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それぞれの道(END1)


「俺はリンカが好きだ。だけどお前はお前の道を行け!」

「……!?」


 ロイドの言葉にリンカは青い瞳で見上げたまま何も答えなかった。

しかし戸惑っている様子はなかった。リンカはロイドの更なる言葉を待っている様子であった。


「今はお互いの道を進もう。リンカにはリンカの、俺には俺が必要とされるところがあるんだ。だけど……」


 ロイドはしっかりとリンカを見据えた。


「いつか、きっと、道は繋がるはずだ。その時、改めて気持ちを伝えるよ。今度こそは必ず!」


 リンカの青い瞳が煌めきを取り戻す。彼女もまた何かを決意した様子だった。


「いままでありがとう」


 ロイドは手を差し出す。リンカはその手を握り返す。

 ロイドとリンカは固く手を結んだ。

しかしこれは別れではない。約束の証。


 どちらともなくロイドとリンカは結んだ手を離した。

そして互いに言葉を交わさず背を向けて、歩き出す。


 二人の距離が離れて行く。だが彼女は彼を想い、彼は彼女を想う。

たとえお互いに姿が見えなくなろうとも、想いの強さは変わらないまま。



●●●



 こうしてロイドとリンカは【それぞれの道】をまた歩み始めると決めた。


 未だ声が戻らずの大魔法使いリンカ=ラビアン。


そんな彼女ではあるが、先日遂に魔神皇が従える四天王の一人:金色の魔導人形師ゴーレムマスターフラン・ケン・ジルヴァ―ナ―を“文字魔法”で見事撃退した。

 彼女の活躍で、本来はフランの策謀によって消滅するはずだった城塞都市ソロモンは無事で、そこに住まう人々の犠牲も殆ど無かったと聞く。


 その活躍は稀代の大魔法使いリンカ=ラビアンの名声をより高めた。そして今や魔神皇の脅威に怯える数多くの人々が、彼女へ期待を寄せている。


 現在、リンカは聖王国最強で、唯一の“鎚の聖勇者オーキス=メイガービーム”の一党に加わり、四天王の筆頭であり魔神皇の片腕、“蒼き吸血騎士ヴァンパイアナイトトリア・ベルンカステル”の討伐へ乗り出しているらしい。



 一方ロイドは“未だに冒険者稼業”を続けていた。幸いなことに“物理攻撃が強い”彼へ時代がめぐってきたのだ。


 魔神皇ライン・オルツタイラーゲは、聖王国の戦力が“魔法”に偏っていると見抜き、魔法に強い耐性のあるエレメンタルジンを戦力の中心に据える。おかげで聖王国自慢の魔法部隊は歯が立たず、魔法攻撃に偏っていた半端な数多の勇者は役立たずの烙印を押されていた。


 代わりに見直されたのが“物理攻撃”であった。魔法が殆ど効果を示さないエレメンタルジンへ、物理攻撃が猛威を振るったのだ。


 そのため魔法習得が昇段条件となっていた“昇段試験”は形骸化の一途をたどっていた。もはや魔法は絶対的な力ではなく、選択肢の一つにまで成り下がっていた。


 これからは実力の時代。様々なシーンで、多様な存在が自由に活躍する時代。


 そんな時代の中で、もはや旧来の格付けなど意味は無かった。


 それでもCランク冒険者のロイドは“回復魔法”の向上に余念がなかった。

日々、末端で魔神皇の尖兵と戦いながらも、努力を怠ってはいなかった。


 回復魔法は彼にとっての絆。


 モーラ、オーキス、ゼフィ、そして今も世界の中心で戦っているリンカと、共に時を過ごした証拠。皆で積み上げた、そして獲得した大事な力。



 それなりの絶望と、無いに等しい希望――そう思っていたのはもうだいぶ昔のこと。


 相変わらず絶望はそれなりにはある。落ち込むことも多い。


 しかし希望はあった。


 いつかまた、巡り合いたい。


 自分へ希望を与えてくれた、陽だまりのような温かさを持つ、最愛の人に。


「さっさと追い付かないとな。あいつに……!」


  昼の神が照らし出す中、彼は胸を張って未知の世界へ向かってゆく。


 いつの日かまた、胸を張ってリンカに会える日を目標に。

ただひたすらに、まっすぐと――



 おわり


*ちょっとお待ちを! 未だ終わりではありますせんっ! ちょっと物足りませんよね、この終わり。

だって恰好は良いですけど、二人の想いは全然重なってないんですもの!

明日をお待ちください。明日が真の最終回です。


ここまでリアルタイムで読んでいただいた皆様に感謝を込めて。

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