表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/102

第8・5話:【閑話】調味料で小銭稼ぎ

注:本日2話目です

 さて、この世界に転移して困ったことはやはりいくつかある。

 トイレは水洗ではあるが、あくまで貴族の屋敷のみだった。

 それも、水路に用を足すような形の。

 いや、悪くはないんだけどね。

 まあ、ポットンスライム便所を最悪覚悟していたから、まだマシだけど。

 いやいや、ポットンスライム便所って実際はかなりマシな方で、壺にためて外に捨てるなんて中世っぽい時代背景なら当たり前だからね。

 某、竜の冒険でもところどこに壺があるのは、そういうことかなと思ったり。

 だから、水の流れた溝に用を足すシステムなんてのは、本当に感謝しかない。


 でも、となるとできれば陶器の便座くらいは用意したい。

 そして、川の流れのような溝に用を足すのは、いくら慣れたとはいえちょっと抵抗が。

 

 ジャストールでも貴族邸とその、近辺の上級階級の家や建物は上下水道があったが。

 基礎となる上下水道があるなら、そんなに大変な作業ではない。

 そもそも、現状では一階にしかトイレは作れないのだ。

 二階と三階に、壺トイレもあるが。

 いくら使用人が処理してくれるとはいえ、ちょっと流石に自分の出したものを運ばれるのも。

 まあ三階は当直の使用人の休憩部屋だから関係ないけど。

 住み込みの使用人は離れに住んでいて、そこも基本は1階にしかトイレがない。

 役職の低いものは上の階に住むことになる。

 

 我が家では防犯も兼ねて、子供の寝室は二階になっている。

 俺は流石に大丈夫だったが、ヘンリーとサリアはそれでトイレに苦労することになった。

 だから、トイレ問題は早急になんとかしないとと。


 下水の拡張と、2階から1階に向かう排水管の開発に全力を出した。

 俺の持つ資産の大半を使って。

 と同時に、陶器の水洗便所も。

 

 これは、陶器職人と揉めに揉めたな―……

 仕事に誇りを持つ、陶器の職人にトイレを作れなんて無礼以外の何者でもないもんな。

 それでも、俺が領主の息子だからと折れてくれたが。


 代わりに、磁器の情報を提供しておいた。

 かなり喜ばれたな。

 日本の焼き物の情報も、小出しに教えている。

 釉薬についても、あれこれと話し合った。

 自然釉のついた作品が、失敗作として割られていたが。

 備前焼とかを彷彿させる、味のある作品だと思ったんだけどなー。

 これを買い取りたいといったら、こんな恥でしかない作品を貴族様の屋敷で使われるなんて、罰でしかないと言われて困った。


 こうしてみると、焼き物職人からすれば、俺ってかなり嫌なお坊ちゃんだったかもしれない。

 その陶器の味の良さを理解してもらおうと、必死で説明したけどなかなか響かなくて。

 で、変色や照りの原因となる釉薬について、色々と情報を提供して……

 なんだかんだで、ジャストールは焼き物産業でも人気に下火がついてきている。


 献上品もちょいちょい貰える。

 コレクションに加えているが、父と母が俺が焼き物職人と仲が良く、いい品をもらえることをしきりに不思議がっていた。

 

 で、色々とインフラ整備や、技術開発にはお金がかかるわけだが。

 俺が自分がこの世界で暮らして困ったことを、解決するだけでもそれなりに金を産む商品に繋がる。


 その一つが、この世界の料理だ。

 例に漏らさず、料理は発展途上でしかない。

 パンが固い。

 と思ってたけど、柔らかいパンもあるにはあったが。

 ただ、レパートリーが少ないのと、基本は固いパンがメインなのは変わりない。


 菓子パンと、おかずパンを作るだけでもそれなりにブームは来た。

 そうなると、パン職人が勝手に技術を発展させていってくれるからな。

 フランスパンや、食パン、色々とアイデアだけ出して丸投げだ。


 サンドイッチと言えば、17世紀にサンドイッチ伯爵がという話が独り歩きしているが。

 パン類に物を挟んで食べる文化は、古代ローマからある。

 当然だ。

 誰だって思いつく食べ方だ。


 中世ヨーロッパだと、料理の下に古く固くなったパンをお皿代わりに使うのが有名かな?

 トレンチャーの代わりだから、このパンを上に乗せたものと一緒に食べるのではなく、最後に小腹が空いてたら食べる程度。

 お腹いっぱいなら、捨てるかペットの餌だ。

 気まぐれに、乞食に与えることもあったようだが……わざわざ、食後にそれをもって乞食のもとに、恵みにいくか?

 せいぜい、使用人に分け与えるくらいだろうけど、流石に皿代わりに使ったものは使用人も嫌がるだろう。


 いまじゃ、皿に残ったソースをパンで拭って食べるなんてのが、普通にフレンチでも行われているが。


「マヨネーズは販売しませんよ?」

「これは、絶対に売れると思うんだが……」

「日持ちしませんし、使い切る分しかうちでも作ってないじゃないですか」


 マヨネーズに絶賛ドハまり中の父が、どうにか商品化できないか模索している。

 無理だ。

 サルモネラも怖いし、冷蔵庫もない……こともなかったか。

 金持ちの家以外に冷蔵庫もないこの世界で、一般販売なんか。

 そもそも、消費期限の検証もできていないし、密閉容器の作成が難しい。

 ようやく、ゴムの木に近いものを見つけて、樹脂を固める研究中だというのに。

 いきなり、プラのチューブ容器なんて無理だ。

 石油すら、見つかっていない。


 現状、唐辛子を粉末にしたものに、いろいろな香辛料を混ぜた七味。

 山椒、芥子、陳皮(ミカンの皮)、麻の実、黒ゴマ、紫蘇は見つかったから唐辛子を入れて七味だな。

 これは、簡単だったから商品化したら、結構いい感じで売れている。

 買う人は選ぶが、ハマった人が買い続けてくれる。


 他には、柚子胡椒。

 これも、簡単だ。

 柚子と青唐辛子と塩があれば、できるからな。

 そしてこれは……驚くほど売れた。

 というか、中毒になってるんじゃないかなというほどに、連日のように求める人もいた。

 転売かなと思ったけど、行商人とか普通にいるからさして問題ないか。

 家族全員で、大ハマりしてるただの金持ちだった。


 ちなみに柚子唐辛子として販売している。

 胡椒使ってないからね。


 この世界の味付けは、基本が胡椒と塩。

 あとは香草とか素材で香り付けや、味付けをしているが。

 ただ品種改良があまり進んでいないせいで、トウモロコシも思ったほど甘くない。

 果物なんか酷いものだ。


 ライチなんかは普通に美味しくいただけるけど、リンゴはパサパサで味は薄いし、桃は固い。

 ブドウは酸っぱい。

 スイカは野菜みたい。

 ……これは一朝一夕ではできない。


 申し訳ない。

 アリスに頼んで、時空を超えて日本から持ってきてもらったこともある。

 スーパーでカットフルーツを買ってもらって。


「まったく……神様に人が貢がせるなんて、普通は逆なのよ」


 と笑いながら小言を言われた。


「あっ、苺用の練乳! お姉様、愛してる」


 白いキャップの赤いチューブの牛のマークのあれを見つけて、テンションただ上がりの俺はそんなのお構いなしに、アリスに思いっきり抱きついていた。

 我を忘れるくらい、素材が酷いものが多かった。


「はう、あっ……よ、喜んでもらえて嬉しいわ」


 アリスも喜んでたみたいで、何よりだ。


 しかし、農作物問題か。

 農協とかで種を買って持って来てもらったところで、それがF1種の場合だと毎年買わないといけない。

 となると、色々と面倒が起きるのは当然だ。

 ここで作った野菜や果物を買った人が、その種を取っておいて植えたところで同じものが必ずしもできるわけじゃないからな。

 F1種というのは、1代限りの完成品だ。

 色々と混ぜましたが、次の子は良いところだけを引き継ぐ、優秀な子供が生まれますよ。

 ただその子はそれ以外の遺伝子も持ってるので、その子供は持っている遺伝子の良いところ以外も、隔世遺伝で受け継ぐ可能性がありますよといった感じかな?


 うーん、ここは農家の人に、品種改良の概念を伝えて、長期スパンで試してもらっている。

 まずは実の大きいもの同士を掛け合わせる方法。

 甘みが強いもの同士を掛け合わせる方法。

 水分が多いもの同士を掛け合わせる方法。

 または、それらを混ぜる方法。

 などなど。

 

 すぐには結果がでない。


 調味料はすぐに結果が出るけど。

 いまは、色々と調味料の元になる植物を集めてもらっている段階。

 クミンや、コリアンダー、ナツメグ、シナモン、クローブ、ターメリック、サフラン、オレガノ、エシャロット、オールスパイス、カモミール、カルダモン、カレーリーフ、くちなし、甘草、レモングラス……

 あげたらキリがない。

 

 ミントや、レモン、ジンジャー、ローズマリーなんかは、普通に見つかったし。

 庭にあるものもあった。


 ワサビは……厳しそうだな。

 ただ山わさびが見つかったのは、僥倖だ。

 山わさび、西洋わさび、ホースラディッシュと呼ばれる東ヨーロッパ原産の畑のワサビ。

 ジャストール領の北側で自生しているのを、収穫していまは畑で育てている。

 全然いい。

 そして、これをすりおろしたものも人気が出た。


 味噌は当分むりだ。

 あまり、周囲が興味を示してくれない、


 チーズはあるのに、味噌はない。

 まあ、あるわけないか。

 発酵食品はあるのだから、これも下地はあるだろう。 

 ただ、製造工程を聞いただけで、断られることが多い。

 味噌の作り方は、ここに来る可能性があったのでしっかりと調べてきたのだが。


 しかたなく設備や、職人を自前で用意しないといけない。

 ただまだ、建物ができてないだけで。

 そういった意味で、当分は先延ばしになるだろう。

 そのうち、納豆と醤油も……


 ということで、ジャストール領発の調味料も、これまた貴重な収入源となってきている。

 個人的にも……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ