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【アニメ化決定!】アラフォー男の異世界通販生活  作者: 朝倉一二三


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236話 石化!


 リッチを倒してダンジョンを攻略したと思ったら、どこかに飛ばされた。

 飛ばされた暗い通路は、ダンジョンになっていたようで、スケルトンなどと遭遇。

 だいぶこちらの戦力は減ってしまったのだが、このぐらいならなんとかなる。

 飛ばされたのは俺とアネモネ、そして獣人たち。

 アキラやアマランサス、森猫たちとははぐれてしまった。

 俺が転移先から戻ってこないことに気がついて、彼らも非常事態だと認識しただろう。

 すぐさま、サクラに引き返すに違いない。


 魔物を軽く捻って外に出たのだが、どこかの山の麓らしい。

 ここが王国内なら帰れると思うのだが、隣の帝国や共和国の可能性もある。

 帝国なら王国とそんなに変わらない印象だったし、ソバナから王国側に戻れるが……。

 ここが共和国だったら、どうするか……。

 国の制度も文化も違う国からどうやって王国に戻る?

 ――それが問題だ。


 悩むのはあと。

 そろそろ日が傾く頃だ。

 キャンプの準備を始めなくてはならない。


「今日はここに泊まるにゃ?」

「そうだな、今から動けないし――とりあえず周囲の確認だけしてみるか」

 俺はアイテムBOXからドローンを取り出し、準備が完了するとすぐに発進させた。

 周りは全部未開の森。後ろは山脈。

 これだけじゃ、いったいどこなのかさっぱりと解らん。

 ドローンでの周囲の確認で解ったことは、約4km四方にはなにもないってことだ。


「ケンイチ! 周りを見てきてもいいかにゃ?」「旦那! 俺も俺も!」

 なんだか、獣人たちがそわそわしている。

 見たこともない新しい土地なので、探検してみたいのだろうか?

 それに獣人たちなら迷子になることもあるまい。

 彼女たちは自分たちのにおいをたどってキャンプに戻ってこられるからな。


「ああ、いいぞ。周囲に魔物がいないか確かめてきてくれ」

「解ったにゃ!」「行くぜ!」

 彼女たちに武器と装備を渡す。

 武器は剣とコンパウンドボウ、そしてクロスボウといつもの装備だ。

 索敵は獣人たちの専門分野だ。

 只人よりも速く駆けて、スタミナも山盛り。

 においを辿れば迷うこともない。


「気をつけろよ」

「うにゃー!」「俺はやるぜ!」

 武器を持った獣人たちが、あっという間に森の中に消えていった。


「ふう……こちらは飯の用意でもするか」

「うん!」

 久々に、アネモネにパンを焼いてもらう。

 彼女はなんだか嬉しそうだ。


「遭難してるんだが怖くはないのか?」

「うん、ケンイチと一緒だからへーき!」

 それならいいが、俺の仕事とヘマで巻き込んでしまったようなもんだからなぁ。

 このまま帰れなかったらどうしよう。


 ――とはいえ、同じ大陸にいる限り、アイテムBOXとシャングリ・ラにあるものを使えば、絶対に帰れるはずだけどな。

 森は車で走り、川や湖はボートで進む。

 一番心配な水や食料にも困らないわけだし。

 病気などもアネモネの魔法と俺の祝福の力があるし。

 大丈夫だとはいえ、油断はできないけどな。

 ドラゴンでも出てこない限りは――出てこないよな?


 テーブルを出して飯の用意をしていると、ミャレーとニャメナが帰ってきた。

 手に大きな鳥の首を握っている。


「これで唐揚げ作ってにゃ」「俺も!」

「おお、いいぞ」

 獣人たちに鳥を捌いてもらい、唐揚げにする。

 ニャメナにはビールを出してやった。

 怖いの我慢して彼女は頑張ったしな。


「うみゃー! うみゃーで!」「か~! 唐揚げに、このエールが合うんだよなぁ!」

 ミャレーが唐揚げを食べて、ニャメナが美味そうにビールを飲んでいる。

 しかし、アキラがいないと随分と静かだな。


「アキラがいないと静かだね」

「あはは、アネモネもそう思ったのか。俺も、彼がいるとどうしてもツッコミを入れちゃうしなぁ……」

 飯が食い終わる頃には辺りが暗くなる。

 ダンジョンの出口だった所に、コンテナハウスを出した。

 中の敵は全滅させたので、後ろから敵がこないことは解っている。


 一応念の為、以前に使った丸太製の「入」型の障害も設置してみた。

 未開の土地でなにがあるか解らんし、念には念を入れる。

 いつも言っているが臆病な者が勝つのだ。


 久々に4人で寝るのだが、その前に獣人たちにブラシをかけてやることにした。

 いつもは森猫たちが一緒だったが、今日からはしばらくいない。

 裸になった獣人たちが俺に絡みついてスリスリしてくる。

 その姿は大きな猫のようだ。

 ニャメナを掴まえると、膝の上に乗せてブラシでなでる。


「さて、アキラたちは無事に帰れたかなぁ?」

「アキラとアマランサスがいれば、大丈夫にゃ」「あっああっ、そ、そうだよ、旦那」

 ニャメナの身体にブラシをかけてやる度に、彼女が尻尾を立てて身体をくねらせている。


「2人とも強いしね」

「アネモネの言うとおりだな」

 聖騎士の力を内包している元王妃と、帝国のドラゴンスレイヤー ――最強タッグだ。


「それに、魔道具がついている船もあるし、アキラには鉄の召喚獣もいるにゃ」

「湖に船を置いたままにしていたのは正解だったなぁ」

 いや、強敵にあったら、すぐに逃げるつもりだったのだ。

 まさか閉じ込められて無理やり戦わされる羽目になるとは……。


「ニャメナ、山の形とか見たか?」

「あ、あっ……み、見たけど、解らなかったよ」

 彼女の身体がプルプルと震えているので、頭をなでてやる。

 獣人たちはキスをしない。

 相手が只人だと真似をしてすることもあるのだが、獣人同士だとそういう文化がない。

 その代わり、よくにおいを嗅いでクンカクンカする。


「そうか」

 以前、転移門で飛ばされたときは、彼女が山の形で位置を特定してくれた。

 見たことがない山ばかりということは、やっぱり王国内ではないのか。


「山の上まで登れれば、かなり見渡せるんだがなぁ……」

「そんなことができるの?」

 アネモネが興味津々なのだが。


「う~ん、無理だろうなぁ。山頂は氷点下で雪が降っているし」

「氷点下ってなに?」

「え~と、氷ができるより寒いってこと」

「そんなに寒かったら死んじゃうかも……」

 東西どちらの山脈も、万年雪で覆われていることから、6000~7000m級だと思われる。

 実際、王都とソバナをつなぐベロニカ峡谷などの限られた場所からしか山脈を越えることができない。

 それでも海に近くなれば山脈も低くなる。

 ここから見る限りでは、そういった地形は見受けられず、海の近くではないらしい。


「しかも、高い山ってのは空気が薄いんだ」

「そうなのきゃ?」

「ああ、かなり息苦しくなるし、人によっては病気になって動けなくなることもある」

「へぇ~」

「凍傷も怖いぞ。手足が凍って腐って落ちる」

「みゃ!」

 その話を聞いたミャレーの尻尾が毛羽立ってふさふさになった。


「そ、そんなの絶対に無理じゃんか……」

 ニャメナがちょっとぐったりしてきたようにつぶやく。


「だから山越えをするやつがいないんだよ」

「トラ公! そろそろ代わるにゃ!」

 今度は、ミャレーにブラシかけしてやる。


「うにゃ~」

 解らないながらも、徐々にパズルが集まってくるな。

 その後はベッドに入ると4人で包まって寝た。


 ------◇◇◇------


 ――わけのわからん場所に飛ばされて次の日。

 いつもと同じような朝だが、まったく知らない場所。

 皆は普段と変わらんが、俺だけがプレッシャーを感じているのか。

 一応、年長者だし貴族だし、皆を守らねば……。


 アキラたちはサクラに戻っただろうか?

 まだ早いか? もしかして俺たちが戻ってくるかもしれないと待っているだろうか?

 サクラに戻っていれば、ことの顛末をリリスやプリムラに話してくれるだろう。

 心配だろうが、転移門で飛ばされるという事態になにもできない。


 皆で朝食のグラノーラを食べながら話す。


「ケンイチ、今日はどうするにゃ?」

「ここにいても仕方ない。西に移動して人里を探す。そうすれば、ここがどこだか解るだろう」

「なかったら?」

 アネモネがグラノーラをスプーンで掬ったまま、こちらを見ている。


「ここに戻ってきて、しばらく暮らすしかないなぁ。だってどうしようもできないし」

「アキラたちが転移門を使って助けに来てくれるんじゃないかい? 旦那」

「いやぁ、ここに来ても帰れないのだから、二重遭難になるだろうよ」

 アキラたちは、今俺たちがどうなっているか、まったく解らない状態。

 俺たちは転移に失敗して死ぬ可能性だってあった。

 暗闇の中でアネモネが言った「いしのなかにいる」は冗談でもなんでもなかったのだ。

 死ぬ危険性があるのに、再度転移門を使って俺たちを追ってくるのは無謀過ぎる。


「でも、人数が多いほうが帰れるかも……」

 アネモネがつぶやく。


「そうだけど、そんな危険を冒してくれとは、アキラたちには言えないなぁ……」

 飯を食い終わると、コンテナハウスや障害物を収納して出発の準備をする。

 移動した所に戻ってこられるように、ピンク色のスプレーで印を付けていこう。


「アキラの旦那たちがやってきても、これなら解るかもな」

「まぁ、それも兼ねているが……」

 正直期待はしていない。

 俺としても、そんな危険は冒してほしくないし。


 アイテムBOXからSUV車を出した。

 燃料の軽油はアイテムBOXの中にたっぷりとあるし、このままでも数千kmは走れる。

 それだけ走れば、どこかに着くだろう。


「ケンイチ、ウチは走っていくにゃ!」「旦那、俺も!」

 獣人たちは走って森を進むようだ。

 確かに森の中なら、彼女たちの脚のほうが速い。

 それに、いつもよりすごく元気がいい。

 俺のせいでこんなことになったのに、嫌な顔をせずについてきてくれるのだから、ありがたい。

 彼女たちのためにも、なんとしてでもサクラに帰らなくては。


 俺とアネモネで車に乗り込むと、獣人たちのあとを追って出発した。

 この車の天井には方位磁石がついている。

 メーターが2つ並んでいて、左側が方位磁石だ。

 GPSナビの時代に方位磁石なんて――と嫌味を言われたりしていたのだが、こういうときにはありがたい。

 メーカーの人も異世界で役に立つからといって、装備したものではないだろうが。


 右側のメーターは、高度計らしい。

 値はほぼゼロなので、ここが低地であるのは間違いない。

 異世界の気圧が元世界と違っていたりしたら役に立たないのだが――この世界に来てから気圧の違いを実感したことはないので、さほど変わらないと思われる。


 天井の方位磁石を見ながら真西に進む。

 途中、500mほど進んだら、窓からピンクのスプレーを出して木に印をつけていく。

 これなら迷うことはないだろう。

 まぁ、獣人たちがいるからにおいを辿ってもらえばいいのだが――いや、彼女たちになにかトラブルがあったりする最悪の展開も想定しなければ。

 ビビリのほうが長生きするのだ。


 途中の森で、定番の敵である黒狼とキバ熊を倒して車は進む。

 さすがに俺みたいなオッサンでも経験値が貯まるんだなぁ。

 魔物退治も手慣れてきたが、強くなったと思ったときが一番危ない。

 高名の木登り――車の運転とかも慣れてきたときが一番危ないっていうのが定説。

 注意しなければ。


 時速20kmで5時間――つまり100km走って昼食にした。

 たまにドローンで周囲を確認するが見事に森しかない。

 途中の森の中に綺麗な花とかもあるのだが、見ている余裕がない。


「にゃははは! 行けども行けども、なにもないにゃ!」「まったくだぜ、ははは」

 獣人たちがパンを食べ、コーヒー牛乳を飲みながら大笑いしている。


「お前ら元気だな」

「こんな大きな森は久しぶりだにゃ」

「アネモネは大丈夫か?」

「全然平気!」

 皆が明るいのはいいことだ。


「しかし、これって旦那がいないとマジで即詰みだったな、あはは」

 ニャメナが上機嫌そうに笑う。


「獣人たちなら獲物も取れるし、逃げ足も速い。詰むってことはないだろう」

「まぁ、旦那の言うとおり、只人よりはしぶといかもな」「そうだにゃ」


 昼飯を食い終わったので、再び出発。

 しばらく進むと――途中で小高い丘に遭遇した。


「ケンイチ、どうするにゃ? 回り道するにゃ?」

 獣人たちの脚ならどうってことはないと思うが、俺とアネモネには少々キツイ。

 ドローンを飛ばして周囲を見るが、結構大きな丘であり、回り道すると時間がかかりそう。


「このぐらいなら、こいつで上れると思う」

 俺は鉄の召喚獣を指差した。


「本当かにゃ?」「大丈夫かい?」

「まぁ、駄目だったらしょうがない。迂回しよう」

「俺たちが、旦那たちを担いで登ってもいいぜ?」

「そんなことさせられないよ。まぁ、多分大丈夫だ」

 まっすぐに登れなくても、斜めにジグザグに登ればいけるはず。

 ラ○クルをデフロックすると、斜面を登り始めた。

 フロントガラスに山が迫ってくる――かなりの急斜面だがいける。

 崖状になっている場所などは避けて斜めに走り、登れる場所を探す。


「すごいにゃー! こんな所も登れるのにゃ!?」「そいつはすげぇやつだな」

 獣人たちには少し先行してもらい、頂上部を調べてもらうことにした。


「クンカクンカ、鳥のにおいがするにゃ!」「これは大物だぜ?!」

「トラ公行くにゃ!」「おうよ!」

 どうやら鳥のにおいがするらしく、獣人たちが張り切って先行を始めた。

 また鳥を獲って、唐揚げにするつもりなのだろうか?


 斜面が緩やかになり、もう少しで登り終わる――という所で、獣人たちが慌てて戻ってきた。


「ふぎゃー!」「旦那! なんかいた! なんかいたぁ!」

「なんかってなんだ? 鳥じゃないのか?」

 そう思ったのだが、丘の頂上部から白いものがやってきた。

 白くて巨大ななにか。


「ちょっとまてぇ! 魔物か?! 引き連れてくるなよ! アネモネ掴まれ!」

「うん!」

 獣人たちからすれば、群れのボスは俺。

 一番強いやつに戦って欲しいということなのだろう。

 彼女たちには偵察などをやってもらっているので、役割分担ともいえるのだが……。


 俺はアクセルを踏み込むと急発進したのだが、ローギアでしかもデフロックしているからそんなにはスピードは出せない。

 斜面で木を避けながら車で走る俺たちの前に現れたのは、白くて巨大な鳥。

 確かに鳥だが、なんか鶏っぽい。


「クワァァァ!」

 もしかして、あいつの縄張りに入ってしまったのかもしれない。

 魔物から逃げるよう回り込みながら斜面を登ると、そいつが俺たちの車を追いかけてきた。

 鳥は鳥なのだが、尻がおかしい。


「ケンイチ! お尻から蛇が出てる! 何あれ?!」

 アネモネが鳥の尻を指差している。


「え?! もしかしてコカトリス?!」

 コカトリスだったら、ヤバい。

 こいつって石化のガスかなにかを吐くんじゃなかったか?

 斜面を登りきり、頂上部を目指す。


「クワァァァ!」

 車でジグザグに走る俺たちに、コカトリスの口から白いものが噴き出された。


「おわぁぁ!」

 慌ててハンドルを切ると、白い霧が当たった場所にあった木や草などが白く変色している。

 すげぇぇ! 車の高張力鋼板も、石化するんだろうか?

 それはそれで試してみたいような――いや、そんなことを言っている場合ではない。


 頂上部付近は木が少なく走りやすい――というかなにも生えていない不毛の地。

 そこに石を組んだようななにかがあり、大きな鳥の羽などが見える。


「あ! もしかして、やつの巣か?!」

 ここら一帯は、コカトリスのガスのせいで、不毛の地と化しているのだろう。

 大きな石の巣を回り込むようにして、その背後に隠れた。


「アネモネ、ここらへんは木が生えていない。ぶっ飛ばしてもいいぞ」

 俺たちの姿が見えなくなったことで探しているのだろう。

 魔物の足音が止まっている。

 獣人たちも俺たちを追ってきていなかったので、近くにはいないはず。

 大丈夫だ。


「解った! むー!」

 魔物のガスを食らっても車体が石化するだけで、生身よりは耐久性はマシだろう。

 車内で発動した魔法の青い光が、中に溢れる。

 巣の陰に隠れ――その向こうにいるであろうコカトリスへの、魔法による当てずっぽうの攻撃だ。


爆裂魔法(エクスプロージョン)!」

 石の壁の向こうで、青い光が瞬き赤い爆炎に姿を変える。

 振動で車が揺さぶられて、爆発の衝撃波で石の壁が崩れると、ボンネットとフロントガラスを直撃した。


「うわ!」

 目の前が真っ白になる――フロントガラスが割れたのだ。

 続いて吹き返しの風が轟々と爆炎の中心に流れていくと、ガタガタと揺れるハンドルに必死にしがみつく。

 轟音は、しばらくすると静かになった。

 物音は聞こえない。


「ふう!」

 車を降りると、そっと石の壁から辺りを窺う。

 敵がいた付近には5mほどのクレーターができており、土を被ったコカトリスが埋まっていた。

 直撃はしなかったので、まだ生きているようだ。

 止めを刺さなくては。


「コ○ツ戦闘バージョン召喚!」

 地響きを立てて、黄色い重機が落ちてきたので、運転席に乗り込むとエンジンを始動。

 レバーを操作すると、アームの先端についたアダマンタイトの巨大な刃を振り上げ、コカトリスの白いクビに狙いを定めた。


「コ○ツ断頭断! それは、愛と哀しみに満ちた死の執行人! 相手は死ぬ!」

 大量の土を巻き上げて、振り降ろされた切っ先が地面にめり込む。

 クビを両断されたコカトリスは、残った身体が突然デタラメな動きを始めたが、すぐに事切れた。


「ふう……これで大丈夫だろう」

 俺は重機の運転席で仰け反ると、天井を見た。

 一応、高い場所から周囲を確認するが、なにもいない。

 実はつがいでもう1匹いるとか、そういうのは勘弁な。


「ケンイチ! 大丈夫?!」

 重機の下にアネモネがやってきた。


「ああ、大丈夫だ」

 さて、獣人たちはどこに行ったか。

 どこかに隠れていると思うんだが……。

 とりあえず、アネモネの魔法には巻き込まれていなかったようで一安心。


 重機から降りると、アイテムBOXからメガホンスピーカーを取り出して呼びかけた。


『お~い! 魔物は倒したぞ~、ミャレーとニャメナ出てこ~い!』

 待っていると、すぐに獣人たちがやってきた。

 姿勢を低くして耳を伏せ、周りをキョロキョロ見回している。


「だ、大丈夫にゃ?」「旦那……」

「大丈夫だ。そこに転がっている」

 俺はクビが離れた白い魔物の身体を指差すと、獣人たちを抱き寄せた。

 2人とも、カタカタと震えているのが解る。

 どうも獣人たちは、突発的な遭遇に弱い気がするな。

 彼女たちの毛皮をなでて、落ち着かせてから車の所にいく。


「ミャレーとニャメナは周囲を警戒」

「解ったにゃ」「解った……」

 2人とも、さっきまでのハイテンションが嘘のように、しょんぼりとしてしまった。

 逃げてなにもできなかったのを気にしているようだ。


 ボロボロになってしまった車をなでる。


「あ~、ついにアカンかぁ」

 フロントガラスは割れて、ボンネットはボコボコになってしまった。

 まぁ、これでも走れるけど、フロントガラスがないのはまずいな。

 ボディの一部に、コカトリスの息吹を浴びたようで、白く変色している。

 その部分は石にはなっていないようだが、指で握るとポロポロと崩れてしまう。


「召喚獣、死んじゃった?」

「はは、大丈夫だよ」

 俺は、車をアイテムBOXに収納した。

 ボコボコでもちょい乗りとかで使えるだろう。


 車はないと困るから、新しいのを買うか……。

 数々の冒険でボロボロになっていたが、今日のが止めになってしまった。

 シャングリ・ラで中古車を検索する。

 車種はやっぱり、ラ○クル――なにせ実績が違う。

 白いボディで、10万km走った中古に目が止まった。

 ちょっとリフトアップしており、フロントにカンガルーバンパーが装備されている。

 ロードキルも多いし、これは欲しい装備。

 年式は古いが値段は200万円也。


「ポチッとな」

 躊躇はないし、金の心配をしている場合ではない。

 なにせ、これがないと帰れないのだから。

 白いボディが落ちてきたので、早速エンジンをかけてみる。

 ディーゼルエンジンのキンキン音が響く――問題ない。


「ちょっと違う……」

 新しいラ○クルを見て、アネモネがつぶやいた。


「直して、強化したのを呼び出したんだ。大丈夫だよ」

 どうも、アネモネの魔法で召喚獣を傷つけてしまったと思っているらしい。


「うん」

 燃料が入っていないので、バイオディーゼル燃料を補給する。

 買った車ってのはどうして満タンにしてくれないのか。

 そういうサービスの所もあるけどさ。

 普通は入ってないんだよねぇ……。


 満タンになったので、各部をチェックしてアイテムBOXに収納した。

 大丈夫だ。


 今日の移動はここで終わりにして、ここにキャンプを張ることにした。

 ここがコカトリスの縄張りだと解っている魔物は、ここにやってこないだろう。

 安全地帯になっていると思う。


 ひとまず落ち着こう。

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