お土産ではない
座敷童子はいつのまにか眠っていた。
僕はただ、彼女の頭を撫でていただけなんだがな。
「お兄ちゃん」
「ん? なんだ?」
夏樹(妹)が僕の脇腹をつついてきたため、僕はそちらに目をやった。
「ソファまで運ぼうよ……」
「ん? あー、そうだな」
僕は彼女をソファまで運ぶと、タオルケットを被せてやった。
「寝顔は……意外と可愛いんだな」
僕が彼女の頬を人差し指でつつくと、彼女はニッコリ笑った。
「可愛いね」
「ああ、そうだな。いつもこんな感じだったらいいのにな」
妹も僕と同じように彼女の頬を人差し指でつついた。
その時、インターホンが鳴った。
「ん? 誰かな?」
宅配便かな? 宗教絡みかな?
まあ、いいや。とりあえず、開けてみよう。
「はーい」
「あっ、雅人。良かったー、元気そうだね」
なんだ、羅々か。
「まあな。それで? 僕に何の用だ?」
「あー、まあ、その……これ」
幼馴染の『百々目鬼 羅々』は紙製の袋を僕に差し出した。
「なんだ? 旅行にでも行ったのか?」
「違うよ。お父さんとお母さんが雅人に渡してこいって言ったから持ってきたんだよ」
お土産ではないのか。
じゃあ、いったい何なんだ?
「そうか。ありがとう」
「うん」
僕がそれを受け取ると、彼女は僕の頭に手を置いた。
「おい、僕より背が高いからって、子ども扱いするなよ」
「違うよ。なんかちょっと雰囲気変わったなーって思って」
雰囲気が変わった?
どこが? どんな風に?
まあ、そんなことをこいつに訊いても僕が知りたいことは何一つ分からないから、それはやめておこう。
「そうなのか? というか、いい加減離れてくれないか? 変な噂が流れるぞ」
「変な噂? どんな?」
どんなって。
それは……ほら、あれだよ。
なんというか……。
「まあ、いいや。じゃあ、また明日ね」
「ん? あ、ああ」
彼女はニコニコ笑いながら、その場から走り去った。
「お兄ちゃん……それなあに?」
「ん? ああ、なんか羅々の両親が……って、いつから見てたんだ?」
妹は僕の背中に飛び乗ると、袋の中身を見ようとした。
「待て。中に入ってから見よう」
「はーい」
妹は僕の背中から飛び降りると、リビングに向かった。
「さてと……行くか」
僕はそう言うと、ゆっくりと扉を閉めた。




