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独占欲

 僕は何をされたんだ?

 あれ? 僕の体が見える。

 でも頭がない。

 頭はどこに行ったんだ?

 雅人まさと童子わらこの母親である童世わらよに頭を引っこ抜かれたことをようやく理解した。


童世わらよさん。どうしてこんなことをするんですか?」


「あなたが鬼の力を宿しているから」


 そ、そんな! 童子わらこが誰にも察知されないようにしてくれているはずなのに! どうして分かったんだ!


「私は文字使い。それも文字使い。それが文字使いになれたのは私のおかげ」


「つまり、弟子が師匠に勝てるわけがないってことですか?」


 童世わらよさんは僕の頭を畳の上に置くと、その場で正座をした。


「ええ、そうよ」


童世わらよさん。あなたの娘さんは、ちょっと不器用なところがありますが、僕たちには必要不可欠な存在なんです! ですから『それ』呼ばわりしないでください!」


「生意気。人間はおろかで鬼は残酷ざんこく。つまり、どちらでもあるあなたは最悪」


 今はそんなの関係ない。


「僕のことはどうでもいいんです! それより、あなたの娘さんをちゃんと見てあげてください!」


「それは役に立たない。私の劣化コピー」


 じゃあ、どうしてあなたはそれを育てたんですか!


「だったら、どうしてあなたはその劣化コピーを生かしているんですか!」


「それは私の後継者……文字使いとしての才能は私ほどではないけれど、少しはある。だから、私が死ぬまでそれは生きなければならない」


 なんだよ……それ。


「あなたは……自分の実の娘をなんだと思ってるんですか!」


「それは私のためにある。私のために生き、私のために死ぬ。そういうもの」


 奴隷……道具……私利私欲……。

 そうか……この人にとって、童子わらこは娘じゃないんだ。

 だったら……。


「なら、娘さんは僕がもらっていきます」


「あなたは今日、ここで死ぬ。まずは拷問。次に調教。最後に洗脳。つまり、あなたは私の奴隷になる。あとは私の力であなたの戸籍を消して、あなたの家族や友人たちの記憶からあなたという存在を消す。これであなたはいないも同然。ここでしか生きられなくなる」


 この人は僕のことを何だと思ってるんだ?


「独占欲のかたまりのような人ですね、あなたは」


「私の夫は私を置いて、どこかに行ってしまった。だから、今度は逃がさない。あなたはその代わり」


 ん? ちょっと待て。

 たしか、ギリシャ神話にそんなのが……。

 ああ、そうか。

 この人の夫はゼウスで、この人はヘラなんだ。


「あなたの異常な行動の原因が分かりました。あなたの夫が今どこにいるのか分かりますか?」


「分かる。けど、きっと帰ってきてくれない。どうせ今頃、他の女と……」


 分かるのなら、さっさと連れ戻せばいいのに。


「連絡手段はありますか?」


「え?」


 彼女は目に涙を浮かべている。

 はぁ……時間……かかりそうだな。

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