快さまで感じるって言うのは私の考えすぎかもしれないけれど、不思議なお店の不思議なお婆さんが淹れてくれるお茶だと考えると妙に納得してしまう。

もし薬草茶のおかげだとしたら、売り物なのか聞いてみよう。お父様にも飲んでいただきたいもの。



「ふぅ、聞きたいことが沢山あるから近い内にまた行きたいわ。今度の手土産はケーキか最近流行りのプリンもいいわね、でも今日のあれは何だったのかしら?あのお婆さんが一瞬美しい女性に見えたけれど......どちらが本当の姿なのかしらね、ってそれこそファンタジーの世界じゃない?それはそれで楽しそうだけれどきっと私には手に負えなくなるわね、私には麗良としての()()()()()があるだけでもレアケースだもの」


 『麗良とレイラが入れ替わった』ではなく、麗良は前世の自分であると違和感なく認識するようになったレイラは日記を書き終え明日に備えて早目に眠ることにした。

 休日明けの明日、和解後のカレン達にどう切り出すかをシミュレーションするが、急激な眠気に襲われ早々に眠りについたのであった。


 翌朝いつもより早くに学園へと着いたレイラであったが、どうやら考えていた事は相手も同じだった様でカレンと挨拶を交わす。二人はどこか気まずいような気恥しいような、何とも言えない空気を互いに感じつつ教室までを連れだって歩く。しかしここでもやはり沈黙に耐え切れなくなったレイラがシミュレーションの成果?を発揮すべく口を開いた。



「カッ、んんっ、カレン様?そのぅ......カレン様は先日の事を怒っていらっしゃいませんか?わたくしったらとても失礼な事を申しましたでしょう?ですのであの後反省しましたの。本当に申し訳ございませんでしたっ!」


「............い......わ」


「え?なんですか?なんと仰ったのですか?」


「だから!......ごにょ......ごにょって言っているのよ!」


「いえ、ですから......ごにょごにょでは分かりませんって!」


「もうっ!貴女って本っ当に鈍いのね!友人・・なのだから怒っていないって、言ったの!」


「カレン様......カレン様ってやはりツンデレだったのですね!」


「???レイラさん?ツンデレって一体なんの事ですの?」


 ツンデレについて聞き返してくるカレンを、一緒に歩いてはいるがある意味置き去りにしたままレイラは声を出して笑った。

 以前ならきっと『はしたない』とすぐさま注意された。いや、『いくら下位貴族と言えどみっともない、淑女にあるまじき~』ぐらいは言われただろうが、レイラは思ったのだ。今なら同じ事を言われてもきっと笑って流せると、そう思えたのだ。

 嬉しそうに笑うレイラを見たカレンもまた同じ事を思ったのか、二人は顔を合わせてクスクスと笑い合った。

 仲良さげな二人の姿を目撃した生徒達で二人の噂を知っている者は不思議な顔をして通り過ぎ、そうでない生徒は無関心に通り過ぎていくが、当の二人は全く気にする事なくわだかまりも緊張も解けた様子なのであった。


 そしてすかさずレイラはカレンに協力を仰いだ。何の協力か?それはもちろん......。


 

 ここはここは食堂のテラス席、午前の授業が終わり昼食の時間となり、席に着いているのはレイラとカレン。そしてその取り巻き......ではなく、アナベルとロリンダ。子爵家と男爵家の二人でカレンのイエスウーマンだった彼女達もレイラに誘われてこの場に同席していた。彼女らはレイラの口ぶりからただならぬ雰囲気を感じ取ってはいたが、新たに友人としての関係を構築するべく会話に集中していた。

 そしていよいよ食事を終え、レイラが本題へと入る。


「今日は皆さんにご相談と言うか、ご意見をお聞きしたくてお呼びしたのです。皆様は今何に興味がございますか?高級品ではなく身近な物でお聞きしたいのです。例えば......お肌に関する事ですとか、髪型とか、好きな香り?みたいなものをお聞きしたいのですが」


「わたくしは香水も髪にも高級ローズのオイルを使っておりますわ」

「わたくしは肌が乾燥しますのでこれからの季節大変ですの」

「わたくしは肌荒れが悩みです。髪も量が多いので髪型も選べないのです」


 この他にも三人からお気に入りやお悩みまで、沢山の声を聞くことが出来たレイラは時には驚き、相槌を打ちながら聞き役に徹しているが全てメモに残していく。

 そしてレイラはこれがクリスティーナの仕事に関する対面アンケート調査だった事を明かした。

 クリスティーナもレイラも同性の友人がいなかった為、メイド達に話を聞いてみたが年齢や生活層、使用目的などの違いがあったのだが今回この三人は見事にレイラ達のターゲット層に当てはまっていたのだ。

 レイラが友人達の趣味嗜好を初めて知る事ができ、また若い女性の貴重な意見も出来たとしてホクホクしていると、何やら顔を見合わせてヒソヒソと話していた三人がレイラに意を決して話しかけた。


「あの、レイラさん?今度はわたくし達からお願いと言いますか、相談があるのですが......」


 見ると何やら言いにくい内容なのか、三人とも顔を伏せているので少しだけ身構えたレイラなのであった......。




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