びっしり
ホワイトボードに僕の頭……いや心の中の様子が描かれていく。
「ちょっと待て。端から端まで真っ黒ってことはないだろう?」
「ううん、今の雅人はこんな状態だよ。どこを見ても黒しかない。お先真っ暗だよ」
呑気だな。
『百々目鬼 羅々』は彼の幼馴染である。
彼女は何でも見通せる目を持っている。
彼は一度、それはしてほしくないと言ったが、もう遅かった。
見られた後にやめろと言われても、それより前の時間軸に行くことは困難だ。
「それで? それをきれいな色でいっぱいにするには、どうすればいいんだ?」
「それはまだ分かんない。けど、まあ、とりあえず情報を整理しよう」
羅々は真っ黒だったホワイトボードを真っ白にすると、僕と妹についての情報を書き始めた。
「……まあ、こんなもんかな」
「おい、ちょっと待て。なんか僕の視力とか身長まで書きそうになってなかったか?」
彼女は何も言わずに振り返ると、ニッコリ笑った。
な、なんだよ、その笑みは。
余計な詮索はするなってことか?
「あー、まあ、いいや。えっと、僕は何をすればいいんだ?」
「えーっとねー、私やみんなが知らないことを書いてほしいんだけど……いいかな?」
結局、書かされる羽目になりそうだな。
よし、書こう。
「了解。けど、そこに書かれてある内容以外に書いてないものなんて、ほとんどないぞ?」
「どんな些細なことでもいいから、とりあえず思いつくだけ書いてみて。ほら、早く」
そんなに急かすなよ。
その後、彼はホワイトボードの裏面まで文字をびっしり書いた。
それは主に妹に関することと今までの自分が妹とどう接してきたのかについて、書かれていた。




