花嫁の親友
読んでくださってありがとうございました。
しまった――。
エリアルは、自分の首に縋りついて泣くリリスを抱きしめながら、そう思った。
なんでここにアルフォードをつれてきてしまったのだろうと後悔する。
事の始まりは、エリアルの結婚とアルティシアの結婚が決まったことだった。お互い兄妹同士で結婚するし、なによりアルティシアは自分の結婚というか式に乗り気ではなかったので、それなら一緒に式をあげようという話になったのだ。
アルティシアも喜んでくれたし、エリアルもそれがいいと思っていた。
今日は、アルフォードとアルティシアを話を進めるために呼んだのだ。そこにリリスがやってきた。リリスとエリアルは姉妹のような間柄なので、特に用事がなくても家にやってくることがある。
実はリリスと出会うのは久しぶりで、アルフォードから逃げてから会うのは初めてだった。
居間に通されたリリスは、そこにいるアルフォードやアルティシアに驚くより先にエリアルの髪を掴み、驚愕の悲鳴を上げたのだった。
「リリス、ほら、大丈夫?」
気付けに水を渡して飲ませると、リリスは泣き始めたのだ。
「エリアルごめんなさいね。何か悲しいことがあったの? 私は何も知らなくて――」
そして、エリアルの胸で泣き始めたのだった。
驚いたのはアルフォードもアルティシアも同じだったが、静かにリリスが落ち着くのをまった。
「リリス、違うの。これは……、ちょっと剣の稽古で間違って切り落としてしまって……」
流石に一人で領地に帰るために男装しようと髪を切ったとはいえない……。
「エリアル、可哀想に――」
尚も泣くリリスを抱きしめながら、エリアルはこの話も言わなければと思い話し始めた。
「アルフォード様との結婚が決まったの。それでね、今日は式について色々話し合いがあって、来てくださったのよ。お兄様もアルフォード様の妹君のアルティシア様と結婚することになったから、いっそ合同でしようって――、リリス??」
リリスはおかしな位うろたえていた。おろおろと今聞いたことは本当のことかとクレインのほうを見る。
頷いたクレインに、そんな……と吐息のように呟く。
アルティシアなどは、もしかしてこの子はクレインのことが好きでショックを受けているのではないかと、ハラハラしてしまう。が、漏れた呟きはそういうことではなかったらしい。
「エリアルと合同結婚式をするのは私だとおもってたのに――」
唖然とする一同に、エリアルが結婚するときは、自分もハールと一緒に結婚するときで、色違いのおそろいのドレスを着るつもりだったと告げた。
「リリス……初めて聞いたのだけど……」
「だって……エリアルの結婚が決まったら打ち明けようとおもってたのだもの」
「リリス、もう、貴女は……」
大好きといって抱きしめると、アルフォードが複雑そうな顔でこちらを見ていた。女に嫉妬はできないようだった。
エリアルが、リリスの結婚式には家族の席でお祝いするし、ずっと側にいるからと言うと、リリスは少し満足したようだった。今も隣で肩を寄せ合っている。
「ドレスはどれがいいかしらね~。今から春だと急がないとね。春は結婚シーズンだし。人気のマダム・プレアのドレスとかなんかもう予約で一杯らしいわよ」
リリスはエリアルやアルティシアより余程世間を知っているので、アドバイスしていく。
「白もいいけど、今はピンクとかも流行ってるのよ。真珠を縫い付けたドレスとかもいいわね~」
何故かリリスとクレイン、アルフォードが輪になって話し込む。
「エリアルには是非マダム・プレアのドレスを用意したい!」
「いえ、やはりここはシアのためにおれが流し目の一つでもして……」
「エリアルの肌の色にはやはり白だと思う」
「シアの黒髪には白いドレスが似合うでしょう」
二人が言い合いをはじめたところで、エリアルはアルティシアを抱き上げて部屋の隅の方に移動した。白熱した三人はそれに気が付かなかった。
「お義姉さま、私何色でもいいわ……。誰が作ったドレスとかどうでもいいし……」
「わたくしもよ……流石にこの歳でピンクは嫌だけど……。エリアルは可愛いのだもの。マダム・プレアにしてもらいなさいな」
「私、マダム・プレアがどなたかもわからないし……正直面倒くさいです」
「あら、わたくしと一緒ね。わたくしたち、実は似たもの同士なのかしら……」
エリアルの面倒くさい発言にリリスが気付く。ハッと立ち上がると、どっちがマダム・プレアに頼むか喧々囂々と言い争っている二人に、警告する。
「あの、どちらの姫ももう結婚式どうだっていいみたいになってますよ……」
絶望的な顔で二人が振り返ると、エリアルとアルティシアは美味しそうにというかこちらの事は無視して、ケーキを食べていた。
「終わりました?」
エリアルは、三人の視線に気付いて微笑むと、アルティシアと頷きあう。
「「もう面倒なんで、適当におねがいします」」
泣きそうになる二人にリリスが胸をはる。
「では私が手配いたしましょう! お金に糸目は?」
「「つけません!!」」
リリスが請け負うと、二人の男は頭を下げた。
これで一生二人はリリスに頭が上がらないだろうなとエリアルは思うのだった。
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エリアルには、腰から下はシフォンの柔らかいドレス。色は白い。胸元からシフォンの下に光沢の白をもってきて、それには金糸で美しい刺繍がされている。エリアルの金の髪にも深い森の緑の瞳にもこれ以上のできばえはないだろうと思われた。侯爵家の家宝でもあるエメラルドのネックレスと金にエメラルドがあしらわれた小さなティアラをつけると、人であるのか妖精の女王であるか判別がつかないといわれるほどだった。
アルティシアには白い絹のさらりとした生地が何枚も重ねられた細い身体、抱き上げられたときに床まで垂れるそのドレープの美しさが際立つドレス。ボレロのような羽織るものが付いていて、瞳と同じ色で刺繍されている。胸元に光るのはこれも侯爵家の家宝である紫がかったサファイアで、これまた月の女王のようだった。黒い髪にプラチナのティアラがつけられていて、これはエリアルとおそろいの意匠だった。
満足げにリリスは、自分を称える。
賞賛をもらって、大好きなエリアルときっとこれから大事な友達になるアルティシアの結婚の準備ができて嬉しかった。
結局、二人ともマダム・プレアに頼んだのだ。
二人の花嫁になる女性をみて、目を輝かして「わたしの最高傑作になりますわ! 」と吼えたマダム・プレアは、リリスと一緒にこの二人の人外の女王のような姫を仕立て上げたのだ。出来上がった後、リリスはマダム・プレアと祝杯をあげたのは内緒の話である。
沢山の人に読んでもらって、恋愛ランキング日刊5位にはいることができました。感謝感激です。
弓&刃物?の小話を『公爵夫人のお茶会』として、リリスの続きを『紅の果実』として書いています。よろしければ、そちらもよろしくお願いします☆




