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90、⑤純文学(文芸)「はじめる」
もう少し描写を。
崇は静かに竿を水につける。
ゆっくりと深呼吸をし、心を整える。
「大丈夫、大丈夫」
何度も、自分に言い聞かせる。
その言葉が心に身体に浸透するまで。
じっと、舟を見る。
川下りに期待を膨らませ、目を輝かせるお客様。
(俺は、ここからまたはじめる)
今日は船頭して、初めての船出。
ぐっと、竿を握りしめる。
さーっと風が吹いた。
桜の花びらが風に舞う。
並木の柳が静かに揺れ、春の陽光に照らされ水面が煌めく。
舟は静かに水の上を走りだした。
ムズイね。




