表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灯火の消える前に〜異世界で聖女になったJK、護衛の最強騎士と時間制限付きの恋をする〜  作者: 秋桜星華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

003 お願いの詳細

 くらっ、とした。体調の問題ではない。規模のでかさに眩暈がしたのだ。


 まず天音は、国の状況さえ知らないし、ここがどこかも分かっていない。国家の命運を見ず知らずの少女に握らされても困る。


 お断りします、と言おうと口を開いたとき、男性の藤色の瞳が天音を捉えた。


 じっとこちらを見つめ、懇願するその目。


 ――あの子と、同じだ


 なんとも言えない激情が天音の心に沸き起こる。天音はそれを必死に抑え、何事もなかったように取り繕う。一瞬の逡巡を経て、小さく頷いた。


「わかりました」


「……感謝する」


 そんな天音の葛藤を知ってか知らずか、男性はそう言い、微笑んだ。目元のくまのせいで疲労は隠しきれず、些か引き攣ってはいたが。


「詳しい説明に移る。――入れ」


 その言葉を待っていたかのように後ろの扉が開いた。驚いた天音が振り返ると、トレーを手に持った女性と剣を腰にさした青年が入ってくるところだった。


「この国は今、魔物の被害に遭っている」


「ま……まもの?」


 天音は目を丸くする。急にファンタジーな言葉が飛び出してきた。


「そうだ。瘴気を放つ魔物は、農作物を駄目にすることも、人に怪我をさせることもある、危険な生物だ。それが今、この国には蔓延っている」


「そ、それを私に倒せ、と言うんですか?」


 流石に危険なことはごめんだ――そんな天音の気持ちを見越したように、男性は言葉を続ける。


「安心して欲しい。貴殿に危険がないよう、最善を尽くす。……エリアス」


 椅子に座る男性は隣に立つ青年に視線を向ける。青年は一歩前に出て、お辞儀をした。


 天音は驚いた。このファンタジー要素のある世界にお辞儀という文化があったことに対してもだが、なによりその青年――エリアスのお辞儀は美しかった。角度も、間も、視線も。天音は、お辞儀で感動することがあるということを初めて知った。


 天音がエリアスのお辞儀に見惚れているうちに、男性はエリアスを紹介していた。


「彼はエリアス。今日から貴殿の護衛を担当する騎士だ」


 騎士だから帯刀を許されているのだろうか。先程、お辞儀のときに見せた身のこなしにも納得である。


「そして、これを貴殿に授けたい」


 そういうと、男性は傍らに控えていた女性からトレーを受け取り、載っていたろうそくを天音の方へと差し出した。


「このろうそくの炎は決して消えることはない。溶け具合は時間と貴殿の聖女としての力がどれだけ使われたかに比例する」


 ――どうやら自分は、聖女という立ち位置なようだ。

 そう思うと同時に、天音はファンタジーな世界観にツッコむのを諦めた。


「そして、このろうそくが溶けきったとき――貴殿はこの世界から元の世界へと帰還する」


次の更新は12月6日(土)です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
˚✧₊⁎⭐︎秋桜星華の作品⭐︎⁎⁺˳✧༚
新着更新作品
累計ポイントの多い作品
バナー制作:コロンさま
― 新着の感想 ―
蝋燭でMP管理、はいいが、つまりMPは回復しないのか。 そしてMP0になると帰還? ……………と思ったけど、MPという認識でいいのかなあ? 実はHPだったりして。 蝋燭はお寺で使ってるのみたいなデッカ…
蝋燭……消えないとしても、常に持っているのは変に気疲れしそうですね〜。預けておきたいけど、残りの聖女力が可視化できていないと不安もあります。 熱くは無いのかな? (´・ω・`) どんな聖女の力なのか…
ツッコもうと思ってたんかーいw ひとつひとつのキャラクターの所作がすごく丁寧な感じで描かれてますね♪ 聖女の天音ちゃん、騎士のエリアスと旅に出るのかなー? 続き楽しみにしてます♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ