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鬼姫

 僕が目を開けると、真っ暗な空間しか目に入らなかった。

 ここは……どこだ?

 僕はどうしてこんなところにいるんだ?

 僕はその場から動こうとしたが、指先さえも動かせなかった。


「ここは私の空間よ。私の許可なしで動けるわけないじゃない」


 僕の目の前に現れたのは、黒い人型の影のような存在だった。


「お前は誰だ? というか、ここはどこだ?」


「私にそれをくの? 頭、大丈夫?」


 こいつ、どうしてこんなに上から目線なんだ?

 けど、ここでキレたら僕の負けだ。


「お願いします。僕に色々教えてください」


「いいわよー、ただし条件があるわ」


 条件?

 条件か……。うーん、まあ、僕にできることならいいかな。


「条件? それはいったい何ですか?」


「なあに簡単なことよ。少しの間、私にあんたの体を預けるだけなんだから」


 体を預ける?

 それはそのままの意味か?

 それとも何かの比喩ひゆか?


「それは冗談ですか?」


「何言ってんのよ、そんなわけないじゃない。ほら、さっさと体を預けなさい」


 なんか怪しいな……。


「じゃあ、自己紹介をしましょう」


「自己紹介? そんなのしなくていいわよ。だって私は」


 その時、彼女は何かを言いかけたが、言う前に黙り込んでしまった。


「どうしたんですか? 僕に知られたら、まずいことでもあるんですか?」


「あー、いや……その……なんというか」


 こいつ、もしかして。


「あなたはもしかして、鬼……ですか?」


「お、鬼? さ、さぁ、何のことだかさっぱり分からないわねー」


 確定だな。

 まあ、なんとなくそんな感じがしてたんだけどな。


「鬼さん、鬼さん、あなたはどうして僕の体を欲しがるの?」


「鬼さんじゃなくて鬼姫ききよ! 鬼のひめと書いて鬼姫きき!! あっ」


 トラップにまんまと引っかかったな。

 チョロい、チョロい。


「では、鬼姫ききさん。どうしてあなたは僕の体を欲しがるんですか?」


「そ、それはその……ひまだからよ」


 え?


「それはつまり、僕の体を使って暇潰しをしたいということですか?」


「えっと、その……ひ、久しぶりに外の世界を見て回りたいなーと思って」


 なるほど。鬼でも好奇心にはかなわないんだな。


「分かりました。では、一時間だけ僕の体をあなたに預けます。というか、貸します」


「え!? いいの?」


 ここで断ったら、一生ここから出られないだろうからな。


「はい、いいですよ」


「そ、そう。じゃあ、そうさせてもらうわね」


 まあ、その間、ここが何なのかを調べるんだけどな。

 彼女はいつのまにか姿を消していた。

 さてと、それじゃあ、ここが何なのか調べますか。

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