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風と雨

 僕が予鈴が鳴るのとほぼ同時に教室に入ると、そこには誰もいなかった。

 あれ? おかしいな。今日は月曜日のはずなんだが。

 僕が自分の席に行こうとすると、何かの気配を感じた。

 これは……殺気か? いや、違う。

 これは……威嚇いかくだ。

 僕にこれ以上近づくなと警告しているんだ。

 けど、そういうわけにはいかない。

 なぜなら、僕はこの学校をとりあえず卒業しなければならないからだ。

 それにクラスのみんなが忽然こつぜんと姿を消しているのに僕だけがここに存在していることが誰かにバレたら、僕がクラスのみんなに何かしたのだと勘違いされかねないからな。


「おい、そこにいるのは誰だ? というか、クラスのみんなをどこにやったんだ?」


「……フシャー!」


 猫のような鳴き声が聞こえた後、風のやいばが僕の頬をかすめた。

 ん? こいつ、もしかして……。


「おい、そこにいるやつ。お前もしかして、風みたいなやつなのか?」


 僕がそう言うと、その子は姿を現した。


「お前……あいつのことを知っているのか?」


 逆立った白髪と赤い瞳と体を包帯で覆っているのが特徴的な少年(?)は僕の目の前にやってきた。


「ああ、知ってるよ。お前のことを心配してたぞ?」


「そうか……。で? あいつは今、どこにいるんだ?」


 僕は自分の髪の毛で作った分身体に例の子どもをここに連れてくるよう指示した。


「あと三秒後に、ここに来るから少し待ってろ」


「は? 三秒後?」


 その時、僕の髪の毛で作った分身体たちが例の子どもを連れてきた。


ふうちゃん!」


あめ! お前、今までどこに……」


 ふうが最後まで言い終わる前にあめふうに抱きついた。


「それはこっちのセリフだよー! 早めにこの町から離れるように言われたのに、急にいなくなるなんて、どうかしてるよ!」


「そ、それは……まあ、そうだな。悪かったよ」


 良かったな、無事に合流できて。


「あのー、もしもしー。そろそろクラスのみんなを解放してくれないかー?」


「ん? あー、そういえば、そうだったな。風のおりに閉じ込めたんだったな」


 風のおり……。

 中にいるみんなは大丈夫なんだろうな?


「解除!」


 ふうがそう言うと、クラスのみんなが箱の中から一気に出てきたように出現した。


「はぁ……まったく、次からは気をつけろよ……って、もういないのかよ」


 僕がそうつぶやくと、僕の頭の上に何かが落ちてきた。

 これはなんだ?

 雨と書かれた紙切れと風と書かれた紙切れは僕の手に触れると、手の平から体内に侵入した。


「えっ? ちょ、今のは……いったい……」


「気にしたら負けだよ」


 鬼姫ききの声が僕の脳内に響き渡ると、彼は「そうだな、そうだよな」と言って、自分の席に向かった。

 先ほどまで降っていた雨は二人がいなくなった直後、ピタリと止んだ。

 二人はいったい何者だったのだろうか。

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