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貞操逆転世界で真面目な成り上がりを目指して男騎士になった僕がヤリモク女たちに身体を狙われまくる話   作者: 寒天ゼリヰ
第四章 結婚狂騒曲

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第589話 盗撮魔副官と会議

 わたしが招集を出した者たちがカルレラ市に揃ったのは、その日の昼過ぎの事だった。各人の所在地から考えれば、これは驚くべきは早さである。なにしろ、もっとも遠方在住のエムズハーフェン選帝侯ツェツィーリアの所領エムズハーフェン領などは、このリースベン領から騎馬も十日はかかる距離があるのだ。

 もっとも、状況が状況だけに皆が慌てるのも当然のことかもしれない。なにしろ、我々全員の要石に等しい重要人物であるアル様が、あの不埒な王太子風情に囚われてしまったのだ。


「貴殿らの主君どのは、なかなかに良い性格をしていると見受けられる。私も権謀術数を生業としている人間の一人として、彼女のことを見習った方が良いかもしれんな」


 夕日の差し込む領主屋敷の会議室で、開口一番に厭味ったらしい言葉をぶつけてきたのはくだんのカワウソ選帝侯、ツェツィーリアだった。その顔には笑顔が浮かんでいるが、むろん内心が穏やかであろうはずもない。仮面の下ではよほどの不満と怒りが煮えたぎっているに違いなかった。……当然ながら、わたしとてそれは同じことではあるが。


「まったく油断した。まさか、ガレア王国の時代を担うハズのお方がこれほどまでの盆暗だとは思いもよらなかった」


 唸りに近い声でそう返しつつ、わたしは会議室の中を見回す。対面の席に座るツェツィーリアをはじめとして、室内には数多くの有力者が揃っていた。レマ伯ジェルマンを筆頭とした宰相派のガレア貴族の他にも、ズューデンベルグ伯アガーテ(つまり、我が義妹カリーナの長姉だ)やミュリン伯イルメンガルドなどの神聖帝国系の貴族の姿もある。むろん、ミュリン領に駐屯していたジルベルト・ゼラなどリースベン軍の幹部たちも陣を部下に任せて一時帰参していた。

 もちろん、これだけの人数がこれほどまでの速度で集結できたのにはそれなりの理由がある。ほとんどの者が、翼竜(ワイバーン)鷲獅子(グリフォン)などを用いて空路でカルレラ市にやってきたのだ。空の旅はその危険性から要人の移動手段としてはあまり好まれないのが一般的だが、状況が状況だけに手段を選んでいる余裕などなかったのである。


「とにもかくにも、ヴァロワ王家は龍の尾を踏んだのだ。代償はキッチリ払わせる」


 居並ぶ諸侯を睨みつけながら、わたしはそう宣言した。腹の底では、あの好色な王太子への怒りが渦巻いている。よりにもよって、アル様本人に手を出すとは。決して許せるものではない。


「お怒りはごもっともですが、ソニア殿」


 レマ伯ジェルマンが困惑したような目つきでわたしを見る。エムズハーフェン戦でもアル様と共に戦った、実力と人望を兼ね備えた宰相派の重鎮だ。


「ブロンダン城伯殿……いえ、今はブロンダン伯爵ですか。あのお方の安否は大丈夫なのでしょうか? ブロンダン伯殿は宰相閣下を逃がすべく単騎で追手に立ち向かったという話ですし、万が一の事態もあり得るのでは……」


 その言葉に、この場に居るほぼ全員の顔に苦いものが浮かんだ。気持ちは皆おなじだった。アル様こそ、我々の陣営の実質的な盟主に他ならないのだ。その喪失は、下手をすれば陣営そのものの崩壊に繋がりかねない。


「……大丈夫だ。王太子はあくまで、アデライドを主敵と定めている。アル様ご本人は、あくまで被害者という立ち位置なのだ。内心どう思っているのかまではわからんが、アル様を害せば大義名分そのものが成り立たなくなってしまうのは確かだろう。少なくとも、お命の心配だけはしなくとも良いと思われる」


 むろん、命以外は保証されない可能性が高いが……。わたしは心の中でそう付け加えた。あの男と見ればいついかなる時でも発情を止められないクソ王太子のことだ。アル様の尊厳を傷つけるような真似とて、躊躇なく行うに違いない。畜生、ああ、最悪だ。その凶行を止められぬふがいない自分が許しがたい。この恨みは百万回死んでも決して忘れはしないぞ、腐れ王太子……!


「それに……アル様らを追撃に当たったのは、我が妹マリッタという話だ。愚妹が何を思って王太子に加担したのかは知らんが、奴は腐ってもスオラハティの人間だ。マリッタ自身にとってもアル様は幼馴染であるわけだから、殺すような真似は流石にすまい。むしろ、心配なのは王太子の矛先を一身に受けているであろうアデライドの方だ」


 この言葉は、半分嘘だった。マリッタがなぜアル様に牙を剥いたのかという点については、おぼろげながら想像がついている。奴はおそらく、立場と家族愛の両ばさみにあって身動きが取れなくなってしまっているのだろう。彼女はひどく真面目な女だが、それゆえに暴走しがちな部分があった。

 この件に関しては、はっきり言ってわたしが全面的に悪い。わたしがもっとしっかりマリッタと対話していれば、きっとこんなことにはならなかったハズだ。出来ることなら、過去に戻ってすべてをやりなおしたい。しかし、そんなことは不可能だ。わたしは歯を食いしばった。すでに賽は投げられた。アル様が居ない以上、この場の責任者はわたしだ。これ以上かじ取りを誤るわけにはいかん。冷静になれ、ソニア・ブロンダン!


アデライド(カスタニエ宮中伯)に関しては心配する必要はない。彼女は手勢ともどもエムズハーフェン家ゆかりの商会の手で保護しているからな。そう心配せずとも、近いうちに貴殿の元に無事戻ってくるだろう」


「……ありがとう、エムズハーフェン殿。この借りは必ず返す」


 憎たらしいセクハラ宰相の顔を脳裏に浮かべつつ、わたしはカワウソ女に頭を下げた。アデライドを責めたい気持ちは……正直ある。しかし、彼女が自らアル様を捨て駒にしたとは思わない。アル様は、自らアデライドや近侍隊を守る盾となったのだ。で、あるのならば……アデライドに怒りをぶつけるのは筋違いというものだろう。まあ、ヤツが戦勝パーティへの出席に肯定的だった事実を忘れてやる気はないが……。


「ブロンダン卿とカスタニエ殿が無事であったことは、不幸中の幸いだね。しかし、問題はこれからだよ」


 老狼騎士が渋い顔でそう言った。ミュリン伯イルメンガルドだ。先の戦争では我々と真正面からぶつかった彼女とその一族であったが、いまやミュリン家そのものが我々の参加に収まっているのである。イルメンガルド本人は戦争の終結と同時に隠居しようとしたのだが、家中と我々の慰留を受けていまだに当主の座にくくり付けられていた。正直言ってかなり哀れだが、悪いのは後継者教育に失敗した彼女自身である。


「初手で大将を狙ってきた以上、ガレアの王家の意図に誤解の余地はないだろうさ。じきにまた戦争が始まるってわけだ。ソニア殿は、この難局をいったいどういう風に乗り切るつもりなのかね?」


 イルメンガルドの顔には辟易した表情が浮かんでいる。家の存亡をかけた大戦(おおいくさ)が終わった直後に、さらなる大戦争の火種が燃え上がったのだ。彼女の気分はわからなくもない。もっとも、先の戦いはそもそもこの老狼騎士が仕掛けてきたモノではあるが。


「どういう風に? そんなことは決まっている。アル様は囚われてしまったが、わが軍はまったく健在だ。そうだろう、ジルベルト」


「むろんです」


 水を向けてやると、我が親友は噛みつくような調子でそう応えた。彼女の目には明らかな憤怒の炎が燃えている。ちょっとした刺激で爆発してしまいそうなレベルの怒気だった。当然ながら、その矛先はヴァロワ王家に向けられている。


「リースベン軍は既に臨戦態勢に入っています。ソニア様の下令を頂ければ、すぐにでも王都に向けて進発いたします」


 まて、まてまて。流石にそれは気が早い。現在のリースベン軍は、約七割の戦力がミュリン領に駐屯し、残りの三割がリースベン領に戻ってきている。この戦力分散状態で戦端を開くのは流石にやめておいた方がいいだろう。絶対に敗れるわけにはいかない戦いだからこそ、準備は丹念に行わなければならん。


「我が主は、最後に『君たちの助けが来るのを待ってる』と仰せだったそうです。我々リースベン軍には、一秒でも早くこの命令を遂行する義務があるのです。わかりますね? ソニア様……!」


「もちろんだ。我が心は諸君らとともにある」


 頷き返してから、わたしはジロリと議場を睨みまわした。もちろんわたしも今すぐ出陣を命じたいところだが、敵は強大な王軍だ。我々の手勢だけでは、流石にかなり厳しい戦いになるだろう。しかし、我々にはアル様の残してくださった様々な縁がある。これをフル活用すれば、王家が相手でも十二分に戦うことができるだろう。


「諸君、我々はこれより対王家戦争を開始する。たいへん申し訳ないが、諸君らにも付き合ってもらうぞ……!」


 怒りと決意を込め、わたしはそう宣言した。

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