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15.ウィルトと麗良


ー ◯月◯日ー 晴れ


こちらに来て初めてのお茶会だったから、とても緊張していたけど…顔ぶれはいつもの皆さんだったから、とても楽しかった。


あんな有名で高位の方達と仲良くさせてもらえるなんて、本当に夢みたい…。それに…私の提案が商品になるかもしれないなんて…クリスティーナは本当にすごいわ!私にも出来る事が…出来たのがすごく嬉しい。


ヴェントラー様も噂と違ってとても気さくでお優しかったし、ウィルト様も……私の事を気に掛けてくださっていつも紳士的に振る舞ってくださるから、とても困ってしまうわ…。


学園で何事もなければいいけれど…




日記帳を閉じてため息をつく麗良。

嬉しい事もあったが…懸念すべき点もあるのだ…それは



お茶会帰りの馬車の中…


「レイラ嬢、今日はありがとう。クリスティーナもあんなに喜んでいて…とても嬉しかったんだと思うよ」


「わたくしの方こそ!とても楽しくて、皆様に良くしていただけてとても嬉しかったです!

会話の中でも知識に至っても、ラムゼイ様にも沢山学ばせていただきましたわ!ラファールの事が知れて、これまでよりも興味が湧きましたの!

それとクリスティーナとも沢山仲良く…」


「レイラ嬢…君と知り合ったのは私が一番最初で、私とも仲良くなったんだよね?」


「え?…ええ、ラムゼイ様にとってご迷惑でなければ…ですが」


「迷惑だなんて、そんな事ある訳ないじゃないか!

だから私の事も家名ではなく名前で呼んでくれる?フェルベールはそのままでいいとしても、私とは読書仲間でもある訳だし、ね?」


(…っ!!……困ったわ…。そんな綺麗な顔で、ね?と言われても…。異性を名前で呼ぶとなると誤解される事もあるというのに…ラムゼイ様はこの事をあまりご存知ではないのかしら?)


「この国に来てまだそれほど経っておらず、名前を呼び合う友人も…あの二人しかいないんだ…。

でも…レイラ嬢を困らせてしまうなら無理にとは言わないよ…気にしないで」


「ウィーールト様っ!!ウィルト様っ!こっこれからはウィルト様ってお呼びしますね!私達は友人ですもの!全く困ってなどないですわ」


「本当に?嬉しいよっ!ありがとうレイラ嬢!」


ニパーッ!と嬉しそうに笑うウィルトに、それ以上何も言えない麗良は馬車の中で暑くもないのに頬を赤く染めて家路に着いたのであった…。




自室で日記を書き終えた麗良はその事を思い出し…ベッドへダイブをかまして身悶えつつも、自分の気持ちに気付きつつあったが…友人になれた事だけでも満足しなくてはと自分の芽生え始めた恋心を自制し、眠りについたのであった。





そうしてしばらくが経ち、あの時のお茶会で提案していた事が形になりつつあった頃、麗良が昼食の為教室を出ようとした時……。



「レイ……、クロシタン嬢…少し話があるんだが、今いいだろうか?」


「ベイズ様…?お久しぶりでございます。わたくしは構いませんが、何かございましたか?」


「少し場所を変えよう…」そう言って、レイラの元婚約者であるキリアン・ベイズ子爵令息は、麗良を食堂の近くまで連れ出した。

そこに行くまでの道すがら…二人は言葉を交わす事もなく連れ立って歩いていたが、疑問と居心地の悪さに麗良はキリアンに声を掛けた。


「……ベイズ様はお変わりなさそうですね…お元気にされてましたか?クラスが違うとなかなかお会いする機会もございませんものね」


一瞬驚いた顔をしたキリアンだったが、食堂に着いたので麗良に返事をする。


「昼食だが…君はどうする?予定がなければ一緒に食べながら話をしよう」


「あ…お昼は約束がございますのでお話だけお聞きしますわ。」


ハッキリと断りを入れた麗良に再び驚いたようなキリアンだったが、食堂の外のテーブルで話を始めた。


「急にすまなかった。実は…君に関する噂を耳にしたから、少し気になってしまって…いや、俺にその資格がもうない事は分かっているんだが…その…」


「大丈夫ですよベイズ様、心配してくださったのですよね?一体どんな噂か聞かせてくださいますか?」


「レイラ…君は随分と変わったんだな。いや、俺が知ろうとしなかっただけか。

……今日は噂の事もあって君に声を掛けたがっ…実は他にも話したい事があって……レイラッ!もう一度俺と…」


ーガタンッー


「レイラ嬢?遅いから心配で探しに来たんだけど大丈夫かい?何か困り事かな?」


「っ!!??」

「っ!!??ウィルト様っ!」


「ベイズ子爵令息、急に割り込んで申し訳ないね...。なにか深刻な話だったかな?」


「ウィルト・ラムゼイ?きみが何故ここへ?」


「なぜって...レイラ嬢といつも一緒にお昼を食べているからだが?それがどうかしたかい?

それよりも、噂だなんだのと...そんなくだらない話を彼女にするつもりなら、僕達はこのまま失礼するよ」


「ウィルト様?噂って?そう言えば...先ほどベイズ子爵令息も仰ってましたね?」


「レイラ嬢、私が話を聞いておくから君は先に行っててくれるかい?今日はクリスティーナも来ると言っていたから相手を頼める?」


「え?クリスティーナが?大変っ急がなくちゃ!......あ、でも...」


「ここは大丈夫だよ、ね?ベイズ君…同じクラスなんだし、気兼ねなく話そうじゃないか」


麗良は二人に気遣いながらもクリスティーナの元へと向かい、その後ろ姿を見送りながらウィルトはキリアンと話を話を続けた。


「キリアン・ベイズ、レイラ嬢に余計な事は言わないでくれるかい?」


麗良の姿が見えなくなった途端、分かりやすく相手を牽制した態度を取るウィルトなのであった…。






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