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花嫁の代価

わーい。目標の40ptに到達いたしました。ありがとうございます♪

 エリアルは、リリスと共に昼前から粉とりんごと奮闘していた。タルトはなかなか力仕事だ。それでも慣れた手つきで仕上げていくと、いいにおいが立ち込めてくる。


 エリアルは満足げにテーブルの上を見下ろす。こんがり焼き上げたタルトタタンとマドレーヌとりんごのパイだ。一切れづづでも、一度に食べるのはリリスが拒否したため(彼女はお年頃なので)、マドレーヌ以外はエリアルの皿をつつくという少しお行儀の悪いことをしてしまった。どれもとろけそうな美味しさで、テンションが上がる一方である。

 美味しいものとお茶があれば、何時間だってしゃべり続けられるのは女の性である。いくつだろうとそれは変わらない。


 

 リリスにも半分持って帰ってもらった。ハールとの話を聞いたが、とてもうまくいってるようだ。リリスが幸せなら、エリアルも嬉しい。

 明日はハールがお休みだから、戦利品をもって、ピクニックに行くといってた。私の好きな植物園を推してみた。今は春。どこを見ても満開のはずだ。




 エリアルは、いつものように夜遅くに帰ってきたクレインに、明日舞踏会のお礼にお菓子を差し入れしたいとお願いした。その日のクレインはかなり疲れていて、あまりエリアルの話を聞いてくれなかったが、お願いには頷いてくれた。明日は剣術の訓練があって、その後にならアルフォード様はいるだろうということだった。


 なにか大変なことがあったんだろうか・・・・。もしかして、もっと早くにお願いしとくべきだったのだろうか。


 少し心配になる。けれど、クレインは迷い悩む姿をエリアルに見せることはない。


 疲れた兄は、普段家では出してない色気を垂れ流していて、それを見てしまった侍女達が色めき立っていた。


 クレインは、お酒を飲みながら謎のうさぎのぬいぐるみを抱きしめて、色っぽいため息を何度もついていた。


 正直妹としては、気持ち悪かった・・・。




 クレインは、朝から機嫌が悪かった。飲みすぎたせいもある。だからアルフォードが気遣うように水を運んでれたのに礼も言わず、用件だけ告げることにした。 

「閣下、今日の訓練の見学に妹がきます。この前のお礼にお菓子を作ったそうなので、もらってやってください」

 朝の御前会議の後戻ってきたアルフォードにクレインは告げた。

 

 アルフォードの身体がギクリと固まる。


「大したことはしていないからそんな礼は必要ない」

 慌てながらアルフォードはいうけれど、クレインは聞いてなかった。そう言われることも予想の範囲内だ。ただ少しイラつき、酷く冷めた声でアルフォードの言葉を止めた。

「わかってますよ。貴方は部下に無理やり妹を押し付けられて踊ってあげただけだとか、少し優しく微笑んであげたら愚かな妹は勘違いしてしまったとか。大丈夫ですよ、エリアルのあれも一過性のものでしょう。きっと貴方の独身主義なんて知らないだろうから、のぼせてるんですよ。夢見がちな年頃ですし、そのうちに目がさめるでしょう」

 酷くエリアルを侮蔑したような言葉を使う。

「いや、きっとおれが悪いんだろう」

 アルフォードはとっさにエリアルをかばう。無意識なんだろう、そんな切なそうな目を自分に向けるのは止めて欲しいとクレインはおもうが、そのまま表情を変えずに、目的の言葉をつむぐ。


「目が覚めないようなら王宮にでもやればいい。王太子妃様のお望みですし、そのほうがエリアルも安全かもしれない・・・」


 アルフォードには、クレインの言葉の意味がわからなかった。王宮がどんなに危険な場所かわかっているだろうに。

「安全?どういう意味だ」

 アルフォードは、エリアルを思い出す。

 金の髪は少しだけウェーブがかかっていて、柔らかそうだった。最初見たときの彼女の瞳の色は緑が深く、森のように静謐さをたたえていた。理性の勝った瞳は、アルフォードを見た瞬間、大きく見開いて、彼女が何かに驚いてるのをあらわしていた。

 それは、アルフォードが周りにいる男性より頭半分以上大きかったからだろう。

 昔からでかいでかいと言われてきたから特に何も思わなかったが、彼女がもらした「大きい」という言葉は、周りにいたアルフォードを囲む熟女達に違う意味のように囁かれて、アルフォードは少し困ってしまった。こんな少女にその意味で言われたらかなり卑猥だが、その瞳には純粋な驚きしかなかったし、困惑してるようだったから。


 挨拶をしたエリアルは、その後クレインに置いていかれて、困ったような顔をしながらも、アルフォードに気を使って、折角の舞踏会なのに壁の花になろうと身を翻した。その潔さに好感をもったから、その手をとった。

 その目が少し戸惑いに揺らめいて、アルフォードの姿を映したとき、アルフォードの中で今ももやもやしている感情が強烈に自分を支配した。

 アルフォードは昔から人より大きかったし、力が強かったから、自分の感情のままに力を揮うのを禁止されていたし、逆上しないようにコントロールするすべを教えられていた。だから、こんな気持ちになったことは戦以外ではなかったのだ。


 アルフォードは初めての感情に戸惑った。それでも、エリアルと一緒にいると嬉しいし、大事な部下の妹だからと、あくまで大人な態度をくずさず、紳士として振舞った。

 つもりだった。


 エリアルを迎えに来たクレインが変な顔をしてるのを見るまでは、それは成功してるつもりだったのに。クレインには気づかれているとわかっていた。

 常のアルフォードを知るだけの人間には気づかれないだろう。が、クレインは戦でのアルフォードを知っている。

 ばれてない振りをしてるのも、もしかしたら気づかれているかもしれない。


 それでも自分は決めたのだ。いざという時に護れないのなら、もうこれ以上大事な人をつくってはいけないと。



 アルフォードの葛藤を知ってるのか知らないのか、朝から不機嫌なクレインは手元にあった紙の束を無造作にアルフォードに投げ渡した。

 上司に対する態度ではない。アルフォードは据わった目のクレインに注意はしなかった。

 目を紙面に落とすと、クレインは吐き捨てるように言った。

「そういう意味ですよ」

 舞踏会の後、たった3日の間に、エリアルを求めて送られてきたお見合いの紙の束だ。

 上の何枚かは悪質で、エリアルが花嫁として嫁いできたときにグレンリズム家にしはらわれる対価が書いてあった。本来結婚に関して支払われる持参金は、花嫁側から送るものである。

 下はエリアルと同じくらいの男から、上は72歳まで。

「家も馬鹿にされたものです」

 莫大な金額はエリアルの身体を求めてのものだ。


 クレインが思っていた以上に、エリアルは目立ってしまったようだった。

「こんなことを・・・」

 低い声が一層凄みを増して口から漏れた。歯を噛みしめるような音が聞こえた。



 やっと、目覚めたか・・・とクレインは、少し身震いしながらいっそ冷酷に笑む。



 高貴なる野獣でも、黒い豹でもいい。きっとこの獣はエリアルを護るだろう。

 そしてこの獣になら、喰らい尽くされてもエリアルは文句は言わない。


 確信して、クレインは少し機嫌を直すのだった。


だれよりも登場率の高いクレイン。イメージがさだまってるようで定まりません・・・w。眼鏡でもかけさせてみようかしら・・・。

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