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制御方法

 バイトが終わると、僕はいつも通り帰宅した。

 怪しい影や厄介ごとに遭遇することなく、まっすぐ帰宅した。

 僕が自室に行くと『座敷童子』がいた。

 彼女は数日前から、この家にやってきた。

 僕がいない間に家事やら妹の相手やらをしてくれるから追い出しはしない。

 しかし、突然やってきた存在に家の中を歩き回られるのは正直、気分の良いものではない。


「なあ、童子わらこ


「はい、何ですか?」


 彼女は目をクリクリさせながら、こちらを向いた。


「僕がいない間に色々してくれるのは助かるんだけど、あまり余計なことをしないでくれないかな?」


「余計なこと……ですか。まあ、たしかにそうかもしれませんね。しかし、私がここにやってきたのは、あなたたちのご両親に依頼されたからです。そう簡単に出ていくことはできません」


 両親に依頼された?

 こいつはいったい何を言っているんだ?

 というか、どうして今になって、こんなのに依頼したんだ?


「僕の両親が依頼した? お前にか?」


「はい、そうです。そろそろ、お互いを異性として見始めるだろうからと」


 なんだよ、それ。

 僕がシスコンだと言いたいのか?

 そんなことはない! 僕はただ、世界でたった一人しかいない大切な存在を守りたいだけだ!

 異性として見始める?

 バカにするなよ、僕は妹に手を出すようなことは絶対にしない!!


「思春期真っ盛りの、この時期。体も心も大人に成長していきます。それは妖怪だろうと人間だろうと変わりはありません」


「何が言いたい?」


 彼女は僕の手をつかむと、僕の手の甲に『解放』という文字を指で書いた。

 すると、僕の右腕は人ではなく鬼の腕になった。


「ぐぁ!? く……くそ……いったい……何をした!」


 目の前にいる存在に手を伸ばし、壊そうとする右腕の手首をつかみながら、僕は彼女にたずねる。

 彼女はニッコリ笑うと、僕の机とセットになっている椅子に座った。


「別に何もしていませんよ。私はただ、あなたを本来の姿にしてあげただけです。一時的にですけど」


「お前は、いったい何を考えているんだ? もし僕が自我を失っていたら、どうするつもりだったんだ?」


 彼女は僕の目の前にやってくると、僕の右手の甲に『封印』という文字を指で書いた。

 その直後、僕の右腕は人のものになった。


「はぁ……はぁ……はぁ……。に、二度とするなよ。あんなこと」 


「いえ、何度でもやりますよ。あなたが力を完全に制御できるようになるまでは」


 僕が彼女を睨みつけると、彼女は僕の両頬に手を添えた。


「いいですか? あなたの鬼の力が暴走すると、あなたの妹である夏樹なつきさんがそれを封印しなければならなくなります。なので、明日からは今日と同じようなことを寝る前に何度かやってもらいます。そうすることで、あなたは徐々に力を制御できるようになります」


「おい……勝手に決めるなよ。というか、俺に命令す」


 その時、彼女は僕の頭を叩いた。


「一人称が変わったということは、鬼の力があなたを支配しつつあるということです。このままだと、あなたは確実に鬼の力に支配されます。なので、これからは私の言うことをちゃんと聞いてください。分かりましたか?」


「……分かったよ。というか、宿題やらなくちゃいけないから出ていってくれ。気が散る」


 彼女はニッコリ笑いながら「はーい」と言って、僕の部屋から出ていった。

 はぁ……やれやれ。

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