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第67話 燃えよエンダードラゴン(前編)

 命からがらネザーから脱出した私とニーナちゃん。

 城に戻れば作業台を置いてすず先輩がスタンバっており、「災難だったねぇ。まさか、がっちゃんにネザーゲートを壊されるなんて」と慰めてくれた。


 エンダーチェストから『ブレイズパウダー』を取り出しすず先輩に渡す。

 すぐに彼女は『エンダーアイ』を作り上げ、それをニーナちゃんに渡した。


 かなりの大冒険をした気になっていたが――本番はこれから。

 むしろこれからが大事だ。


「それじゃ『エンド要塞』を探していこっか!」


「すずちゃん。あひる、サバイバルモードは初心者だから分かんないんだけれど。『エンド要塞』って、どうやって探すの?」


「『エンダーアイ』を空に向かって投げると、『エンド要塞』のある方向にむかって飛ぶんだよ。それを追っていくと――『エンド要塞』がみつかるってわけ!」


「なーほーね」


 曖昧な返事をするあひる先輩。

 たぶんこれ分かってない。(断言)


 ただ、彼女のおかげで解説が入るのはいいことだ。

 視聴者の中にはマイクラを知らない者もいる。

 そういう人に、あひる先輩の疑問とすず先輩の解説は参考になるだろう。


 やはりナイス人選。

 翻訳兼初心者役のあひる先輩に、解説兼上級者役のすず先輩。

 事務所のこの配信にかける本気度に、ちょっと私は怖くなった。


「というわけで! ニーナちゃん、ぽいってしてぽいって!」


『(インドネシア語)それでは『エンダーアイ』を投げますね……それ!』


 ふわりと浮き上がる『エンダーアイ』。

 それは『エンド要塞』のある方角を示すとすぐに落下する。


 示された方角に進み、また『エンダーアイ』を投げる。

 繰り返すこと15分――ついに『エンダーアイ』が真下に落下した。


『(インドネシア語)ここです! ここで『エンダーアイ』が消えました!』


「おぉ! 『エンダーアイ』が地面に潜って消えたということは……ここの地下に『エンド要塞』があるということ!」


「……嘘だろぐゎぁ! なんてことぐゎぁ!」


「まさか、こんな所にエンド要塞があるなんて……!」


 私たちは『エンド要塞』のある場所を突き止めた。

 しかし、なんということ――。



「「「ゆきち(ゆき先輩)のしけた村じゃねーか!!!!」」」



 奇遇にも『エンド要塞』があったのは――ゆき先輩の村だった。

 しけた村人しかいなのに、なにかと配信で縁がある村だなァ。


「さて、あとは『エンダーアイ』が沈んだ場所を、ひたすら直下堀りします」


「よかったな、ゆきちの城(仮)の真下じゃなくて」


「もしもゆきち城(仮)の下に『エンド要塞』があったらミラクルだったバニよ」


「ほら、二人とも気を緩めない! 『エンド要塞』は強力なモンスターがひしめいているダンジョンなんだから! 油断してたらやられちゃうよ!」


 すず先輩が釘を刺すが――マイクラガチ勢が二人もいればなんてことはない。

 向かってくるゾンビ・スケルトン・クリーパー(爆発するモンスター)を、すず先輩とニーナちゃんの神AIMが襲う。部屋という部屋にはたいまつが置かれ(明るいとモンスターが湧かなくなる)、チェストからはお宝が回収される。


 あっという間に『エンド要塞』は攻略され、私たちは『エンドポータル』がある部屋にたどり着いた。


 部屋の正面には『エンドポータル』へと続く階段。

 ここに『エンダーアイ』を数個セットし、『エンド』へと続くワープゲートを起動させれば、いよいよラスボス『エンダードラゴン』との対決だ。


 と、その前に、ちょっと小休憩。


「はぁ、意外とさっくり攻略できたね。おつかれさまだよ、みんな」


「すず先輩、さすがバニです。めちゃくちゃ手慣れてましたね」


『(インドネシア語)すず先輩! 流石です!』


「ぐゎぁ。あひるは、見てることしかできなかったぐゎぁ」


「いやいや、そんなそんな! 暇を持て余した、狐の戯れだよ!」


 謙遜しつつもまんざらでもないすず先輩。


 リアルJKだものな。

 褒められたらそりゃ嬉しいよなぁ。

 液晶ディスプレイの前でくねくねしているすず先輩を思い浮かべ、ちょっとほっこりとした気持ちになる。


「ニーナちゃんもすごかったバニ。すず先輩に負けじと劣らずの大活躍だったバニ」


「ばにら。英語で褒めてあげてもろて」


「そうばにな……! ヘイ、ニーナ! ナイスファイト! やるやん!」


「英語って言ってるやないか!」


『イェーイ! ナイスファイト、シャチョー! ヤルヤーン!』


「イェーイ!」


「いや、通じるんかい!」


 本日の主役のニーナちゃんを褒めるのも忘れない。

 彼女の健闘をパッションイングリッシュでしっかりと讃えると、私たちは狭い『エンドポータル』の部屋の中でぴょんぴょんとアバターを跳ねさた。


 時刻は、午後8時。

 配信開始からきっちり2時間が経過しようとしていた。


「さぁ、いよいよ『エンダードラゴン』と対決だ――の前に、ちょっとおトイレ!」


『(英語)すず先輩がトイレだそうです。ニーナさんも大丈夫ですか?』


『(英語)そうですね。喉が乾いたので、ドリンクをとって来ます』


「ふぁー、ばにーらもちょっと栄養補給するバニ。ちょっとマイク切るバニ」


 リスナーたちに説明してマイク入力を切る。


 テーブルに置いておいた水筒から白湯をすする。

 常温のゼリー食品のキャップを外し、一口で胃の中へと押し込んだ。


 栄養補給完了。(30秒)


 ラスボス『エンダードラゴン』の討伐は早ければ10分くらいで完了する。

 体力こそ多いけれど、立ち回りさえミスらなければそれほど強いモンスターではない。装備も充実しているし、ゴリ押しで倒すこともできるだろう。


 手と脚を伸ばして私はリラックスする。

 はじめてのエンドラ討伐。さらに、海外勢との初コラボということもあり――もうちょっと時間がかかるかなと思ったけれど、これなら午後9時には終わりそうだ。


「充分、美月さんと晩酌できたなこれ……」


 液晶モニタ下のスマホを覗き込む。

 中では美月さんとりんご先輩が、せっせとブランチマイニングに勤しんでいた。


 マイクはミュートにしている。

 配信に音が入ることはない。


 私はスマホの音量を上げ、美月さんの配信を覗いた――。


「あらよー! またダイヤじゃなくて金がでてきた! りんご、このブランチマイッチングって、本当にダイヤでるの?」


「おかしーな? 僕が見た攻略サイトでは、こうすればダイヤがいっぱい取れるって書いてあったんだけれど……?」


 首を傾げる美月さんとりんご先輩。

 金ばかり取れるということは、掘る深さを間違えている可能性がある。

 ブランチマイニングは効率的な鉱石の採掘手法だけれど、鉱石が埋蔵されている深度で行わないと、目的の鉱石はゲットすることはできない。


 実際、美月さんの配信画面にはY=26(深さ)と表示されていた。

 そこではちょっとダイヤモンドは出ない。


「誰かリスナーさん、フォローしてあげてよ」


 リスナーに知識のある人がいないのか、あえてスルーしているのか、それを指摘する人はだれもいない。ただ、多くのリスナーがそんな二人のやりとりを楽しんでいるのは、コメント欄からひしひしと伝わって来た。


 やっぱり、みんなが求めているのは「りんずん」なのだ。

 私と彼女――「ずんばに」は、りんご先輩復帰までのつなぎ。


 百合営業なんて、やっぱりするんじゃなかった。


 胸の中を冷たい風が吹いたその時、「おーい、ばにらちゃーん!」とすず先輩が私を呼んだ。あわててスマホをミュートにして、マイク入力をオンにする。


 美月さんたちのことを考えるのはいったんやめよう。


 私は再び『川崎ばにら』の仮面を被った。

 新人VTuber『ニーナ・ツクヨミ』の憧れの人。

 奇跡的に出会った運命のVTuberを、私は必死に演じることにした。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 自分以外の先輩と楽しくコラボする姿にジェラるばにら。

 そして、そんなばにらの気も知れずに、和気藹々とコラボするずんだ。

 同じく地下を潜っている二人。なのに、その心はこんなにも遠い。

 このまますれ違ってしまうのか――。


 という所で、伏線は張り終わりました。

 気づく人は気づくかと思いますが、こっからはもうギャグと真相編と、ハッピーエンドしかございません。安心してお読みください&今後の展開を、もしよければ推理してみてください。ヒントはマイクラの仕様でございます。

 

 このままばにらとずんだはすれ違い続けるのか――いや「すれ違わない!」と思った方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m

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