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【アニメ化決定!】アラフォー男の異世界通販生活  作者: 朝倉一二三


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115話 家族と再会


 帝国から竜殺しという魔導師を亡命させた。その正体はアキラという日本人。

 そう、俺と同じように元世界から転移してきた人間だ。それと彼の連れである夜烏のレイランという魔導師。

 その他3人、計5人が帝国から亡命した。

 亡命といっても、元世界のような大事ではない。国境もアバウトで警備も緩い。

 ここは航空機も監視カメラ等もない世界、塀を乗り越えて簡単に亡命が成功した。

 ただ、チートもなしで普通の人間がこれを行おうとすれば、それなりの危険が伴うに違いない。


 ドワーフの店で大剣を受け取り、再び大通りに出る。

 もしかしたら、ドワーフ達も俺たちの家の近くに来てくれるという話だ。

 まだ決定ではないが、拝領して貴族になるとなれば、あの場所に屋敷も建てないとダメだろうし――そうなれば周りの森も開墾されて、人々が集まってくる。

 そうなれば街ができるってわけだ。う~ん信じられないが本当の話。

 俺達は車に乗り込むと公爵邸へ向かう。


 そして数日ぶりに家族の下へ帰ってきたが――公爵邸の前には獣人達が集まっていた。

 また森猫目当てだろう。車のクラクションを鳴らし、窓から顔を出して獣人達にどいてもらう。

 お堀に架かった橋を渡って、公爵邸の立派な門まで辿り着いた。


「やぁ、ただいま戻りましたよ」

 門番に挨拶すると、開門してくれた。

 ハンドルを左に切ると、家を設置している場所へ向かう。

 皆は、外に置いてあるテーブルに座っていた。公爵の息子もいるようだが、テーブルで何かをしているようだ。

 俺が置いていった、バックギャモンをやっているのかもしれない。


「お~い!」

「あ、ケンイチが帰ってきたにゃ」

「ほらな、旦那なら大丈夫だって言ったろ?」

「そう言うトラ公が一番心配してたにゃ」

「うっ!」

 そんな会話が聞こえてきたが、やはり俺が遅かったので、心配していたようだ。

 車を止めてアキラたちを降ろした。


「「ケンイチ~!」」

 アネモネと王女が俺に抱きついてきた。


「なんで、リリスも抱きつくの?」

「妾の聖騎士じゃ。抱きついて当然じゃろ?」

「リリス様、あらぬ噂が立ちますので……」

「ケンイチ! 妾がこんな旅をして、何も困ることなく楽しかったのは、其方がいたからじゃ!」

 そりゃまぁ、俺のシャングリ・ラとアイテムBOXがあれば、困る事はないからな。

 そして、ベルもやってきて、俺の足下へスリスリと身体をくねらせ擦り付けまくっている。


「其方がいなくなった途端に妾を襲ってきたのは、尽きることのない不安じゃ! もう其方とは離れとうない!」

「そんな事を仰られても、お城へ帰ったら……」

 だが、王女は俺にギューッと抱きついたままだ。


「リリス様、それは置いといて、こちらをお願いいたします」

 王女は俺が連れてきた客を見て、抱きついていた手を離した。


「まさかケンイチ、この者たちが……?」

「森猫様にゃー!」

 ベルの前に跪いたミャアを見てミャレーが叫んだ。


「ぎゃー!? ケンイチ! なんにゃ? その女は!?」

「落ち着けミャレー。この獣人はこちらの連れ合いだから。俺は関係ない」

「ほ、ほんとかにゃ?」

 訝しむミャレーは放置して、王女にアキラ達を紹介する。


「皆の者、控えおろう! この御方こそ、カダン王国王女、リリス・ララ・カダン様であらせられる。そしてそちらは、レインリリー公爵公子様」


「「「はは~っ」」」

 アキラ達は膝をついて平伏し、自己紹介を始めた。


「私が、帝国近衛魔導師、アキラでございます」

「リリス様。彼が『竜殺し』でございますよ」

 王女と公爵の息子が驚く。


「な、なんと! 本当に、亡命させたのかぇ?」

「はい――そして、そちらが……」

 続いて、レイランさんを紹介した。セーターでパツンパツンになった爆乳に、公爵の息子の視線が釘付けだ。


「同じく、帝国魔導師のレイランでございます」

 その言葉に、ニャメナが反応した。


「えっ!? レイランって、もしかして『夜烏のレイラン』かい? 旦那!?」

「そうだよ、ニャメナ」

「ええ~っ!? 旦那! そ、そんな大物まで引っ張ってきたのかい?」

 まぁ、そのぐらい夜烏のレイランってのは有名な魔導師なのだ。


「まぁな」

「なんと、夜烏のレイランまで……其方どうやって?」

「私も、まさかと思ったのですが――彼女は、そちらのアキラの連れ合いだったのです」

「なんと……」

 他の3人も自己紹介をした。


「ミャアにゃ」

「私は、ニーゼルレーゲンシュタットの騎士。クレメンティーナ・フォン・シュトラレンダークロイツでございます」

「私は、ミダル・ヴァッサーファルシュタットの貴族。アンネローゼ・フォン・アウンタウゼンアーマイゼでございます」

「残りの2人は、帝国貴族かぇ。王国へようこそ参られた。其方達を歓迎する」

 女性陣の自己紹介を聞いて俺は驚いた。確かに商人の女房にしては、気品がありすぎる。


「えっ!? アンネローゼさんって、本当に元貴族なの? なんで商人の嫁に?」

「それは後で説明するわ」

 アキラの様子では、何か理由があるようだ。

 それはさて置き――とりあえずお客様の宿泊の用意をしてもらわないと。


「それで公子様。こちらの面々の滞在のために、公爵邸にお部屋をご用意していただきたいのですが――よろしいでしょうか?」

「もちろんです! すぐに用意させましょう」

 公爵の息子がすぐに公爵邸のメイドを集めて準備を始めた。

 それを聞いた女性陣は、ホッとした表情をしている。逃亡生活に疲れた身体を休めて、風呂に入って柔らかなベッドで休みたいだろう。


「ケンイチの獣人にも黒い子がいるんだな」

「語尾もニャだしな」

「俺達風に言えば――キャラが被ってる」

「だが、こっちのミャレーは腹が白いぞ。それによく見ると黒毛じゃなくて、縞模様なんだが」

「あ、本当だな。黒い中に縞模様が入ってる――へぇぇ」

 舐めるように見ているアキラの視線に、ミャレーがかなり警戒している。

 ミャアは全身真っ黒の黒猫なのだが、ミャレーは腹が白い。


「旦那達――このクロ助は腹は白いけど、腹の中は真っ黒だぜ?」

「にゃはは」

 ミャレーは笑っていて否定はしない。自分でも腹が黒いと自覚しているのだろうか?


「ケンイチ、あの小屋がお前達の家なのか?」

「ああ、アイテムBOXへ入れられるように作ったから、どこへでも持ち運びが出来る」

「荷物や家具はアイテムBOXに入っているから、あれでも十分ってわけだ……」

 アキラは俺の家を見て、顎に手をやって唸っている。彼のアイテムBOXでは、あの家は入らない。


「その通り」

「ケンイチ、俺はこっちへ泊まらせてもらうぜ」

「ええ? あの家は俺の家族で一杯だから、テントと寝袋になってしまうけど」

「それで、十分だよ。貴族の屋敷のキンキラキンのベッドとか、どうにも性に合わねぇ」

「まぁ、俺もそうだよ。日本にいた時もずっとせんべい布団だったし……」

「だが、そろそろ風呂には入りたいところだな……」

 アキラに、家の風呂のことを説明する。


「なに? 風呂まであるのか?」

「そっちの小さい小屋を風呂場として使っている。湯船は日本でよくあるユニットバスみたいなやつだけど……」

「十分だよ。お湯は魔法で沸かしているのか?」

「ああ」

「俺も、地面に穴を掘って、水を引き込んで風呂に入ったりしたぜ、あはは」

 アキラもかなり苦労しているようだ。だが、どんな状況でも風呂に入ってしまうのが日本人。

 知恵を絞ってなんとかしてしまうのだ。


「アネモネ~はい! 新しい魔導書だ」

「わぁ~!」

 俺から聖なる盾(プロテクション)の魔導書を貰って、アネモネがはしゃいでいる。


「ケンイチ。その子が本妻か? このロリコン伯爵」

「冗談はよせ。本妻はこっちに決まってるだろ。なぁ、お母さん」

「にゃー」

 俺の足下にベルがやってきたので、光る黒い毛皮をなでなでしてやる。


「マジか……ケ、ケモナーレベルが高すぎる……」

「ケンイチ達が、訳の分からない話をしてるにゃ」

「あの旦那も、うちの旦那と同郷って話だから、故郷訛りなんだろ」

 アキラと一緒にベルの背中を撫でていると――。

 俺とアキラの、冗談とも本気とも付かない会話に呆れたようなプリムラがやってきた。


「もうケンイチ! 洒落にならないような会話はやめてください」

「こちらが、マジの本妻のプリムラだ。親子揃って商売の達人で、将来的には王国のトップレベルに君臨すると思うぞ」

「すげ~! こっちもレベル高えな」

「ふふふ――さすがにレイランさんには敵わんと思うが、こちらのおっぱいも、なかなかのもんだろ」

「うん、大したもんだ」

 ジロジロと胸を見るオッサン2人の視線に耐えられなくなったのか、プリムラが胸を隠して悲鳴を上げた。


「きゃあ! もう、いい加減にしてください!」

「オッサンだにゃ」

「オッサンがいるぜ」

 だってオッサンなんだから、しょうがないだろ。


「アキラ、レイランからオッサンっぽいネタは止めるように言われてたにゃ」

「そう言うなミャア。オッサンは2人揃うとオッサンが捗ってイカンよな」

「まぁ、どうしてもな――歳も同じぐらいだろうし。アキラは何歳なんだ?」

「36で転移してきて、2年経ったから38……だろ」

「じゃあ同期だわ」

 2年も死線を彷徨ったんじゃ、やってられないよな。

 ニャメナに堀の外にいる獣人達の事を聞く。


「ニャメナ、外にいる獣人達はずっといるのか?」

「ああ、たまにクロ助が、森猫を連れて挨拶に行っているけど、全然減らねぇ」

「賽銭も、こんなに溜まったにゃ」

 彼女達が見せてくれたのは、樽一杯に溜まった小銭の山。樽は、プリムラが調達してくれたらしい。

 それを見たアキラがつぶやく。


「おほ~、獣人が森猫を崇めているのは知ってたけど――信者と書いて儲かるねぇ」

「俺と同じ事を言ってるな」

 俺とアキラの会話に王女が割って入った。


「其方達、森猫で小銭を集めるのは、程々にするがよいぞ。国から邪教認定されると、討伐隊が組織される故」

「おほっ! くわばらくわばら……」

 アキラが肩をすくめているが、『くわばら』もここでは通じないだろうな。

 アキラと話をしていると、公爵の息子がメイドを連れて戻ってきた。


「皆様、部屋の用意が整いました」

「それではリリス様、聴取をなさいますよね?」

 俺の言葉に、王女がちょっと困った顔をしている。


「妾は其方と……」

「女性の相手は女性の方がよろしいでしょう? 女性故、お話し出来る事や、お聞き出来る事もありましょうし」

「まぁ――それはそうじゃが……」

「アキラの話は、私が聞きますので」

「其方等、妾を置いて逃げたりはせぬだろうの?」

 また始まった。俺が同郷のアキラと一緒に逃げるとでもいうのだろうか?


「アキラが家族を捨てて、逃げるはずがないでしょう。夜烏のレイランさんは、アキラの最愛の人ですよ?」

「その通りですよ王女殿下」

「……」

 王女はアキラの言葉に納得したような、してないような顔をして、公爵邸へ向かった。

 実際に、俺とか公爵じゃ女性の話し相手にならないだろ。


「アキラ、ウチはここに残るにゃー」

「まぁ、貴族の屋敷に獣人が入るのは、ちょっとまずいかもな」

 アキラの言うとおりだ。獣人のミャアは、ここに残ることになり、王女とレイランさんたちは、メイドたちを引き連れて、屋敷へ向かった。

 長い女性の列を公爵の息子が先導している。

 アキラはレイランさんに、元々着ていた黒いドレスを渡したようだ。


「ケンイチ、やんごとなき方の相手は大変だな」

 王女の背中を見ながら、アキラがつぶやく。


「まだまだ子供さ。本人の前じゃ言えないけどな。お前の皇帝陛下はどうだったんだ?」

「実に淡々としていたねぇ。俺と出会った時は14ぐらいだったはずだから――今は16歳か」

「子供らしさを出したりとかは?」

「全くなかったな。四六時中、実の母親から命を狙われていれば、ああなるのかもしれないが……」 噂でもそんな話だったが、それも事実だったらしい。


「それで、実の母の皇帝を倒してしまったのか?」

「まぁな。俺が手引したとはいえ、命乞いをする少女の姿の母親を躊躇なく刺し殺したのを見て、吐き気がしたぜ」

 帝国の正式名称は、『少女帝国』――皇帝が即位すると、超常の力をもって、少女の姿になって統治すると言われている。

 

「そいつは、随分とヘビーなシーンに付き合わされたな」

「全くだぜ」

「帝国って、少女の姿になって国を統治するって聞いたけど、皇帝陛下がリアル少女の時はどうするんだ?」

「20歳を超えてから、若返りの神事を行うらしい」

「へぇ……」

 年齢は多少前後するらしいが――若返ると妊娠できなくなるから、若返る前が後継を残すチャンスだと言うのだが……。

 前の皇帝は子供を2人産んで、24歳で若返ったらしい。


「けど、皇帝って女に決まっているのか?」

「あの帝国皇帝から生まれる子供は絶対に女になるらしい」

「そういう何かがあるのか? アイテムとか?」

「俺は、呪いだとか聞いたが……」

 こりゃ、マジで皇室の近くにいた人物からじゃないと聞けない情報だな。


 夕方になったので、飯を食うことにした。


「さて、何にするか――」

「カレー!」

「カレーにゃ!」

「そうか、それじゃドラゴンカレーにするか」

「カレーがあるのか?」

 アキラもカレーがあるとは思わなかったようだ。


「お城の料理人にカレーを食わせたら、殆ど同じ料理を作ったから、この国でも金に糸目をつけなければ食えるかもしれないぞ」

「カレーに必要なスパイスとかあるんだ」

「あるらしい――だが、凄い高価らしいけどな」

 早速、肉と玉ねぎを炒めてカレーを作る。そして、いつもプリムラが作っているスープに玉ねぎと肉を入れて、カレールウを入れれば完成。

 早くて美味い。多少、適当に作っても美味いのが、日本式カレーの偉大さ。

 

 ある医者が言った――「ボ○カレーはどう作ってもうまいのだ」


 テーブルの上にカレーを並べる。アキラのは当然、米の飯だ。


「米もあるのか? 俺も、さんざん探したんだけど、見つけられなかった」

「カレーなら麦飯でも美味そうだけど」

「まぁな。俺も麦を炊いて食ったりしたよ……うめぇ! 本当に米とカレーだ!」

 一口カレーを食べたアキラが大声を上げた。


「もちろんだよ。正真正銘すべて本物だぞ」

「うめぇ……」

 何だか、アキラが目に涙を浮かべている。


「なんだよ、泣くことはないだろ?」

「いや――もう二度と、こんなのは食えないと思ってたからな……」

 そうか――俺は最初からシャングリ・ラを使って、色々と元世界の物を食えたからな。

 恵まれていたな。


「肉はレッサードラゴンの肉だぞ」

「マジか。ドラゴンカレーかよ」

 アキラは元世界風の食べ物を探していたようなのだが、それは見つからなかったのだろうか? そこら辺を聞いてみる。


「元世界風の物って何もなかったのか?」

「ああ、そういえばチョコレートがあったぞ」

 アキラから気になる情報を得た。

 

「マジで?」

 チョコと聞いて、俺達の訳の分からない会話を聞き流していた、ウチの家族達の視線が集まる。


「エルフの栄養食みたいな飲み物が、チョコレートなんだよ。『チェチェ』って言うんだけどな」

「へぇ~――そういえば、アキラはエルフとも付き合いがあったんだよな」

「色は赤かったが、砂糖を入れると、マジでチョコレートドリンクだったぞ」

「それじゃ上手く加工できれば、この世界でもチョコレートが普及するかもな」

 ふむ、この情報は王女も喜ぶかもしれない。


 カレーを食って、腹も膨れた。やっぱり家族と飯を食うのはいい。


「はぁ~親が死んでも食休みってな」

 エアマットに寝転がっている俺の上に、ベルが載ってくる。


「ベル、重いよ~」

「にゃー」

「随分と馴れてるな。伊達に本妻じゃないな」

勿論もちろん、なぁ~お母さん」

 ベルの顎の辺りを撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らす。


「本当に大きな猫だなぁ」

「声はちょっと低いけどな」

 食休みの後、皆で風呂に入った。小屋の中にできた立派な風呂にアキラが驚いている。

 すでに、アネモネの魔法でお湯が沸いており、小屋の中に白い湯気が漂う。


「すげー! 日本式の風呂じゃん!」

「うにゃー!」

「中々立派だろ? 本拠地を決めて屋敷を建てたら、真っ先に風呂をつくらないとな」

「こんなのも魔法で作り出したり、アイテムBOXの中に入っているのか?」

「まぁな」

 日本式の風呂に飛び込みたいのか――アキラと一緒に獣人のミャアも服を脱ぎ始めた。

 だが、湯船に脚をちょんちょんして、湯加減を確かめている。

 

「ここにタオルと石鹸、リンスとシャンプーも置いておくからな」

「至れり尽くせりだな」

「まぁ、まだお客さんだし」

 俺とアキラが入っても良かったのだが、家族が久々に俺と一緒に入りたいようなので、この組み合わせになった。

 そして、風呂から出たあと、ジェットヒーターを見て、再び驚く。


「すげー! これに俺の油は使えないかな?」

「いけるかもしれないが、電気が必要なんだぞ? 今は、モバイルバッテリーに繋がっているが」

「バッテリーに充電した電気はどこから持って来たんだよ?」

「ディーゼル発電機や、ガソリン発電機を使ってる。モバイルバッテリーなら、車からも充電出来るしな」

「そういう手があったか……」

 アキラはチート過ぎると騒いでいるが、そんなことを言われてもな。



「にゃー! すぐに毛皮が乾いて最高にゃ!」

「これは、うちの獣人達にも評判がいいぞ。こいつで乾かすと、毛皮がふわふわになって最高なんだ」

「マジか? ――だがなぁ」

 どうも、アキラは女達と一緒ではなく――久々に1人で寝たいらしい。

 それ故、ミャアは俺の家に入って、獣人たちで一緒に寝ることになった。

 国は違うが、獣人同士で気兼ねなく会話していて、問題もないようだ。


 皆で風呂に入った後、日本の話で盛り上がってしまい、ちょっと夜更かしをしてしまう。

 そして就寝――家の前に、がけ崩れの現場で使っていた大型テントを出した。

 女達は家の中、俺とアキラはテントの中。それぞれ寝袋に入るが――俺の寝袋にはアネモネも一緒に潜り込んでいる。


「なんだ、中々快適じゃないか。こんな立派なテントまであるし。マジでチートだな。露営に比べりゃ天国だぞ」

「まぁ、俺もこの能力がなけりゃ、日本へ帰りたいと考えていたところなんだが……アキラはどうなんだ?」

「俺か? 帰ってもブラック勤めだしなぁ……それにセンセと知り合っちまったし」

「まぁな。あんな美人でバインバインなんて日本にゃいないし……」

「そうなんだよ! でも、すっぽんなのは、マジで参ったが……」

「美人でバインバインでエロい! 最高じゃないか!」

「それでも、限度ちゅーもんがあるだろ」

 アキラの話によると、かなり凄いらしい。


「それで? ケンイチの方はどうなんだ? それは倫理的に許されるのか? 児ポに引っかかるだろ?」

 アキラは、俺と一緒に寝袋に入っているアネモネを見つめている。


「手は出してないからセーフ。そう言うアキラだって、アンネローゼさんの娘を……」

「挿入してないからセーフ」

「それじゃ、俺だってセーフだよな」

 俺たちの会話を聞いて、アネモネが俺に抱きついてきた。


「挿入って、してもいいけど……」

「女の子が、そういう事を言っちゃいけません」

 俺とアネモネが入っている寝袋の上にベルが載ってきた。


「ちょ、ちょっとお母さん、重いんだけど……」

「おもーい!」

「にゃー」

「重いなら、俺から離れなさい」

「や!」

 俺達を見たアキラが笑っている。


「その子もそうだけど、あの王女様はどうなのよ?」

「王族なんかに手を出せるわけないだろ?」

「まぁ、ごもっとも。俺だったら、もっと大人の女がいいねぇ」

「それなら、王妃様がオススメだぞ? 中身はちょっとアレだが、見てくれは最高」

「アレってどんなアレなんだよ。冷血皇帝みたいなアレなのか?」

「いや、凄い優しい面もあるんだが、平気で人を殺しちゃう――みたいな~」

「なんだよそれ、サイコパスか?」

 ひどい言われようだが、まともではないのは確かだ。

 

「まぁ、そうかもな」

 その後、皇族と王族の話で、盛り上がる。まぁ、どこも似たようなもんらしい。


 金と権力を持ち、国を支える重圧によって、人間はそうなってしまうのだろうか?

 

「ねぇ、ケンイチ」

「なんだ?」

「気持ちいいのして?」

「ダメダメ」

「ぷー!」

 ほっぺたを膨らませるアネモネであるが、ダメなものはダメだ。




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