間奏
読んでくださってありがとうございます☆
「ああ、もう駄目だ――」
目頭を押さえるとジンと頭の奥が痛くなる。
クレインは、ガン!と西方騎士団軍務指令執務室の扉を開けると、そこで真面目に書類をさばいていたアルフォードに報告書を渡した。
「おい、クレイン。お前、ちょっと奥で眠れ」
執務室の奥にはアルフォードのための仮眠室がある。
「あー借ります」
そこには白皙の美青年が劣化した姿があった。心なしか金髪がくすんで見える。
「あ、おい、なんだこれは……おい、まてクレイン!」
報告書に目を落とした瞬間アルフォードが吼える。それを眇めた目で眺めてから、クレインは肩を落とす。
「書いてる通りです……。もういいから眠らせて……」
上目遣いでそういうとアルフォードは少し焦ったように視線を彷徨わせた。
「ああ……それがいいな。それがいい……。昼くらいに起こすぞ」
お願いしますと、声になるかならないかの細い声が聞こえて扉が閉められた。
「なんか今のクレイン変だったな」
クレインの執務室でアルフォードの手伝いをしていたレイルがそう言う。
「エリアルに似てた――」
絶望的な呟きがアルフォードの口から漏れる。
「あはは――。あれっすか、あれから会えてないんですよね」
エリアルに愛を告げて、一緒に沢山遊んだ後、エリアルは領地の両親の元に帰ってしまった。会いたくて仕方がないが、五日近く仕事を放りだしたつけは自分に返ってきた。
これからの婚約と結婚に向けての準備で、グレンリズム領にいくほどの時間はとれないのだった。
「それはなんの報告書なんですか?」
「嫌な報告書だ――」
クレインはグレンリズム領に行くついでに砦の方にまで脚をのばして視察をしてきた。それの報告書だと最初は思ったのだが、グレンリズム領内で起こった傭兵や私兵などの拘束について書かれていた。それを聞きたかったのだが、クレインは眠ってしまったので、仕方なく報告書を読むことにした。
思っていたより酷かった。
「早く婚約発表しなくては――」
エリアルの身が心配になる報告書だった。
グレンリズム領は、王都から派遣されている騎士団の他に、領主がもつ私兵団がある。その数は、この国でもかなり多い。それはやはり10年前の戦がきっかけであった。
隣国からの侵略に対する備えは伯爵の采配で行われている。領地内の巡回も勿論含まれていて、領民の結束も高いこの地では山賊、盗賊なども生息できないくらいだ。
他の領地と違うところは、全域に伯爵の支配がいきわたっていることだろうか。正直騎士団の上部からすると、王家に謀反などを起こされてはたまったものではないので、頭の痛いところであった。
その私兵団がここ最近になって、いくつもの不審者達の群れを発見、捕獲したというのだ。
グレンリズム領に駐屯している西方騎士団の副長である部下が立ち会って調べたところ、その不審者たちの狙いはエリアルだった。
ある侯爵の息子に雇われたものだとか、クレインが以前気にしていたエリアルを嫁に欲しいと多額のお金を用意していたものだとか、そのほかにも幾人もに雇われたものたちがグレンリズム領で密かにさらおうと狙っていたという。
アルフォードはその報告書を読んで青ざめた。
幾人かはエリアルに仕留められているというのもどうかと思うが、ちょっと伯爵令嬢にしては自由すぎるのではないかと思う。
アルフォードは立ち上がる。
「どこへ……?」
レイルは、凄みを増したアルフォードに恐る恐るという風に尋ねた。
いっそトイレとか言って欲しい――。
レイルの願いもむなしく、アルフォードは低音を響かせながら、扉を開ける。
「陛下に結婚の許可をもらってくる!」
アルフォードは国王のとりなしも受け付けず、嫁はもらわないと宣言していたので、今から撤回してくるという。
「ちなみに先触れは?」
「いるか!!」
アルフォードの勢いをレイルに止めれるはずもなく、見送ることにした。
「クレインを起こそう……」
顔色の悪いクレインには悪いが、あの猛獣を制御できる人間は、今ここにはいない。
レイルは、眠って三十分も立っていないクレインを起こしに隣の部屋へいく。
「お前も苦労するなぁ」
レイルの声は聞こえていないようだった。
今回は、つなぎのような部分です。クレイン、そのうち過労で死ぬんじゃないですかね?私は睡眠不足が我慢できない性質なので、ついついキャラを睡眠不足でいじめてしまいます(笑)。睡眠不足で憂いげな美形とか好みです☆




