魅惑の首筋
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アルフォードが軍服の襟を正して三週間の後、暑さも増してきた訓練場では、久々に脱いだと黄色い声援が歓声となっていた。
いつ脱ぐかと内輪で賭けがあり、クレインは三週間にベットした。「勝ったな」とほくそ笑む。
ちなみに一番多かったのは一週間くらいだ。きっと女性に吸い付かれたと思っていたのだろう。ただの鬱血でなかったと知るのは、クレインくらいではないだろうか。まぁ、まさか噛み付かれてるとは思わないよな……。
そうだ、そうだ……これだけご婦人令嬢が集まっているのだ、あれやらないと……。
クレインは、持っていたタオルを持って、剣を収めたアルフォードに寄っていく。五人の騎士に順番に稽古をつけていたアルフォードは流石に汗を流していた。
「閣下。お腹壊しますよ……」
「いや、お前、俺をいくつだとおもってるんだ……」
嫌そうにアルフォードは顔をしかめる。
「ほら、頭まで汗かいてますよ。風邪ひいたら私たちが大変なんですから……」
と、それっぽいことを言いつつ、アルフォードの額の汗をぬぐう。
背後から「いや――!」「キャ――!」「もっとやって――!」と声援が飛んでくる。
他の騎士がひるむほどだ。
アルフォードは全く気にしていないので、背中の汗まで拭いて、軍服を渡すと、ふと何かが気になったのか、観覧席のほうに視線を移した。
クレインの行動にも、声援にも特に動じた様子もなかったアルフォードが、一瞬固まって、クレインを凝視した。
「今日は、来る予定だったのか」
アルフォードが何を見たのか、そちらを見ないでもクレインは気付いた。
「最近、セリナ王女殿下と親しくさせていただいております。セリナ様の付き添いでしょう。私は聞いておりませんし」
「王女殿下もいたのか……」
アルフォードは、貴賓席の方をみて、エリアルの横に確かに王女の姿を認めた。自身の仕える王族の姫がいるとわかって、挨拶にいかないわけにはいかない。
「レイル、クレイン一緒に来い」
横で剣を磨いていたレイルにも声を掛ける。
「「はい」」
レイルも身だしなみを整え、アルフォードとともに貴賓席の方に歩いていく。二人の後ろにクレインも続く。
セリナ王女殿下は、とても大人しい王女だった。まだ十四歳で、公務などもほとんどないため、騎士団の中でも近衛と呼ばれる王族の護衛を専門にしている部門の騎士しか側に寄る事がない。身体の大きな大人の男達の集団は苦手のようで、この訓練場に来ることもなかった。
比較的、貴公子ぽいレイルとクレインなら大丈夫だろうと連れて来たが、それは成功だったようだ。
「王女殿下、ご見学にいらしてたとは気付かず、失礼いたしました」
アルフォードが挨拶すると、セリナとエリアルは立ち上がって美しい礼をした。
「いえ、お邪魔してしまいましたかしら?わたくし達はただの見物ですわ。お気になさらずいらして」
セリナが精一杯の笑顔で応えるのを、アルフォードは微笑ましく見つめる。王太子と王太子妃の姫とは思えないほどの可愛らしさだと思う。
それでもアルフォードは、隣のエリアルが気になって仕方がなかった。エリアルは少し下を向いたままで、睫の影に隠れて、瞳を合わせようとしなかった。
「今日はグレンリズム伯爵令嬢でいらっしゃるエリアル様と、皆様の雄姿を拝見にきたのです」
紹介しようと思ったのか、セリナは横のエリアルの腕をとった。
「こんにちは、エリアル……」
アルフォードの方からエリアルに声をかけると、王女は「ああ、知り合いですのね」と嬉しそうに言った。
「アルフォード様……」
エリアルの視線が、首筋を沿って、アルフォードの顔に行き着く。もうなくなってしまった自分のつけた跡を確かめたのだろう。
クレインはエリアルの様子に、ここに来たのは不本意だったのだろうと予想した。あれから、エリアルはアルフォードの話題を避けていた。
「お久しぶりです……」
エリアルの視線に気付いたのか、アルフォードは無意識に首筋を撫でた。そこには、もう型も跡も残っていない。
「セリナ様、私、先に失礼します」
エリアルは、いたたまれなかったのだろう、王女に告げて、その場から立ち去ろうとした。
「だめよ、エリアル。あなた一人で歩いていたら、また酷い目に……」
「酷い目に……?」
しまった!と王女は口を押さえた。
アルフォードの質問は、王女に向いてはいなかった。
「お前は、また……」
アルフォードの低い声に王女はギョッとした。
こんな声を出す人だったろうか、いつも大きな身体でセリナが驚かないようにそっと行動して、優しい声を出す人だと思っていた。父の親友で、父がどんな無茶振りをしても、あきれたような声を出すだけで、本当に怒ったところは見たことがなかった。
「酷い目とは、なんのことだ」
エリアルの足は動かなかった。アルフォードの怒りを感じて、萎縮してしまう。
やっぱりあんなことをしてしまった自分に怒っているのだ……。
あの優しい人が、怒ることを自分はしてしまったのだと、エリアルは噛み付いた時の感覚を思い出した。
「待ってください、閣下」
「うるさい、クレイン、お前でも止めるとどうなるかわからんぞ」
クレインは、今にもエリアルを攫おうと隙を窺っているアルフォードを止めようとして、牽制されてしまった。クレインは、焦ってはいたが、冷静にアルフォードを説き伏せることにした。酷い目がなんなのか、もちろん自分も知りたかったが、それどころではない。
「エリー、行きなさい。閣下、エリアルを見世物にするおつもりですか?」
訓練場に来ていた貴婦人たちを見回して、クレインはアルフォードに小さな声でそう言った。アルフォードは自分達がどれだけ注目を浴びていたか気付き、エリアルに伸ばそうとしていた腕を引っ込めた。強い意志が必要だったが、エリアルを話のネタにしたくはなかったので、必死に冷静さを取り戻した。
エリアルは、逃げるように素早く訓練場を去った。
相変わらず、逃げ足は速かった。
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「いつも妹が親切にしていただいているようで、ありがとうございます」
クレインの笑顔は慈愛に満ちているようで、引きつっていたセリナもなんとか、声を出すことができた。
「いえ、わたくしこそ、いつもエリアル様には優しくしていただいております」
周囲に聞こえないくらいの小さな声で、クレインとセリナは話した。
「酷いこととおっしゃていたのは……何かあったのでしょうか」
エリアルのことを考えていたアルフォードも、セリナの言葉を待った。
「いえ、酷いというのは……言い過ぎでした。でも、エリアル様は強くていらっしゃるので、ついついのぼせ切った男性を酷い目に合わせてしまうのですわ。のされた方は何度も騎士団の方に連行されていきましたが……」
知らなかったのですね、と秘密を暴露してしまったセリナは、申し訳なさでエリアルに心の中で謝った。
クレインとアルフォードは目を見合わせた。
「酷い目に……あわされたのではなく……あわしたのですか!!」
クレインは、妹が男を叩きのめすのを想像できた。しかし、疑問だ。何故報告があがっていないのだろう。
レイルは気まずそうに、声を出した。
「すまない。報告は出してない。エリアル嬢の外聞が悪いかと思って、秘密裏に処理させてもらっていた」
「レイルが?」
アルフォードは意外そうにレイルを見た。騎士団の中では比較的、良識派というか真面目な男なのだ。
「だって、可愛い顔で『アルフォード様には秘密ね』とか言われたら、男としてはやるしかないだろう」
いや、駄目だから……。クレインは頭が痛くなった。
「後で報告しろ」
アルフォードの目が据わっていて、常にない上司の威圧感にレイルは「はい!」と元気よく返事をしたのだった。
なんとなくじれったい感じになってきてると思ってます(自分的にw)。
BL要素含むを入れたらアクセスが増えてビックリしました。一応前回BLぽかったので、いれたんですけど、だめですかね?本の中だけですもんね~。




