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14.お茶会にてー③


 (あらっ?どうしたのかしら......はっ!私の絵が壊滅的過ぎて呆れてしまわれたのかしら......)


ガタンッ


「レイラ様!詳しくっ詳しく教えてくださいっ!」


普段はとても大人しく、学園では未だに前髪で顔を隠していたりと内向的なクリスティーナだったが、商人としての彼女は違った...。麗良に詰め寄り詳細を聞き出そうとしているクリスティーナには、どこか迫力すらも感じられた。


『ゴクリ...』と息をのむ麗良。


ウィルトはそんな彼女のペンを持つ手に、自分の手をそっと重ね...麗良とクリスティーナを落ち着かせる。


「クリスティーナ、気持ちはわかるが...レイラ嬢が驚いているから少し落ち着いて」


「すっすみません!わたくしったら...つい、レイラ様のお話があまりにも具体的でしたので...」


「確かに...そうだね。このカザグルマにしても、ここに描かれているフーリン?も、すぐにでも商品化出来そうだからね。クリスティーナが興奮するのも無理はないか...」


「そうなの!やっぱりウィルトもそう思うわよね」


「そんなっ!...わたくしはただ...このようなものがあったなぁと...思い出しただけで...」


「ちなみにだが、君のその知識はどこから得ているのだ?」


「へ?ど、どこから...ですか?...そのぉ...本からと言いますか、はるか遠い異国の知識と申しますか...」


「まぁまぁ、フェルベール...そんなに問い詰めてはレイラ嬢が困ってしまうじゃないか。ほら、クリスティーナも、他に色々と聞きたいことがあるんだろう?」


言葉に詰まった麗良をウィルトが助ける形となり、どうにか返事に困る追求から逃れることが出来たが、その後もクリスティーナからの質問は止まらず...果てはフェルベールのヴェントラー公爵家も乗り出す事態となってしまった。

麗良としては質問に答え、自分の考えを述べただけであり、別段特別なことではなかったのだが、彼女の友人達はそれを「そうか」と流す事なく、むしろ一つ一つ丁寧に拾い上げていき...更に形にするべく距離と話を詰めてきたのであった。


学園の物販についてはフェルベールとウィルトが興味を持ち、是非ともあった方が便利だからとリストを作成した上で、生徒会に話を通して学園へ申請する事でまとまり、女性専用サロンの方ではクリスティーナととても盛り上がってしまい、とめどなく出てくるアイデアや女性特有の目線で意見を交わし合いながら、フェルベール達の存在を忘れかけた頃...


「では、その様に進めますので一度実物をお持ちしますね!」


何本か話も進みまとまりかけたので、この嵐のようなお茶会もお開きに近づきかけたその時...


「こうしてレイラ嬢がクリスティーナと仕事を共にするのならば、うちが後ろ盾となるのだから今度から何かあれば遠慮なくヴェントラー家を頼るといい!」


「えええっ!ちょっ...ちょっと待ってください!それとこれとは話が違うと思いますが?」


フェルベールの軽い感じで出された提案に、麗良が慌てて反論する。どうやらここまで話している内に、彼らとも随分と打ち解けて話ができるようになった様だ。


「それに...共にだなんて...わたくしは何も......」


「えええっ!ちょっ...ちょっと待ってください!レイラ様?協力をしてくださるのではないのですか?

そっそれに...これらは全てレイラ様のアイデアなのですよ?」


「でも...それを形にしたり提供するという大変な事は出来ず、わたくしはただ口を出しただけですもの...

そんなわたくしがお仕事を共にだなんて...烏滸おこがましいわ...」


「フフッ相変わらず貴女は無欲な人だ...。でも、考えてみて?貴女のその誰も知らなくて、思いつきもしないようなアイデアがあったからこそ...、何かが生まれようとしているんだ。

僕達だけではとても無理だし...それこそ、風を見て、聞いて楽しむなんてこと考えつきもしない。そう考えると...君は爵位だなんだは関係なく、ここにいる誰よりも優れている事になるんだよ?

我々が、そんな優秀な友人の財産である知識を搾取するだけの人間に見えるかい?」


「ウィルトの言う通りですレイラ様!わたくし...お恥ずかしい話ですが、これまで友人と言える友人もおらず、フェルベール様の婚約者となった影響でお声を掛けていただく事は増えたのですが、心を許せるまでの人付き合いが出来ずにいたのです。ですが...レイラ様は最初から恩を売るでもなく、損得抜きでお付き合いくださいましたでしょう?わたくしそんなレイラ様をお慕いしていますの!

なので、お仕事に関しましては対等にお付き合いをと考えておりますし…プライベートにしましても、今後はもっと親しくさせていただければと…そう思っていたのです…」


「クリスティーナ様……あの、実はわたくしも…ずっと友人…同性の友人が欲しいと、思っていたんです。

わたくし、休暇中に婚約を解消しまして…休暇明けにはオルダー侯爵家のカレン様達と対立してしまい、 皆様からも敬遠されるようになっていたので……、別にその事についてはなんとも思ってませんし、後悔もないのですが…気軽に話をしたり、一緒にお買い物に行ったり出来るお友達が欲しいと…、日記にも常に書き留めてあるのです。なのでクリスティーナ様のお気持ちすごく嬉しいのです!」


「えっ?じゃ…じゃあ」


「はい!お仕事もわたくしに出来る事はお手伝いしますし、プライベートでも沢山仲良くしてくださいね!」


「もっ!勿論です!あのっ、もう一つ…わたくしの事はクリスティーナと呼んでいただけませんか?

わたくし…幼馴染のマルコムからしかそう呼ばれた事がなくて…同世代で同性の友人にそう呼んでもらいたいのです!」


「奇遇ですね!わたくしも同じように思ってました!

なので…これからはもっともっとよろしくねクリスティーナ!わたくしの事もレイラと呼んでくれるかしら?」


クリスティーナの可愛さと、お互いの願いが同じなのだと感じた羅良は、今度こそ本当に心を許したのだった…。


















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