精神攻撃
昼ごはんを食べ終わると妹はとても満足そうな顔をしていた。
相変わらず後頭部にあるもう一つの口からはよく食べる。
まあ、それは単に『二口女』の特殊体質なのだが。
バイトの時間まで少し余裕があるな。
よし、晩ごはんの下ごしらえでもしておこう。
僕が台所に向かおうとすると『座敷童子』が僕の向く手を阻んだ。
「……なんだよ」
「あなたは少し休んでください」
また僕の邪魔をするのか、こいつは。
「休む? 疲れてもいないのにか?」
「疲れているのは、あなたの心です。肉体がいかに強靭でも今あなたに精神攻撃をしたら、あっけなく倒されてしまいます」
はぁ? 精神攻撃?
「そうか。じゃあ、やってみろよ。その精神攻撃とやらを」
「それは嫌です。しかし、あなたを強制的に休ませることはできます」
強制的に眠らせるだと?
そんなことが本当にできると思っているのか?
「どうやら信じてもらえないようですね。分かりました。では、今からお見せしましょう」
彼女はそう言うと、指をパチンと鳴らした。
すると、先ほど彼女が僕の右手の甲に書いた『守』という文字が浮かべ上がった。
それから放たれた光が部屋全体を照らすと、僕は意識を失った。
「まったく、まだまだですね。精神が疲れているから、この程度の催眠術にかかってしまうんですよ」
彼女はそう言うと、彼を二階にある彼の部屋まで運んだ。
彼をベッドに寝かせた彼女は彼の額に『安』という字を書くと、部屋から出ていった。
彼の妹である夏樹は彼女とすれ違う時、目を細めた。
「お兄ちゃん……遊ぼうよー」
彼女は彼の部屋に入ると、彼にそう言った。
彼は気持ちよさそうに眠っている。
それに気づいた彼女はニコニコ笑いながら、彼の額に優しくキスをした。
その後、スキップしながら部屋から出ていった。




