少しの変化
次の日、俺は憂鬱な気分でいつもの道を歩いていた。理由?そんなの一つに決まっている。綾瀬のことだ。1日経ったとはいえーーーいや、1日経ったからこそ、どういう顔をすればいいのか分からないのだ。
考えても見てくれ、つい最近転校してきた女の子の一番他人に知られたくなかった事を知ってしまったんだぞ?昨日は、その場の勢いとかがあったからなんとかなったけど、今日はそれすらないしな......。
まぁ、一番危惧していたドアを開けたら、登校しようとしてた綾瀬に遭遇が無かったからよかったといえばよかった。流石に考えただけでも色々辛い......。
あー、ダメだ。難しいことは考えないで普段通り行こう。そう覚悟を決めて学校に向けて足を早めた。
結果、まだ来てませんでした。
まぁ、助かったといえば助かったのかな?普段通りの基準が分からなくなってきてた所だし。知らぬうちに肩に入っていた力をため息と共に抜き、自分の席に座る。さて、時間あるし何か読もうかな〜。
「お〜い、聖哉」
なんて考えていると不意に声を掛けられて、俺はそいつにジト目を向ける。
「おいおい、来て早々そんな顔すんなよ。んで、昨日はどうだったんだ?」
今、俺と話している奴ーー石井 愛斗はこのクラス内では一番仲のいい友達である。
まぁ、コイツは無駄にルックスいいのに彼女が居ない少し残念な奴だ。てか、なんでコイツがそんなこと聞いてくるんだ?
「どうもこうも、あるわけないだろ?」
嘘です、ありました。
「ふーん、そうなのか?ならいいんだが」
と言いつつ、愛斗は探るような視線を向けてくる。はぁ、コイツ無駄に勘がいいから面倒い。
その時、こちらに誰かが近づいてくるような気がして横を向くと、綾瀬がこちらに歩いて来ていた。いや、席が隣だから当たり前と言うか当たり前なんだけど......なんか雰囲気が怖い。
そして自分の席に鞄を置いてから何故か俺の方を見てくる。いや、睨みつけてきたと言った方が、合ってるかもしれないぐらいと思うぐらいだよ。目を合わせると何故か綾瀬は目を逸らし......。
「おはよぅ」
とだけ言って教室から出て行った。
俺が少し驚いた顔していると、ちょんちょんと肩を突かれてそちらを向くと何故かニヤニヤした愛斗が居た。
「やっぱなにかあったんじゃねえーか!」
「だから何もないってー!」
この後愛斗をはぐらかすのに、かなりの体力を使ってしまった。
綾瀬が教室に帰ってきたのはSHRが始まるほんの少し前だった。それから、授業が始まるも綾瀬と話すことが無かった。だから俺は油断して居た。
放課後になり、先生の話が終わり皆んなが帰ろうとする中......。
「ちょっとこっち来なさい!」
「はぃ?ちょ!え!?」
俺は綾瀬に手を引かれ、結構な勢いで教室を後にした。勿論荷物なんて持つ暇はなかった。
俺たちの去った後の教室は皆、狐につままれたような顔をしていたそうだ。




