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18.ツンデレ?&ギャップ萌え!


 麗良はカレンの家庭環境を先日クリスティーナから聞いていた。取引先の事情など通常は他人に話したりはしないクリスティーナだが、麗良とカレンが揉めている事を知りオルダー家について語った。

 その内容は嫌がらせの被害に遭った麗良から見ても同情に値するひどい内容で……。


 クリスティーナは続ける、オルダー侯爵家は代々良くも悪くも貴族の鑑と言われてきた一族で、王族派とは対立する事が多い貴族派の筆頭とされている為、貴賤意識も高く下位の貴族や平民とのトラブルが後を絶たないらしい。

 その弊害が娘であるカレンにも顕著に現れたと言う訳だが、それは仕方ない事だろう。

 幼い頃から虐待に近い教育をされ、それに異を唱えない両親、人として大切な事など二の次三の次の環境で育ってきたのだ。

 その事を知り、想像をした麗良はカレンに同情してしまった。余計なお世話なのは承知の上で、あえて心を寄せたのであった。



「カレン様、幼子のように友人を作る事は、何も無理な事でも悪い事でもありませんよ?」


「でも、貴族にはそれ相応の在り方があるのよ!そこから逸脱する事など……許されないわ」


「えぇ、カレン様やご両親のお考え全てが間違いだとは申しませんが……。物事の一面だけを見て判断し決めつける事はあまりよろしくありません。何故ならその思考にいずれ己も思考までも囚われ、身動きとれなくなってしまうからです」


「何が言いたいの?……わたくしには分からないわ」


「カレン様?貴族はこうあるべきという考えのもと発言され、行動もされていますよね?そして高圧的な態度で優位に立ち、上位者として振る舞う事が高位貴族の姿だと」


「そうある()()でしょう。そう考えるのはオルダー家だけではないわ、それに我が家には高名な家庭教師もいますのよ……。あぁ分かったわ、貴女わたくしを否定したいのね?」


「いいえ、そうではありません。わたくしの様な下位の者が高位の皆様の責務やお考えなどを代弁する事など畏れ多い事でございますし、カレン様を否定するものではありません」


「では一体何を?じれったいわね!どうせ貴女もわたくしが嫌いなのでしょう?爵位だけでなんの才能も魅力もないただの傲慢な女だと!」


「カレン様、その考えに至る事こそが間違っているのです。カレン様は感情的に物事を決めつけ、飛躍的にそれも悪い方に結論づけております」


「だって、お母様も先生からも……」


「カレン様……。カレン様よろしいですか、たとえご自分に出来ない事があろうと、一度や二度の失敗があろうと、その事だけでカレン様の全ての価値が決まる訳ではないのです。一度、自分にも他人にも寛容になってはみてはいかがでしょうか?」


「寛容に?……無理よ。許す事も許される事だって」


「何故無理なのです?やってみるのです。そうだわやってみましょう!ではわたくしから失礼して。んんっ、カレン様、以前からのカレン様の嫌味で高圧的で傲慢だった態度も、今回の嫌がらせの件もわたくしは貴女を許します。ですのでカレン様もわたくしがカレン様の仰る一般的な常識から外れる事があっても寛容にお許しください。そして悪い所はお互い指摘し、話し合いながら直していきましょう、友人として」


「い、い、嫌味ですって?わたくしがいつっ!……。そうね、認めるわ……ごめんなさい。わたくし達がいないと何も出来ないと決めつけていたの」


「フフ、カレン様は不器用な完璧主義だったという訳ですね。気に掛けてくださっていたのは本当だったのですもの、これから互いを知っていきましょう」


 麗良とカレンが無事和解したのをそばで見ていたカレンの取り巻き二人も、おずおずと麗良に謝罪してきた。その謝罪を聞き入れた麗良は彼女達二人の名を呼び、カレンと同じ様に友人として関係を再構築する事となった。

 「また明日」と笑顔で彼女達と別れた麗良は、助けに来てくれたウィルトが黙って最後まで見守ってくれた事に礼を言った後、腰が抜けた様にベンチにそのまま腰掛けてしまった。


「ここは図書館の裏だったのですね、なぜウィルト様が?と驚きましたが納得ですわ。建物の中にまでわたくしの声が聞こえていたなんて……」


「いや、昼の件もあったから迎えに行こうとしていたのだけど、こちらから声が聞こえてきたから。あ!言うほど大きな声ではなかったよ、君の声だから私の耳に届いたのだと思う」


「聞かれたのがウィルト様でよかったです。でもウィルト様も呆れられたでしょう?あのようにさかしらに意見するなど……」


「どうして?君の言葉は間違いなく彼女達を救ったと私は思っているよ。これからどう考えを改めるか彼女達次第だけど、君と友人になれた事で世界が広がるだろうからね!」


 それはどう言う意味かと尋ねようとした麗良は、ウィルトの屈託のない笑顔を見て言葉が吹き飛んでしまった。先程カレンとの間に割って入ってきた時の彼はキリリと冷たさすら感じたのだが、今目の前の彼はまるで別人のように全てを許してくれそうな優しい表情を自分に向けているのだ。

 そのギャップに驚きと新たな発見に対する喜びを感じた麗良は、現在進行形で翻弄されている己の感情にはっきりと名前を付けたのであった。






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