表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/443

第126話 夏休みと言えば補習……んなわけない!

 合宿が終わって、本格的に夏休みが始まった。

 夏休みといえども冒険者科。やることは多い。

 具体的には補習とか。


「やることが……やることが多い」

「プロテインが……プロテインが多い」


 うつろな目で蓮がカレーパンを食べている。

 その隣で聖弥くんは本日2杯目のプロテインを飲んでいた。


「人生の中で、こんなにプロテイン飲む事があるなんて思ってなかったよ」


 ノンフレーバーのプロテインを一気飲みする聖弥くんは、ちょっとしかめっ面だ。フレーバー物が得意じゃないんだってさ。


「俺はもうそれは慣れた」


 蓮のプロテインはバナナ味だ。鉄板の味だよね。

 ユズーズブートキャンプが始まったときから飲んでるから、確かに蓮はもう慣れてる。


「あーあ。夏休みになったらヤマトと遊びまくろうと思ってたのに、蓮たちだけじゃなくて私まで補習だなんてー」


 私もついついぼやきつつ、コンビーフとチーズのホットサンドをパクり。うん、塩味が効いてて美味しい。運動したときに食べたくなる味。

 今はただの補習であるので、蓮と聖弥くんは割とみっちり授業があるけど、私は特別プログラムなんだよね。


 具体的に言うと、片桐先生と安達先生のお説教……じゃなかった、講義をひとりで聴いて、刀をメインに使ってる技術教官の先生と実技の練習だ。



「柳川は強いし成績もいいから、本当だったらこういう補習は必要ないんだけどさ」


 今朝呼び出されて学校に来たら、木刀で自分の肩を叩きながら、面倒そうに安達先生が説明をしてくれた。ジャージ姿の安達先生の横で、片桐先生はいつもと同じワイシャツとスラックスだ。性格でてるなあ。


「Y quartet……つまり、柳川と安永と由井はちょっと特別すぎる。経験の積み重ねもなしに装備品の効果で一足飛びに強さを手に入れちゃってるからな。ステータスに比べて、実戦経験が少ない」

「安永はまだいいんだ。柳川に一度魔法当ててるし、フレンドリーファイアー蓮なんて不名誉なあだ名も付いてる。あいつは装備品で補正が付いた強さと、素の自分の強さを切り分けて考えてて、運用が慎重だ。こういうタイプはある意味安全」

「由井はまだ何もかも身につけてる途中だから、意識の刷り込みも今からできる。つまり問題は、元から強かった上にアホみたいなステ補正が付いちゃった……」

「私ですかァ? まさか私が3人の中で一番問題なんですか!?」


 安達先生と片桐先生に交互に話し掛けられ、とどめに「おまえが一番問題」と言われ、まさかの言葉に仰け反りましたね!

 こう言っちゃなんだけど、私クラスの中でも問題ない方だと思ってたし、Y quartetの中では飛び抜けて問題ないと思ってた!

 自分では、だけどね……。


「俺たちは普段の授業見てないけど、話は他の先生から聞いてる。フル装備の状態で間近で戦いを見たのも俺と片桐先生だしな」

「その上で、柳川の担任の大泉先生とも相談して、早めにやっとかないとってことになったんだ」

「あの……どういうところが問題なんですか?」


 恐る恐る尋ねてみると、私の前の先生ふたりは、ぴったり口を揃えた。


「強すぎるところが問題」



 つまり、こうだ。蓮はフル装備の自分と、素の自分の切り分けができてる。だからオンオフができて、ダンジョンでの行動という一点に限ってみると一番危なげない。


 聖弥くんはまだまだ全然ダメ。でも本人も「知らない」って自覚がある。自然と行動は慎重になるし、レア湧きの時の行動は一貫してリーダーの指示通りに動いていた。あいちゃんを激怒させた件なんか、「慎重すぎる行動」が引き起こしたわけだしね。


 私問題ないじゃん? ダンジョンでも危ない行動とかしてないよ? と思ったら。


「普通の高校1年生は、この時期にエルダーキメラを真っ二つにしない」と安達先生に突っ込まれた。

 それのどこが問題に!? と食い下がったら、私は素のステータスでできることの延長線上に、あの「エルダーキメラを真っ二つにする」が来ちゃってるのが問題なんだという。


「私だって真っ二つにするとは思ってませんでした。全力で斬りかかったら切れちゃっただけで」

「ほらそこ。素のステータスでも取れる行動が、フル装備をしたときにどこまでの効果があるかを把握し切れてないんだ。今回はたまたま勝ったから良かったけど、敵の防御力が見た目で判断できる以上にあったり、HPが異様に高かったりとかで倒し損ねたときがまずい」

「というわけで柳川への課題は、中級以降に出現するモンスターの知識を徹底的に覚えることと、フル装備で村雨丸を振って、どのくらいの攻撃力があるのかを自分の体で覚えてもらうことだ」

「うぐぅ……」


 確かに、村雨丸は実際にあまり使ってない。大山阿夫利ダンジョンでデストードを倒した時と、大涌谷ダンジョンに行ったとき、後は合宿のレア湧きで救助に行ったとき。――本当に少ないな!


 結局、午前は座学を2時間受けた後、村雨丸でいろんな物を切らされた。丸太やタイヤはともかくとして、メシャってなってる車とかあったけど、どこから持ってきたんだろうなあ。


 補習一日目の感想として、私はちょっとヤバいと気づいてしまった。

 だって、車が切れるんだもん。それは私がヤバいんじゃなくて、村雨丸がヤバいんだけどね。


 実技教官の先生と打ち合いもしたけど、ここでもちょっとまずいと気づいてしまった。

 どうも私の刀の振るい方は、太刀に向いてないみたいなんだ……。 


読んでいただきありがとうございます!

活動報告に「柴犬無双・登場人物紹介」を作りました。

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3242605/


面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ