13.お茶会にてー②
目の前に並ぶ高位貴族の面々から、とっくに友達だから気楽に話そうぜ(しましょう)!的な事を投げかけられる展開に思考が停止してしまった麗良…。
そんなご無体な…と弱腰になる麗良ではあったが…
皆様思い出して欲しい、レイラの中身が麗良であり…彼女の元を辿れば、ド底辺…(ゲフンゲフン)もとい普通の女子高生であった事を!
この世界の仕様なのか…麗良の口からは貴族言葉が変換されて出ているが、話そうと思えばぎゃう言葉(ギャル言葉)だって話せるのだ!…(多分、きっと…。ん?え?ぎゃう古い??まぁまぁまぁ、気にしない×2)
「万歳!異世界ご都合主義!」と逃げる無能な作者はさておき…おずおずとではあったが麗良は覚悟を決め口を開いたのであった。
「わっ…わたくしの呼び名については、勿論どのように呼んでいただいても構わないのですが…やはり…その、わたくしは皆様方とは違い実家もしがない子爵家でございますので…」
「同じ学年であり、こちらがいいと言っているのだから、何も問題などないだろう」
「これに関しては私もフェルベールの意見に賛成ですよ?」
フェルベールとウィルト、この二人からの視線を受け…たまらず麗良が顔を逸らすと、目が合ったクリスティーナがにこりと可愛く微笑みながらうんうん!と頷いている…。
容姿端麗な三人に抗う術を持ち合わせているはずもない麗良は、戸惑い困惑しつつも三人の提案を受け入れ…
「徐々に…おいおい?……努力しま…す?」と、
何の返事なのかわからない様な返事をして三人の笑いを誘ったのであった。
クリスティーナは貴族といえども大きな商会の一人娘でもあり、己も経営者である為とても現実的かつ好奇心旺盛な質問を重ねてきたのだが、麗良は肩の力が抜けたお陰か…素人ながらも軽快かつ的確に、その全ての質問に答えて三人を驚かせていった。
「髪色が染まる、染められる、という根拠があった訳ではないのですが…あの時話した様に、他への染色技術があるのだから何とかなるのでは?と思ったのです。
勿論人体への影響を考えて、自然由来の草木染めですとか……原材料や人体への影響がないかのテストを繰り返す必要もあるでしょうから、今ある染色技術を応用するだけでは実現するのは難しいでしょうが…
え?風見鶏…に代わるものですか?……わたくしあの時もあの方達の傍若無人さに頭に血が上っていたので、あまり覚えていないのですが…いつかクク…クックックリスティーナ様のお店に行ってみたいと、ラファールについて少しだけ勉強していたのです。
なので風見鶏の事も知っていましたし…そうですね、もう少し手に取りやすいものをと仰るのであれば、風車などはいかがですか?それか...」
「レイラ嬢?カザグルマとは?クリスティーナは知っているかい?」
「いいえ、初めて聞く言葉です...。それよりレイラ様、名前で呼んでくださりありがとうございます!フフッ嬉しいです!あっ...フェルベール様はどうですか?カザグルマ、ご存知です?」
「クリスティーナ良かったな。そうだな.....それについては俺も知らない。レイラ嬢...それはどういったものなんだ?」
「えっと...ですね......説明が少し難しいのですが......ラファールには大きな風車がありますよね?それを小さくした様なものなのですが、うーん...そうだわっ!クックリスティーナ様?そちらの紙を二枚いただけますか?それとハサミと糊をお借りしたいのですが...」
「ええ、それは構いませんが...一体何をされるのですか?」
「簡単なものになりますが、風車を作って...実際にご覧いただこうかと」
麗良はそう言うと、クリスティーナから渡された紙を正方形にして対角線に折った後、メイドに準備してもらったハサミで四本の切り込みを入れ、羽根を作っていく。そしてテーブルにあったサンドイッチピックを中心に刺し、そしてもう一枚の紙をくるくると丸めて細い筒状にして上部を直角に折る、そこへ先ほどのピックを挿して風車を完成させたのであった。
そんな麗良の手元を興味深い様子でジッ...と見つめる三人。
「さっこれで完成です!いきますよ~」
そう言って麗良が羽根に息を吹きかけると、勢いよく羽根が回りだした!
「わぁっ!すごいっ...すごいですわレイラ様!」
「ちゃんと回っている...こんな少ない材料で?」
「これは驚いた...!レイラ嬢は凄いんだなっ!」
無事上手く回った事と、三人の反応に安心した麗良は...
「これは小さい子が遊ぶような簡単なものですが、素材や色を変えれば用途も広がるんですよ」
そういってクリスティーナに「どうぞ」とそれを渡した。
そして「もう一つ風を見ることが出来るものと言ったら...」と、クリスティーナにペンを借りて風鈴の絵を描き説明を始めた。
「風が吹くとこれがここに当たって音が鳴るんです!なのでここの素材を変えれば音色も変わり、その音はとてもきれいなので、お部屋の窓際に吊るして...やわらかな風の音を楽しむことが出来ますし、
形状を変えれば、お店のドアに掛けて実用的なドアチャイムとしても使え...」
釣鐘タイプや丸いガラスタイプの定番の風鈴から、棒状のスティックが揺れるタイプのウィンドチャイムの絵を説明しながら黙々と絵を描いていた麗良は、風車を手に取りあれやこれやと言っていた三人が急に静かになったので「ん?」と描く手を止めて顔を上げたのであった......。




