縁あわせ 11 行方不明の終結
読んでくださりありがとうございます。
今回、小説の最後にノルドテッツが居ます。
挿絵表示 する にしていただければご覧になれます。
ものすごいノートに走り書きの絵ですがよかったらどうぞ。
今日、一生分恥ずかしい思いをしている気がする。
リーンさんとレーンさんの言いつけを守らなかった罰かしら。
マァナは未だ縁あわせの相手の膝の上に向かい合う形で座っていた。
白い粉の説明に口ごもったら会話も途切れ、完全に降りる機会を逸していた。男の服から手を離してしまって以来、どこへ自分の手をやっていいのか完全に迷子状態だったので、今は仕方なく赤く染まった手を観察している風を装って胸の前に持ってきている。
思えば男の服は上質な触り心地がした。縁あわせのためにきちんとした服装で来てくれたのだろう、それに対して今のこの状況は申し訳なさ過ぎる。
まずは謝ろうと口を開きかけたが、その言葉は逆に奪われてしまった。
「すまないな」
「はぃ?」
「身ひとつで来てしまったので応急処置もできない」
自分の足の方へ視線がたどってきたので、慌てて手で隠そうとした。今更だがボロボロの素足を見られたくないのが女の子心というもの。だが容赦なくその手を再び男に握りこめられた。
手の大きさがまるで違うので文字通り握りこまれた状態だ。精神的にいろいろと限界を迎えていたマァナはもう片方の手で男の手に触れはじめた。普段なら絶対にしない。
ふと、先ほど火球をこの手で受けていたことを思い出したマァナは手の平を見ようと重たい男の手をひっくり返した。
「よかった。やけど……ないですね」
男は何も答えなかったのでそのまま話を続けた。謝ることはもう忘れていた。
「さっきのはなんですか? 魔法ってああやって対処するものなのですか?」
テサンでは魔法を目にすることは無いので、マァナは先ほど見たのが初めてだった。
「いや、火球のようなものは小さくても燃え広がる場合があるので消したまでだ。普通、ああいう対処をしてはいけない。」
それから何も知らないマァナのために男は魔法の話を始めた。
魔法の種類から始まって、威力、陣図、はては魔法使いの気質に至るまでを淡々と。
この状況じゃなかったらきっと居眠りしちゃうわ、とマァナは心の中でうそぶいた。
「じゃぁ、あれはハガード様のわざ?」
「クロスと呼べ」
ちょっと意を決して名を呼んでみたがすぐに駄目出しされてマァナは目を丸くした。家名の方で呼ばれたくないらしい。
きっぱり拒絶した本人の方は何も無かったような素振りで手を預けたままじっとしていた。表情は変わらないが、何か考えているようにも見える。
「技、というか、バレーだな」
「ばれー?ってなんですか」
「なんでもない。それと、火球を打ったのは反対の手だ」
……まっさきにそれを言って欲しい。
マァナは慌てて反対の手をとって先ほどと同じように触った。こちらの手はあちこち皮膚が硬質化している。剣を握る男の手だと改めて思い、同じくやけどが無いことにほっと胸をなでおろした。
また会話が途切れている。膝から降りられない。降りたくないのかもしれないとマァナは思った。
ドキドキするし恥ずかしいのだが、今はここが安心。
近づいてこられた時は怖かったというのに。おかしなことだ。
それから少しして人の気配を感じた。「ようやく来たか」とつぶやいたクロスは体を動かしたのだが、マァナがしがみついてきたのでそのまま動きを止めざるを得なかった。
声を掛け合い、姿を現したのは二人の男だった。
「アスラファールだ。補佐官の。」
「なにやってるんですか! あなたは! そんな状態で恥ずかしげも無く私を紹介しないでください!」
「テサン騎士団所属、テッツ・ローディアであります!人手が必要との事で不詳ながらお供させていただきました!」
「お前も普通に自己紹介せんでいい!」
とたんに賑やかになった場でマァナは目を白黒させつつも、見知った顔にまた安堵した。
「テッツさん? どうしたんですか?」
声をかけられたテッツの方はヨロヨロ動き出した。前のめりに歩いて、傍まで来るとヘナヘナと四つん這いになった。
「どうしたじゃねぇよ……双葉達がマァナが男達に……じゃなくて行方不明だって言うから……勘弁してくれよ皆心配してんだぜ?」
「あ、そうか、ごめんなさい」
テッツはそのまま視線をクロスの方に動かした。非難がましくならないように細心の注意を払って。
近くで見るクロスは男が見ても惚れ惚れするくらいの落ち着いた男っぷりで、そりゃコレに助けられたら安心してマァナだって膝にも乗るわなと妙に納得してしまう。
「マァナを助けてくださってありがとうございます」
「知り合いか。怖い目に遭ったようなので彼女の介抱を頼む」
そのままそろりとマァナを降ろして自身は立ち上がりながら言葉を重ねた。
「礼はいらん」
そうさっぱりとした口調で言い残して未だ倒れている男二人の方に行ってしまった。
所在なさげにするマァナにテッツは苦笑をもらす。すでに雛のように懐いてしまっている事に嫉妬心は疼かなかった。
彼女を好きで嫁にまでしたいと願ってはいたのだが、それ以前に彼女は妹のような存在でもある。
無事で、いつものマァナで居てくれたらそれでいい。
諦めるには都合のいい感情かもしれないな、と苦い気持ちを噛みしめた。
そんな風にテッツが青春を自己完結させているのをよそにマァナはクロスの方ばかり見ていた。
目が離せなかったのだ。倒れた男二人の衣服を剥き始めたものだから……
「陣図が尻にあった魔術師がいてな」
「その話、先日の盗賊団狩りの時もお聞きしたので結構です」
慣れているのかアスラファールと紹介された神経質そうな男も服を剥くのを平然と手伝う。
「そうだったか?」
「尻から火を噴いた話でしょう」
「それだ」
「ぷふっ」
聞き入っていたマァナは吹き出して笑ってしまった。テッツの複雑そうな視線を感じたが、クスクス笑いが止まらない。
「お尻から火だってーぷふふっ」
ようやく全ての緊張から解かれて笑顔に戻れたのは他ならぬテッツの存在があったから。
クロスとアスラファールはそんな娘の柔らかな笑い声に気づき、無言で顔を見合わせた後、作業場を木の陰に移した。
そうして、マァナの応急処置と男二人の身体検査と捕縛が済むとすぐさま森を出た。
そこにはアスラファールとテッツが乗って来た陸馬が2頭つながれていた。
「私の持ち色が黄色です。無事終結が青です。双葉亭に残っているテサン騎士ノルド・ガイドが読みます」
テッツが懐から『印』を出してクロスに渡す。渡されたクロスの方は少し疑問に思ったが、着火具まで渡されたので素直に二つの印に着火して上空へ投げた。
空高くでぽぽん、と黄色と青の花が咲く。これで、マァナの行方不明事件は無事終結したのだ。
「やー。噂どおりクロス団長の印は誰より空高いんですね。見てみたかったんですよ」というテッツののんきな言葉とともに。
今更、小説の書き方サイト様とかで勉強し始めました・・・手遅れです(涙)
視点がころころ変わる読みにくい文章ですみません。
読むと書くとじゃ大違いなのですねぇ。
とりあえず、反省しつつ走りきりたいと思います。
これだから初心者は、とお鼻で笑ってくださいまし。




