毛玉
羅々は鬼姫を睨みつけると、彼女にこう言った。
「今すぐ雅人の体から出ていけ! お前みたいな殺人鬼に居場所なんてない!!」
「あたしの居場所はあたしが決める。あんたにとやかく言われる筋合いはないわ」
まさか会話しているのか?
鬼姫と。
「私は雅人の幼馴染なんだよ! 雅人はコミュ障でヘタレだけど、お前みたいなやつが近くにいると近い将来、必ず雅人に悪い影響を与える! だから、今すぐ出ていけ! そして、二度と私の前に姿を見せるな!!」
「黙れ、小娘。今すぐ殺されたいのか?」
いけない!
このままだと殺し合いになってしまう!
そう思った彼は二人の間に割って入った。
「二人とも、もうやめてくれ! 僕の前で殺し合いを始めようとするな!!」
「雅人。その気持ちはよく分かるけど、こいつがいる限り、雅人は一生こいつに付き纏われるんだよ? それでもいいの?」
うっ……そ、それは……。
「雅人、よく考えて。私は雅人のことを思って……」
「黙れ! 小娘! あたしの所有物を惑わすな!」
鬼姫は僕の背中に乗ると、両腕と両足をクロスさせた。
「雅人は物じゃないよ! というか、お前に雅人の体に触れていい権利はない! 今すぐ離れろ!」
「バカめ! お前ごときに何を言われようと、聞く耳もたんわ!」
睨み合う二人。
ど、どうしよう。このままじゃ、二人は……。
その時、僕の髪の毛の中から異常に長い髪の毛が一本出てきた。
それは二人の気管に入ると、毛玉になった。
「あっ……! く、苦しい……!」
「な、なんだ! これは……!」
僕が悶え苦しむ二人の様子に目を奪われていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「お兄ちゃん……今のうちに、二人を説得して」
それは僕の妹『山本 夏樹』の声だった。




