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㊹ショートショート「遊撃手」~ショートだけに~
ござる、ござるよ。
俺はとうとう、投手の夢が破れた。
監督から告げられたのは遊撃手へのコンバート。
「鈴木、お前は小柄で俊敏、フィールディングも上手く地肩もある。やってみろ!」
確かに身長167㎝の俺では投手としての迫力はない・・・球速も無い・・・だからと言って夢を諦めろというのか、とうてい納得できない。だけど名門中学ではYESと言わなければ、補欠だ・・・これまでの野球生活が無駄になる・・・俺は結局やることにした。
「・・・そうかっ!この手があったか!」
・・・・・・。
・・・・・・。
「さぁ、日本シリーズ優勝までついにあと、一人。ピッチャー鈴木投げた!バッター打つ、ボテボテのショートゴロっ!ショート鈴木、横っ飛びキャッチ!ファーストの鈴木へ。やった!ついに優勝だっ!キャッチャー鈴木が走り寄り、ピッチャーの鈴木に抱きつく。内野陣の鈴木、そして外野の鈴木も歓喜の瞬間!まさに一人上手っ!」
そう、俺は分身の術を身につけたのだった。
ニンニン!
オウ!ニンジャ。




