中身
幼馴染の『百々目鬼 羅々』が持ってきた紙袋の中には『お菓子』が入っていそうな箱が入っていた。
僕がそれをテーブルの上に置くと、妹はこっそりそれを開けようとした。
「夏樹」
「な、なあに?」
僕が妹に視線を送ると、妹は数歩後ろに下がった。
紙袋の中には小さな紙切れも入っていた。
僕はそれに文字が書かれていることに気づいた。
僕はそれを手に取ると、文章を目で追い始めた。
「……お兄ちゃん。それ、なあに?」
妹がそれを読もうとした時、僕は妹がそれを見れないように、そっぽを向いた。
「ねえねえ、見せてよー」
妹はしつこくそれを見ようとしてくる。
僕はその度に、そっぽを向く。
「……なるほどな。そういうことか」
僕がそれをテーブルの上に置くと、妹は嬉しそうにそれを手に取った。
「何が書いてあるのかなー」
妹はそれを黙読した。
妹はそれを読み終えると、その紙切れをビリビリと破いた。
「おい、夏樹。そこまでやる必要はないだろ」
「お兄ちゃんはどうしてそんなに落ち着いてるの! こんなのおかしいよ!」
おかしい……か。
まあ、それはそうかもしれないな。
けど、僕が暴走する前に手を打っておくのは当然だと思う。
「羅々の両親がいつ僕の異変に気づいたのかは分からないけど、僕が暴走しないようにするためには僕の中から鬼の力だけを破壊する必要があるんだよ」
「そんなことしたら、お兄ちゃんはこの世界で生きていけなくなるよ!」
そうだな……。
人と妖怪が共生しているとはいえ、鬼の力に頼りっぱなしだった僕がその力を失えば、僕は死んだも同然だ。
「それはそうなんだけど……」
「こんなもの! 私が壊してあげるよ!」
妹は黒い長髪で箱を持ち上げると、それを床に叩きつけようとした。
その時、座敷童子が目を覚ました。
彼女は自分の左手の甲に『重』という字を書いた。
その直後、僕と妹はピクリとも動けなくなってしまった。
「騒がしいですね。少し静かにしてください。おや? この箱は何ですか?」
彼女はそれを手に取ると、箱の中身を見た。
「これは……金平糖ですね」
は? 金平糖?
それって、お菓子だよな?
その時、僕は例の紙切れに書いてあった文章を頭の中で読み上げた。
色とりどりの星の煌めきはあらゆる邪気を祓い、万物に幸福をもたらす。
しかし、それを過剰摂取すれば、黒き闇が白を侵食するだろう。
あー、なるほど。そういうことか……。
どうやら僕たちは早とちりしてしまったらしい。
「おいしそうですね、今日のおやつはこれにしましょう」
彼女が指を鳴らすと、僕たちは自由の身となった。
「あ、ああ、そうだな」
「そ、そうだね。あはははは」
その後、特に何も起きることなく、時が流れていった。




